白山白川郷ウルトラの翌週ですので完全なる観光気分で参加し、堪能させていただきました。エイドの充実ぶりは評判通りで、餃子にスープにトマトにブドウに梨にバナナにと食べまくりでした。法螺貝に送り出されて武将に迎えられる演出も楽しいですし、コースも整備されていて安全度も高い上にトレイルパートもたっぷりでした。復原町並の見学、永平寺観光等もでき、大変満足しています。
前日(ボルガライス、眼鏡ミュージアム、東尋坊)
今回は観光メインですのでタイトな予定を組みます。8:00大阪発琵琶湖線新快速、米原乗り換えで敦賀まで進み、敦賀から武生に向かいます。(本当は7:45大阪発湖西線新快速がベストだったのですが、もたついているうちに逃しました。)
武生:ボルガライス
武生駅に着くといきなり越前打刃物の昇竜が展示されていて圧倒されます。ナイフビレッジに行くともっと色々見られるのかもしれません。伝統工芸は本物に触れるのが何よりです。
武生に降り立った最大の目的はボルガライスです。武生のB級グルメとしてPRにも力が入っており、一度聖地で食べてみたいとかねてより楽しみにしていました。
駅からまっすぐ歩いて人気のヨコガワ分店さんへ。丁度11:30の開店のタイミングで到着しましたが、辺りにいた人が次々と吸い込まれていき、自分もぼんやりとしていられないぞと乗り込みます。
キッチンの様子を眺めたり観光パンフレットを読んだりしていると待望のボルガライスがやってきました。オムライスの上に豚カツが乗り、見るかるにおいしそうなソースがかかっています。豚カツハントンと似ているのですが、中はケチャップライスではなく、個人的にはこちらの方が食べ易いように感じました。このためだけに途中下車する価値は十分にあります。
お店を出て、蔵の辻を少し歩けましたが、如何せん乗り継ぎの時間が迫っていたためスイーツ巡りはできませんでした。武生には絵本作家のいわさきちひろの家もあるので、時間があれば寄りたかったのですが、また次回以降の課題です。
鯖江:めがねミュージアム
武生駅からわずか一駅、お次は眼鏡の街鯖江にやってきました。駅前にいきなり眼鏡のオブジェがあり、期待が高まります。
地下道では照明、階段の装飾に眼鏡が見られ、ベンチも植樹の枠も眼鏡と至る所に眼鏡が溢れています。ただ、最初にすれ違った5人は裸眼かコンタクトだったようで、本当にここは鯖江なのかと思いもしました。
強い日差しの中歩くこと10分強でしょうか、めがねミュージアムに到着です。まず眼鏡洗浄機で自らの視界をクリアにした上で、博物館へ。
ここでは世界史上で眼鏡がどう生まれて用いられてきたのかや、江戸時代以降にどのような眼鏡が作られ、改良され、流行してきたのか、どのようにして眼鏡が作られてきたのかが豊富な展示資料から学ぶことができます。これだけ昔の眼鏡が集まっている空間にいられることもありませんので、かなり知的好奇心を刺激され、色々な角度から眺めたり、解説をぶつぶつと読んだりしました。
ショップでは最新の眼鏡を購入することもできます。本当に洗練されたお洒落な眼鏡を見ていると欲しくなります。眼鏡は顔の一部ですから、新しい自分になれる気すらします。そろそろ日本製のいい眼鏡を新調して大切に使いたいなという気持ちが湧いてきました。
めがねミュージアムは眼鏡というものに対して敬意を抱くと共に、自分の眼鏡のことが好きになる、素敵な場所です。是非訪れてみてください。
後で知ったのですが、鯖江は県内で唯一人口が増えている市でして、起業も多いとのことです。昭和の時代にはメガネフレームで世界を席巻したものの、中国の製造業に一番早くやられるという底つき体験を経つつ、その中でも何とか生き残らなくてはという必死の思いと工夫で地味な成功を収めているという事実はとても魅力的で、地方再生やイノベーションのあるべき姿を体現しています。日本人は勤勉といいますが、本当に勤勉なのは鯖江を始めとする福井県人で、多くの人が見習うべき資質を沢山備えておられるのだと認識を新たにしました。
東尋坊
福井駅に到着後、まず駅前の勝木書店に立ち寄り、ご当地書籍を購入します。鯖江のくだりもここで買った『福井モデル』(藤吉雅春著、文春文庫)で得た知識です。この本は、富山の取り組みや福井の教育についても詳しく述べられていて大変面白く読めます。自分の生き様や都会での暮らしに疑問を感じている方には強くお勧めします。人生観が変わるかもしれません。カバーの八田経編さんのすごさも読むと分かります。
宿に荷物を置いてから、えちぜん鉄道に乗って三国港へ向かいます。週末は乗り放題1,000円のチケットがありますので、往復なら元が取れるこちらを買い求めました。
私が東尋坊に行こうと思ったのは、2017年の東尋坊愛のマラニックで左膝を壊し、最後はキロ10分でどうにかゴールに辿り着いたという壮絶な記憶があり、その更新をしておきたかったからというのが大きいです。
三国港に到着し、サンセットビーチに沿ってジョグで東尋坊を目指します。少し行くとあの日最終盤で見た急な上りがあり、一気に記憶が蘇ります。今は脚の痛みもなく、力もつけて帰ってきたのだなと思いながら、あの日と同じ場所で暮れ行く海を撮ります。
見覚えのある坂をしばらく行くと、東尋坊の入り口です。そのままゴールの芝生まで行き、海を眺めます。このまま終わるのではなく何とか元気に103kmを走ることで、完全に記憶を上書きしたいところです。大会でお世話になった坂井の皆様には今も感謝しています。
前回は全く余裕もありませんでしたので、高所恐怖症のくせに岩場をしっかり歩いてみようとやって来ました。普通に足を滑らせると怪我ではすみませんし、悪意を持った人が背後にいた瞬間全てが終わってしまう絶壁でしたが、どうにか美しい岩壁をこの目に焼き付けることができました。絶景ここに極まれりで、ここに来られたことに感謝しました。
17時を過ぎるとほとんどのお店が閉まるらしく、東尋坊タワーも営業終了ということで中には入れませんでした。ただ、サンセットクルーズは17:40かそこらでしたので、最後に最も美しい日の入りを眺めるのがベストな観光コースのようです。
帰りの時間もありますので、ジョグで戻ります。丁度サンセットビーチに着いたところで水平線に沈んでいく太陽が完璧な姿で見られました。もっとゆっくり沈むのかと思いきや、想像以上のスピードで消えていき、少しぼんやりしていると、え?もうあんなに小さくなったの?と驚きます。こういうのも実際に目の当たりにしてみないと分からないものですね。
汗もかきましたので三国温泉ゆあぽーとさんで微かに明るさを残す日本海を眺めながらお風呂に入ります。タオルは持参しており、入浴だけであれば500円とリーズナブルです。設備も清潔で、快適に入浴を楽しみました。
再びえちぜん鉄道に乗り福井駅に戻ります。途中窓の外に見られた芦原温泉の旅館の豪華ぶりが眩しかったです。福井駅ではヨーロッパ軒さんが20時閉店で間に合わなかったのですが、ほていやさんでばっちりソースカツ丼をいただけました。ご飯の上にソースがしみ込んだカツが乗っているだけで有無を言わさないものがありますが、これがまたうまくてご飯が進むのであります。考えた人はマジで偉いです。
お宿は福井パレスインさん。一泊わずか3,900円です。必要なものは揃っていますし、眠れればそれでよいので満足です。スタッフの方の対応もよかったですし、これ以上何も望むものはありません。観光で疲れていたので22時過ぎには眠りに就きました。
レース
やっとレースかよという感じですが、先にも書いたとおり今回は全く頑張る気などありませんので朝食もいつも通りの糖質制限メニューです。携行品もさることながら服装も適当で、タイツはアシックスのインナーマッスル、シューズは一応トレラン用のミズノのダイチ、マイカップ持参なのでスクイズボトルを武庫川ユリカモメ2017参加賞のリュックに入れたくらいです。テーピングはニチバンです。
6:28の九頭竜線始発を逃すと自動的にDNSですので、そそくさと駅へ向かいます。
無事に始発に乗ったはよいものの、降車時にICカードが使えず、現金を用意したりと戸惑っているうちに他のお客さんにご迷惑をおかけしてしまいました。皆様は間違いなく切符をお買い求めください。
一乗谷駅を降り立つと…期待通り何もありません。地方遠征に来たぞ感が高まります。ちなみのこの駅はブラタモリでタモリが降りた駅という紹介のされ方をされていました。
都会はごみごみし過ぎてうるさいので、こういう道を歩けることが大変な贅沢です。
会場に着き、受付を済ませます。参加賞はタオルと金券1,000円です。まだ走りもしていないのに、糖質も必要だろうということで早速とうごうアイスを購入します。ミルクの味がおいしいのは勿論ですが、世界大会で優勝した方が生み出した逸品らしく、そう聞くと益々おいしさが増します。
案の定スタートまではやることがなく暇なので、日陰を見つけて本を読んでいました。着替えも宿で済ませています。荷物預けも大変スムーズで全くストレスがありません。福井県でフルマラソンを開催しようという署名活動がありましたので、喜んで署名してきました。是非とも走らせていただきたいです。
9時にロングの部のスタートを見送り、ショートの部は9:20スタートです。いきなり法螺貝の音に送り出されて楽しいです。最初はロードということもあり皆さん結構速く走ります。あまり気にせず疲れない走りを心がけます。
春日神社を通って少し行くと、急な階段がそびえていました。ここで前を抜くことはほぼ無理ですので、足より前に頭が出ないように姿勢に注意しつつ上っていきます。ある程度上ると平坦なトレイル、下りへと展開していきますので、小刻みなステップやへっぴり腰を駆使して安全に進んでいきます。
下りたり上ったりを少し繰り返し、気付くと少年自然の家エイドにやってきました。「餃子焼きあがりました!」という声と共に差し出されるは見るからに美味しそうな餃子。これは食べるしかないでしょう。普段餃子を食べる機会がない分、こういう環境下で食べる高揚感も加わった餃子は一層おいしく、3つも食べてしまいました。これが大人気の餃子エイドかあ!と納得です。
タイムなど狙っていませんので、スープ、マスカット、パイン、トマト、キットカットもいただき、マイボトルにアクエリアスも注ぎたらふく食べます。こんなに沢山ご準備いただき感謝です。
その後もしばらく上りが続きますが、皆歩いていますので気楽に進みます。ある程度上ったかなという気分になった辺りで、下りに切り替わり、ここもへっぴり腰でガンガン攻めていきます。トレイル全体はよく整備されていて、走り易い部分もある印象です。整備されているということには階段が多いことも含まれまして、これはこれで無理な飛ばし方さえしなければ安全に走れるぞということです。
途中トップランナー数名ともすれ違い、レベルの高さと覚悟の違いに、ああ自分はトレイルで勝負はできない、このまま楽しく気楽にやろうと思いました。皆さんカッコよかったです。きっとこれからも各地でご活躍されることでしょう。
しばし進むと舗装路の下りになり、ゲートをくぐって少々平地、またも別のゲートをくぐって上りです。特に頑張る必要もないので、歩きまくりです。MGCも気になっていましたので、歩きつつツイッターをチェックしました。この頃はまだ設楽悠太選手が独走しており、その分終盤どうなるのだろうという緊張感がありました。
舗装路を歩いてそこそこ上った辺りから少し走ってみました。まあ行けるかなと思っていたら次の槇山エイドに到着。ここでは梨をどんどん食べます。瑞々しくてたまらないですね。バナナはあまり売れ行きが芳しくないということでしたので、素通りはできぬとこちらもいただきます。コーラも飲めましたし、被り水もあります。体力的には全く問題なかったですし、暑さもそこまで感じていませんでしたが、気分転換に水を被っておきました。
再出発して少し下るとまた上りの階段です。往路のランナーとすれ違いますので、挨拶をしながらえっちらおっちら上っていきます。途中走れそうな程度の坂は試しに歩幅を狭めつつ走ってみましたが、思ったより走れるものですね。段差が大きい箇所は手押しですが、タイツを穿いていた分、手が滑ることは少なかったです。
そうこうしているうちに下りに切り替わります。最後の下りは階段メインですので、ドスンドスンとダメージを蓄積する動きにはならないよう、免震を意識しながら進みます。後ろ脚の体重の残し方はこれからの課題かもしれません。
何も考えずに下っていくと、春日神社に到着です。ここでミニエイドがありますので、散々水分をいただきます。苦しそうな表情で休憩もそこそこに去っていく方もいましたが、そこはそれぞれのテーマがありますのでただ見送るのみです。
最後は平地になりますので、少しだけ上げてキロ5をいくらか切るくらいで進み、悪いなとは思いながらも結果的に何人かを抜きました。途中では甲冑を来た男性が応援して下さったり、ゴールが近づくと法螺貝の音が聞こえてきたりで、やはり趣向がとてもいいです。笑顔でお礼を言いながら走ります。彼岸花を手渡されている方もいて、何かとよい大過なのです。
会場に戻って来ると実況で名前を呼んでいただき、嬉しいなあと喜びながらフィニッシュです。本当楽しかったです!
アフター(復原町並と永平寺)
とりあえず給水をいただき、荷物を受け取って手早く着替えます。ふるまいの豚汁はしっかりお肉が入っていてよかったです。出店もかなり充実していましたので、焼き鳥を購入してたんぱく質補給に努めます。お土産も買えますし、梅しそジュースもおいしく、満足です。
唐門を通り、朝倉義景館跡を巡ります。湯殿跡はほんの少しだけ上るのですが、ここまで来たからには行っておこうと見てきました。上から眺めるとまた違った風に見え、かつて栄華を極めたこの場所のありし姿を思い浮かべると共に、戦国の世のあまりの無慈悲さに少し憂鬱な気持ちにもなりました。
参加賞には復原町並の入場券も付いていましたので、入らない手はありません。まずは模型を見て立派だなあと感心し、建物を出るとそこには当時の町並が広がっているではありませんか。
手前は武家屋敷で、通りからは閉鎖されており、奥の商家は開かれています。甕や米俵といった物が置いてあるだけでなく、役者さんが当時の日常生活を演じておられ、こういう風に生活していたのかと、タイムスリップしたかのような感覚に襲われます。
武家屋敷の中では、白山ひめ神社に飾られている刀の写真が飾られており、先週の死闘を思い出します。驚いたのは酔象という駒が追加された朝倉将棋でして、相手の陣地に入れば王と同じ動きができるだけでなく、王将が取られても対局は続行するというルールで、これはAIも対応に困るし羽生さんが目を輝かせそうだなと思いました。
復原町並でお腹いっぱいになったところですが、もうすぐそこに大本山永平寺があるわけですので、迷わず特急永平寺ライナーに乗ります。事前に切符が買えたようですので、買っておくとよかったです。現金でも支払えましたが、運転手さんの手間も発生しますので。
無事に到着したので、ごま豆腐ソフトクリームをおいしくいただき、土産物屋の間を抜けて永平寺へと向かいます。
深山幽谷の地に開かれた禅僧の修行場、永平寺はその場に立ってみると建物だけでなく山全体が放つ空気に圧倒され、とにかく巨大に感じました。道元禅師がこの地を選んだのも何とも慧眼ということで、私なんぞが偉そうに言えることではないのですが。
「山門」、「仏殿」、「僧堂」、「大庫院(だいくいん)」、「東司(とうす)」、「浴室」、「法堂(はっとう)」の七堂伽藍を巡るのですが、回廊も長く、歩いているだけで他所では味わえない独特の時間を経験できます。
あくまでも修行の場であり、邪魔をしてはならないという思いからそそくさと移動しますが、時折正座してみたりもしました。呼吸はゆっくりとしたものになり、背筋も自然と伸びて、忙しない日々の暮らしから解放されてしばし幽玄の世界に浸っていました。
大庫院には韋駄尊天様も祀られていました。ランナー的には立ち止まらざるをえません。どでかい擂粉木(全長4m!)と共に、毎日食べられることに感謝です。
山門ではしばらく佇み、吹いてくる九月の風を全身で受けながら、周囲と一体となる感覚に浸っていました。無心という境地はこのずっとずっと先にあるのではないかと思いました。
帰りはお土産に團助のごま豆腐と大野銘菓のけんけらを買いました。福井駅までは約30分、720円で帰れます。バスを降り、福井に来たからにはとくるみ羽二重を購入し、楽しい思い出と共に福井を後にします。ありがとう福井、また逢う日まで。
翌日
例によって疲労抜きジョグと観光を兼ねて金沢の街を巡りました。我が最愛の金沢マラソンももうすぐですので、スタート付近のイメージも確認しておきます。去年も滅茶苦茶楽しかったです。
帰りは片町10:30発のバスで、京都深草まで3,010円です。京都大阪間が渋滞しそうですので、こちらを選択しました。先週の白山白川郷ウルトラマラソンで意識が飛んだ日本海の景色を眺めて期するものもありました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。観光パートが異常に長くなっていますが、大会自体も参加者を楽しませようというおもてなしの心に溢れ、趣向の凝らされた素敵なものでした。大変気持ちよく走らせていただき、福井に来てよかったなあという気持ちでいます。来年以降、もっともっと人気が出ていく大会だと思います。
福井、一乗谷の皆様、素敵な時間をありがとうございました。
ここまで読んでいただきありがとうございます。ご感想などいただけると大変嬉しいです。