大会の想い出は誰よりも書いている本人に元気を与えてくれます。マラソンのお陰で沢山の大切な想い出ができていますので、幸せな人生だと実感します。
さて、兵庫県は美方郡香美町で行われるこの大会、人気がありますので皆様もご存知かもしれません。景色はこの日までに走った中で一番よかったです。海も山も本当にきれいで、走っていてため息が漏れそうになりました。その分沢山上らされますが……。笑 これぞ山陰海岸ジオパークという景観は必見です。イメージ的には、隠岐の島の景色が近く、今このコースを走ったら色々と重ね合わせて感じるものがあると思います。
そして香住といえばカニが特産の街ですので、とにかくカニを食べないことにはお話になりませんね。ゴール後にカニ雑炊とカニが振る舞われるのは驚異です。折角ですので、その後近くのかに市場さんでまた香住カニを食べました。本来あまりカニは好みではない自分にもおいしく食べられるくらいですから、その味は本物です。アスタキサンチンによる活性酸素除去効果も期待できます。
そしてそして、香住の皆様の歓迎ぶり、その気合いの入りようがまたすごいのです。ふるまいが充実していることは既に書きましたが、漁港で潮風にたなびく沢山の旗や横断幕に加え、手書きメッセージもいただきましたし、荷物預かりの学生さんも大声でてきぱきと動いて下さったりで、恐縮するレベルです。(もっと適当でも大丈夫ですよ……。)
自分としては三週連続(しかも土曜開催で中5日)のフルマラソンで怪我をしてしまった苦い思い出のある大会ですので、改めて最後までしっかりと雄大な景色と皆様の応援を楽しみながら走って、笑顔でフィニッシュしたいと思っています。「香住の風になる、日本海の波になる」、そんな走りをしたいですね。
香住は、マラソンを通じて存在を知り初めて訪れましたが、また行きたいと思っています。香住の皆様、素晴らしい応援をありがとうございました!
www.kasumi-geoparkmarathon.com
前日
午前中は仕事ですので、普通に起きて軽く朝練です。0:25'23",5.00 km,5'04" /km ウィンドスプリント3本でした。左足首はよくなってはいるものの万全ではないなあと思いつつも、まあ今までも散々どこかしら痛い中走ってきたのでいけるだろうということにします。(先に書いておくと全然大丈夫ではありませんでした。)
15:11大阪発で移動です。どうにか無事こうのとりに乗れました。山陰に向かうという行為自体に心ときめくものがあります。やはり普段行けない場所ですからね。
帰りに城崎温泉に寄る計画でしたので、『城崎にて』を本棚から取り出すつもりでしたが見事に忘れました。内容すら思い出せません。最初に読んだ時はこれがそうなのかくらいの印象しかありませんでしたが、たしか二度目はそういうものかなくらいの感覚になっていた気がします。私の読書などこんな適当なものです。
夕方になってはいましたが、とにかく香住駅に着きました。「カニ迎」ときましたか。PUFFY先輩が乗り込んできそうです。待合室も水槽があって楽しめます。
夕食は喜いちさんで小鍋定食をいただきます。魚が色々食べられる上に温泉卵までありたんぱく質豊富です。いきなりカニもいただきました。大満足です。
今日のお宿は梅乃屋さんです。すごくいいお部屋です……。これは明日起きられないのでは……。お風呂もきれいで快適でした。平日限定の素泊まりアメニティなしプランとはいえ、4000円というのは少し申し訳ない気がします。
道中は星や花がきれいでしたし、暗い中、川の音が響く怖さ(結構な音でゴーゴーと流れていたと記憶しています)も普段の生活では体験できず、忘れがちなものだなと思いつつ歩いていました。
レース
レース前
布団とじゃれているうちに眠ってしまい夜中変な時間に起きるという失態を犯したので歯を磨いて仕切り直しました。起床6時過ぎは少し遅めです。
朝食はチーズパン、抹茶タルト、リンゴタルト、おにぎり鮭を食べました。前日水2lを買ったのは余裕があってよかったです。シャワーは時間の余裕がなく見送りました。テーピングは難なく貼れ、端も少し浮かせます。途中はがれているのではという感覚もあったのですが、最後まで足の皮は無事でした。ソックスは皺に注意します。
シャトルバス乗り場へと徒歩で向かいます。既にいい景色で心躍ります。風も気持ちいいです。
会場到着後靴を履き替え、いつも通りきつめに締めるよう注意します。スペシャルドリンクの締切には間に合いませんでしたが、実際は取れたもんじゃありませんでしたから、結果オーライです。
暑くなると見てネッククーラー、サンシェードも装備しておきます。風は涼しかったのですが、エイドにスポンジはなく、水も少なかったことから、後から見ると正解だったと思います。
ちなみに更衣スペース(男子)は物陰でした。周囲に気を配りつつ脱ぎましょう。
レース
今回は初めてペースランナーさんと走ってみました。コースがよくわからないので鼓舞してもらおうということと、まあ何だかんだ言ってサブ3.5は達成したいという思惑があったためです。結局35km過ぎまではほぼご一緒(一時先行)させていただいたのですが、きつい上りの励ましはすごく助かりましたし、エイドで苺も取って配って下さって感謝しています。
全体にコースが狭いので、集団で走ると細かな接触が多く、それなりに気を遣うということも分かりました。後から考えてみると、ペースランナーとその周囲の集団から少し離れて走り、終盤で抜くくらいの展開がよかったと思います。アップダウン的にも、普段以上に後半勝負を心掛ける方がよいでしょう。
コースから見える景色は本当に圧巻で、海を見ている時は、こんなに素晴らしい景色の中を走れることに素直に感謝していました。10km過ぎてから一気に80m上って下って折り返す(ということは当然もう一度上って下る)箇所(相谷)は、まだ体力があったからかそれ程長く感じませんでした。戻って来るときに望める海がとてもきれいでした。(写真を撮る余力はありませんでした……。)美しさと厳しさが山陰海岸ジオパークの魅力です。
中間点少し前(佐津駅の辺り)で左折し、山の方へと向かっていく時も、空と山とが作る風景が美しく、自然のスケールと自分の存在の小ささに時を忘れます。たしかここのエイドで水を取ったつもりが甘酒で、しまったと思ったものの時すでに遅しで手がべとべとになったのを覚えています。白い紙コップの内容は分かりませんので、取ってみるまでのお楽しみですね。
他にも、混雑する折り返し地点にエイドがあったりもしますので、結構経験とテクニックがないと給水は難しい印象です。勿論、止まって給水すればよいだけの話ですが。エイドの間隔は短いですので、駄目でも次取ればいいやという割り切りが大事ですね。
スペシャルドリンクを置けるエイドもありましたが、手渡しでもなく道も狭いので、相当工夫しないと走りながらは取れないと思います。そもそもが特権ですので、取れなくても諦めましょう。
中間点までは余裕でしたし、25kmからの上りも、ペースランナーさんの「坂らしい坂はこれが最後です!」という声に元気をいただき、その先のトンネルも難なく走れていました。30kmを過ぎて、もう今日は大丈夫だろうということで、前に出ました。
ですが、端的に言って、自分の脚の状態と実力を見誤っていました。
漁港の先しばらくは集団より前にいられたのですが、橋を渡っている時の揺れにも少々困惑し、堤防の上のエイド辺りでは完全に失速していました。左脚のシンスプリントだと思いますが、かなり痛くなっており、それまでのペースは維持できなくなりました。
その先は折角の絶景を楽しむゆとりもなく、ただ辛い気持ちで何とか進みます。サブ3.5集団に置き去りにされてからも、まだそんなに差は開いていないのだと言い聞かせますが、実際は離れる一方ですのでかなり堪えました。36km過ぎくらいで完全に左脚がごまかせなくなりました。
三田浜で折り返してからは、もう本当にボロボロで、スピードも全く出ません。もうキロ6くらいまで落ちていました。青空を見上げながら、“いつか走れなくなる日が来て、こんな感じで引退するのかな”と暗い気持ちになりました。
どんどん抜かれて情けなかったのですが、この経験が財産になると言い聞かせて脚を前に運びます。最後は何とか腕を振って頑張り、ゴール直前で一人は抜きました。自分の頭の中では3時間45分くらいはかかったかと思っていましたが、実際は3時間35分台で、意外と遅くなかったなと少しだけホッとしました。
当時は強がってみましたが、やはり精神的にはかなり辛かったです。今思えば本当にサブ3.5を狙うなら、前半は1時間50分くらいで入るべきだったと思います。今であればレース間の疲労抜きや食事も工夫していますので同じ展開にはならないと思いますが、当時の走力でフル三連戦は明らかに無理があったということです。
この時に痛めた左脚はなかなか思うように回復せず、翌月の東尋坊愛のマラニックでついに腸脛靭帯が限界を超えて、一歩歩くごとに強い痛みに襲われ、103kmで13時間半近くかかるという大変厳しい経験をしました。どの大会もまた元気な状態で走って、思い出を更新していきたいなと思っています。
アフター(香住カニと城崎温泉)
素晴らしい景色と険しいコースの先にはカニ雑炊とカニが待っているという奇跡です。嬉しさが溢れますね。こんなに立派なカニをいただけるとは、香住の皆様の気合いを思い知りました。プリっとした身に今日の辛さも癒されます。やはりおいしいものは人を元気づけてくれます。
会場には出店もあり、肉やビールを購入することができます。フィニッシュも柵で厳格に区切られているわけではなく、大らかな感じです。硬く考えずに、穏やかな気持ちで走るとより楽しめる大会だったのだと思います。
たまたまエントリーしていた中国人の同僚と二人で、会場の近くにあるかに市場にやって来ました。彼はオフィシャルツアーで参加されており、話を伺ってみるとそちらもなかなか魅力的なようでしたので、大会に出てみようかなと思われた方は検討されてみるのもよいかもしれません。
そして香住ガニを思い切り、うめえうめえといただきました。ぷりっぷりの身も口の中に飛び込んでくる汁も幸せを凝縮したような逸品です。味だけでなく栄養面でも、アスタキサンチンが活性酸素を除去してくれて大助かりです。予想外に気前よく値引きしていただいた上にカニ汁もサービスしていただけるなんて……。来た甲斐ありまくりでした。香住を訪れたからには絶対に食べておいた方がいいです。
あの武藤敬司選手まで訪れた由緒ある市場です。皆様是非に。
電車まで少し時間もありましたので、辺りを歩いてみました。あまりに青くてきれいな海の姿に息を呑みます。冬の寒さは厳しいでしょうし、普段は寂しく感じることもあるかもしれませんが、こんなに静かで気持ちのよい自然に恵まれた香住は素敵な場所だと、普段都会で忙しなく過ごしている自分にはよくわかりました。
もっとここにいたいところですが、次の目的地へ向けて香住を後にします。ありがとう香住、また会う日まで。
余力と時間があれば余部にも行ってみたかったのですが、今回は無理そうでしたので城崎温泉へとやって来ました。十数年前に青春18きっぷで通った際はちゃんと温泉を堪能できませんでしたので、今日こそはという思いがありました。
天下の城崎温泉で土曜の夕方でしたので、観光客も多く、賑わっていました。浴衣と下駄の音が新鮮です。言うまでもありませんが、景観も流石に風情に満ち満ちています。
城崎温泉は観光地として完成している印象でした。至る所にお店があり、余程気を引き締めてかからなくては捕らえられてしまい帰れませんし、食べ過ぎてしまってなす術もなく太りますね。でも、温泉地に来たからには身も心もすっかり緩めてしまって、また新しい自分に生まれ変わって生きていくというのは、長期的に考えるとずっとプラスになると思います。その方が幸せな人生でしょう。
一日券は七つの外湯に入り放題という夢のある話です。時間のない中どうにか三つは攻略しました。脚の回復にも間違いなく資することでしょう。そうでなくても、マラソンの後の温泉は実に気持ちの良い至福の時間です。皆様も大好きですよね。
イナカーという名前の市営バスもありました。この掲示板のデザイン、しぶくないですか。一目見て気に入りました。
沈む夕日に見送られながら、こうのとりで大阪へと向かいます。餡ともっちり生地が売りの京丹後銘菓がちゃまんもおいしくいただき、また来たいなあとしばし浸っていました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。香住・ジオパークフルマラソンそのものだけでなく、香住の魅力が少しでも伝わってくれたならとても嬉しいです。実際に足を運んでみると、聞いた話とは比べ物にならないくらい豊饒な世界に触れられることでしょう。
当時は怪我をしたこともあり素直にそのよさを受け止めることができない部分がありましたが、今回こうして振り返ってみて、なんと素晴らしい景色、カニ、そして皆様の応援に恵まれたのかと、しっかり認識することができました。時間が経つことで自分も変わり、改めてその土地の素敵な部分に気付かされる、そんな経験ができて幸せです。参加させていただいて、本当によかったです。
記事を書いていて、またしても、“この大会も再度走らせていただきたい!”という思いが強くなってきました。人生、楽しみが尽きませんね。こんな気持ちにさせていただける香住の皆様に感謝です。また笑顔でお会いしましょう!
ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。