2020年に、もう4年も前のことなのかと遠い昔の記憶を辿りながらも、また走らせていただける日が来ることを信じて懐かしく振り返りました。2023年は秋田内陸リゾートカップ100kmのフィニッシュ後に久々に弘前にも行けるので楽しみです。
初参加のこの大会は、遠くに望める岩木山、至る所に見られるりんごの木、影を作ってくれる木々等、コースは地元の空気を楽しめるとても良いものでした。スタート前のラジオ体操が津軽弁&津軽三味線アレンジだったりと工夫がいっぱいだったのも楽しい思い出です。
(当時は写真を撮りながら走る芸当も習得しておらず、レースの記録もほとんど残っていないため、ほぼ旅行記です。)
10月の頭ということでフルマラソンにはやや暑かった気もしますが、公設私設のエイドの皆さんが親切で、氷を3度もいただけたのがとても助かりました。お陰様でラストの坂も思い切り上げて3時間半以内には収まりました。
個人的には、そこそこの暑さと大きく上って下るコースは、シーズンの入りとしていい練習にもなると思うので、おすすめできる大会です。大阪からはるばる行ってよかったです。2016年大会では楽しい思い出と応援をありがとうございました!
二週間後にはなんと長井マラソンに出場しています。当時から元気に飛び回っていました。
前日(斜陽館見学と前夜祭)
飛行機代と観光の都合上早朝に出発です。青森空港からバスに揺られて10時半過ぎには弘前駅到着です。早いですね。
青森まで来たからにはりんご菓子を食べない理由はありません。駅のラグノオさんでりんごスティックを買ったところ、お饅頭までサービスでいただき、出だしから好調です。東北といえばラグノオさんのお菓子です。
五所川原までJRで移動し、津軽鉄道に乗り換えです。こちらでは太宰列車が運行しており、観光客のボルテージは高まります。この移動中に『津軽』を読んでいます。
車内では観光案内もしてくださり、ああ遥々青森まで太宰治を追ってきたのだなあという気持ちになります。車窓から見える風景が、時代は大きく異なれど、彼の作品の源流になっているのだろうと思いながら揺られていきます。
金木駅で太宰列車に別れを告げ、斜陽館の方へと向かいます。メロス坂通りには作品の一部が刻まれたプレートがあり、このエリア一帯を歩けるだけでも熱いものがあります。
斜陽館に向かう道すがら、太宰治疎開の家旧津島家新座敷がありましたので何気なく見学させていただいたところ、歴史を当時のまま閉じ込めた建物や調度品に直に触れられ、その中に溶け込めることに加えて、係の男性からものすごく詳しく建物と作品の説明をしていただけました。ここは絶対に来た方がよいと、自信を持ってお勧めできます。
「あの向こうの方まで庭でした」と普通に言われるので、どれだけ広大な土地を所有していたのかとおののきます。
ランナー的には溜まって溜まって仕方のないTシャツですが、ここまで来たからには買うしかありませんね。勿体なくてまだ着用していませんが……。
本来の目的地である斜陽館にやって来ました。あまりの作りに城かと思いました。豪邸どころの騒ぎではありません。こんな場所で地元の盟主の一族として育てられるとは、どれ程抑圧されたことでしょうか。
蔵の石段は、津軽の中に登場します。読んだばかりの自分にはグッと来るものがありました。
五所川原を後にして弘前に戻ります。列車の本数の関係でリゾートしらかみという特急に乗るしかなかったのですが、津軽弁のナレーションもあり、ただ乗るだけより圧倒的に楽しめました。こういう地方色を活かした企画は観光客的には嬉しいですね。
宿にチェックインし、前夜祭会場の観光館へと向かいます。これが弘前城公園かと感慨に打たれながら歩きます。折角ですので桜の時期にまた来たいですね。
前夜祭は1,000円ということもあり地元の料理を存分にふるまうというわけではなかったのが惜しいですが、同じくらいの年齢で同じように全国を回っていて普段のタイムも大きくは同じ方と仲良くなれたのはよかったです。この先いび川、奈良、別大が被っていました。しかし彼は5週連続フルと仰っており、私以上に問題のある人物のようです笑
夜暗くなってから歩きつつ見ると、高い建物が多くないからか照明がいい感じのお店が多いような印象を受けました。冬は雪と寒さで大変でしょう。お酒を飲まないのでなす術なく宿に帰り、ごろごろして過ごしました。
レース
レース前
6時12分の駅前、まだ涼しいものの暑くなる気配を感じます。とりあえずコンビニで食料を調達します。
暑さ対策はキャップとネッククーラーです。サンシェードは使いませんでした。タイツは結構ごつめのものを使用していました。シューズはおそらくアミュレットです。テーピングはニューハレの踵用です。
宿はビジネスホテル新宿さん(その後名前は変わったようです)でしたが、部屋も広くて快適でした。おかみさんが親切な方で、りんご三種食べ比べをと朝早くからわざわざ用意して下さりました。こっちは糖度が高いとかやや酸味が強いとか、そんな風にりんごの国の方に教えていただきながら食べると、違いも成程と理解できました。ごちそうさまでした。
会場まではバスも出ていたものの、アップを兼ねて歩きました。会場到着後、少し奥の方で参加賞のタオルを受け取ります。そして、ラジオ体操が津軽弁三味線アレンジでとても面白いです。流石は青森だと感心しました。
会場から少しだけ離れた場所がスタートですので、歩いて移動します。全体にのんびりした空気で、地方大会の良さにわくわくしてきます。
レース
まずは皆で坂を下ります。前方に岩木山が見えて気持ちいいです。暫く平地を走った後、青森らしいりんご畑の間を走ります。ここはアップルロードと呼ばれるエリアですね。赤い果実でいっぱいとか、りんごの香りが楽しめるというわけではなかったと思いますが、これだけ両サイドにりんごの木があるだけでテンションが上がります。嗚呼、ここはあの青森なのだと。
コースは比較的シンプルで、前半上って折り返して帰ってくるものです。高低差は100mくらいですが、行きの岩木川沿いもそこまで急な坂というわけではなく、まあ少し上っているのかなくらいの感覚です。見通しのよい道路を上っていき、折り返してくるランナーの速さに感心していました(なお、今はこうして軽く書いていますが、当時は前半妙に疲れて駄目そうだと思ったものです。果樹園の先の木陰を抜けてからはあまり日陰がなかったと思います)。
パンフレットの事前発送はないので、ウェブサイトでコースの大まかなアップダウンと、給水の位置をチェックしておくと気分的に楽ですね。途中の木陰のエリアを抜け、コンビニから先は視界が開ける展開だったと思います。
折り返してからは基本下りですので、割と精神的に楽でした。やはり暑さが気になったのですが、途中で氷を渡して下さったエイドの方のお陰でかなり回復しました。当時は首中心に全身に当てた後、袋を少し破いてキャップの中に入れ、頭と首筋を冷やすようにしていました。今ならできるだけ長い時間手に持って走ると思います。手のひら冷却は効果が大きいとされていますので。暑さにやられている方も多かった気がしますので、氷をもらえる所ではしっかり受け取ることをお勧めします。
果樹園から住宅地のエリアは少しだけ上りますが、短い時間だったと思います。すぐに下りに切り替わり、ガソリンスタンドの近くを大きく右に折れて平地です。ここの直線で、3時間半のペースメーカーさんの一人が負傷されていたのか歩いておられました。ギリギリ3時間半に間に合うかなと認識します。
最後に少し上りがあります。スタートでは下っていますので当たり前ですね。坂あるあるですが、遠くから見ると急坂に見えるものの実際行ってみるとそこまでの辛さは感じませんでした。ここは応援も多い見せ場なので頑張ってください。「3時間半いけるよ!」という声も飛んでおり、自分も肘を飛ばして力を振り絞りました。傍から見ると、すごく3時間半を切りたい人に見えたと思いますが、ここに至るまでに愛媛、京都、鳥取、四万十川では3時間半を切っていましたので、自分的にはトータルでどうこうよりも最後だけは上げたいという一心でした。
坂を上って細かく左折と右折を重ね、会場に戻ってきて左に折れればフィニッシュです。最後の最後は道がでこぼこなので、脚を痛めないように注意しつつ、無事に3時間半を切って終われました。なお、フィニッシュゾーンはあまり広くないため、終わってその辺に寝転がると危なかったと思います。
アフター
レース後(竜飛崎へ)
フィニッシュ後、完走証としてりんごがふるまわれます。りんごジュースも買えますのでおいしくいただきました。しつこいようですが、嗚呼、あの青森にいるのだと実感する瞬間です。
暑さもあって(当時としては)そこそこの順位だったため、更衣室も割と空いていました。
さて、この後は思う所あって竜飛崎を目指します。弘前からは滅茶苦茶遠いのですが、とにかく行くことにします。弘前城公園を抜けて駅を目指します。この時は弘前城天守が改修のため移動されており、何もない空を見ることができたのはそれはそれで貴重な経験だったと思います。
折角なので蟹田で途中下車して海までいってみました。透き通っていますし、空の色も映してきれいです。
北の果て三厩駅に着くころには日は傾いていました。ここから竜飛崎へはコミュニティバスが出ており、確か当時は100円だったと思います。乗車時間はかなり長いです。
翌日(竜飛崎、アスパム)
雲がかかっているものの、朝日は見られました。この時感じたものを忘れないでいたいです。
日の出を見た後、もう一生ここに来ることもないのだろうと思いつつ、周囲を軽く走ってみました。こういう、一生に一度の経験ができるのもランナーならではの喜びです。
これがあの階段国道です。皆の憧れですね。
北のはずれ。ボタンを押すと曲が流れますが、無粋なので押しません。音が大きいのです。轟音と言ってもよいでしょう。
朝食後、バスまで時間があったので、もう少しだけ周囲を歩きました。諦めが悪いと言いますか。
もうここに来ることはないでしょうし、それで大丈夫でしょう。この日の景色と風を、津軽海峡の向こう側、函館から感じることになるとは、この時はまだ知る由もありませんでした。それもまさかの三度も。
青森市内に戻った頃には雨がかなり強く降っていて困ったのですが、親切な観光案内所の方に傘をお借りすることができたお陰で、アスパムには行けました。
折角なので郷土料理をいただきます。じゃっぱ汁とほたて貝焼きみそが特にうまいです。この濃い味に寒さが加われば酒と米が絶対に進みますね。
360°展望台に来ました。津軽半島と下北半島が見えるらしいのですが……。
チーズアップルパイがうまかったです。お土産もそうですが、食べ物の誘惑がものすごく強いですね。
青森の伝統文化を伝える展示も力が入っており、少し回るだけでも楽しめました。
またきっと来ようと思いながら、青森駅を後にします。ありがとうございました。
最後に
行ってみたいと思いながらもなかなか行けない青森ですが、こうしてマラソンでご縁をいただき、思い切って参加してみると、岩木山、果樹園に次ぐ果樹園、田んぼ、ゴール後のりんご等、青森らしさが詰まった本当にいい大会でした。途中の川や木陰にも癒されましたし、エイドの給水と氷、応援の力は大きく、最後は上げてやろうという気になれました。
観光も食べ物も楽しめましたし、とてもいい旅になりました。ですが、まだまだ青森の魅力のごく一部しか体感できていませんので、次はまた違った時間の使い方をして、素敵な思い出を胸に刻みたいと思いっています。
コロナ禍も一応落ち着き、弘前・白神アップルマラソンも笑顔で開催される日が戻ってきて嬉しいことです。素晴らしい大会を開催していただき、どうもありがとうございました!