ちょっと長すぎる旅ランブログ

きっと貴方が好きな大会が見つかります。

第75回富士登山競走(2022/7/29) 一生に一度でもいいから!願い続けて叶った日!

五合目コース参加時に独特の空気に魅せられてから早三年。人生も折り返し、限られた時間で自分が山頂に挑めるのは最初で最後かもしれません。この一回でどうしても決めなくてはならないと覚悟して参加しました。

途中何度も弱気になりかけましたが、その度にこれまでの人生を思い出して何とか立て直し、とにかく全力を尽くすように自らに言い聞かせました。もうしんどいとかカッコ悪いとか言っている時間はありません。遅かろうと何だろうと絶対に上りきりたいと念じ続けて、止まることなく脚を前に運びました。

最後の鳥居をくぐってから左折し、上り切った瞬間の安堵とプレッシャーからの解放、そして今の自分がこの場に挑んで願いを叶えていただいたことの重みを思い、少し涙が出ました。本当に、本当によかったです。今思えば夢の中にいたような4時間18分40秒でした。

果たして自分のような半端者が参加してよいのかと躊躇う程の何かに満ちた大会で、今後走らせていただく機会はもうないかもしれませんが、この一生の思い出を胸にこれから生きていけます。コロナ禍で開催に困難が伴う中、力を尽くして大会を実現して下さった富士吉田の皆様、下から鬼の形相で上ってくるランナーに道を譲りつつ応援までして下さった登山者の皆様、一緒に励まし合いながら上って下さったランナーの皆様、本当にありがとうございました。

fujimountainrace.city.fujiyoshida.yamanashi.jp

うっかり参加してしまった五合目の記事はこちらです。

savarun.hatenablog.com

準備や作戦、当日の心情などの詳しいことは次のページにあります。こちらがメインですので、ご覧いただけると嬉しいです。

準備

三年前に特に何も考えずに五合目コースに臨み2時間12分かかった経験を踏まえ、今回はとにかく富士登山競走用の練習と作戦が必要だと姿勢を改めました。

完走者のブログも沢山読みましたが、何よりもみやすのんき先生の「サブスリー漫画家 激走 山へ!」がとても参考になりました。何度も読み、練習法に加え、完走ギリギリのスケジュール、写真、コースマップなどを頭に叩き込みます。事前に現地に行くことができない自分にとっては、これらの情報が極めて有用でした。

みやすのんき先生のランニング本はいずれも非常にためになります。

試走やトレッドミルができる環境にはないため、金沢では、

・遅くてもよいので上りの身体の使い方を覚えるためにひたすら早朝に野田山の舗装路を上る(→1.3km弱↑100m程を8分弱~10分30秒くらい。一番多い時で6本。シューズは薄底で上る練習なのでライトレーサー2とadizero RC2、いわて銀河でも使用したお気に入りのasics Evorideです。)。

・週一は犀川河川敷の芝生で無酸素耐性をつけるべくインターミッテント12本(まだ新しいEvoride2)。終了後に懸垂(2年以上やらずに4月には数回で力尽きショックを受けるも、20回程度には回復。)

大阪では、

・終業後に恥を忍んで階段上りを繰り返す(一段飛ばしの歩きで30階以上×4)

・休養のための短いスロージョグ(気分転換にasics ハイパースピードで50m程度の本気のスプリント)

という付け焼き刃メニューで挑むことにしました。結果的に、とにかく最後まで立ち止まってしまうことなく歩き切れましたので、最低限の準備にはなっていたのだと思います。

他は暇を見つけてはバランスディスクに乗ることと、体調管理としてできるだけ睡眠時間を確保することに努めました。怪我防止の意味でもとてもよかったです。減量が全く上手くいかず69kg程あったのは不安でしたが、走れてはいたので大丈夫だと言い聞かせます。

高山病が心配だったのでブルーバックスの『呼吸の科学』も読み、水分補給や、意識的な深い呼吸、口すぼめ呼吸の効果などを頭に入れます。予防薬(アセタゾラミドやデキサメタゾン)は高価なのと、もし体やルールに合わなかったらおしまいなことから使用せずです。

とにかく栄養と睡眠を多めに取り、最後の坂道練習は日曜の4本までとし、月~水はごく短い時間スロージョグのみ、前日はノーランで回復に努めます。上りばかりの日々はしんどくはありましたが、怪我をしそうな気配も感じず、例年の7月に比べると間違いなくいい練習ができた手応えがありました(怪我に苦しんだ2020年、2021年は別として、2019年までも毎年7月には身体がだるくてあまり走れない感覚に悩みました)。

前日(やっぱりひたすら移動)

三年前と同じことを書きますが、大阪から富士山は大変遠いので移動経路は迷います。結局基本的に前回と同じ、

大阪→新大阪:JR新大阪→静岡:ぷらっとこだま(8500円。値上がりしてました)

静岡→三島:ひかり(1980円。時間を買いました)

三島→河口湖:高速バス(片道2300円)

河口湖→富士山:私鉄(160円)

で移動しました。前日受付の富士吉田市役所は歩いてもよいのですが、折角なので100円の循環バスを使いました。

朝食はぶりの塩麴レンジ蒸しとアボカドサラダなどでした。

移動は詰まっていたので、静岡駅でリトルマーメイド(金沢と高岡にも一件ずつある)のクリームチーズレーズンパンと抹茶クリームどら焼きを買うのが精一杯でした。どちらもおいしくテンションが上がります。三島ではわさびジェラートを買う余裕すらなく、河口湖駅では岩石唐揚げを買うか迷いましたが、夕食に近いので見送りました。

カーボローディングの名の下に。

三島の暑さに怯みます。

充実の河口湖駅よ。

トーマスとのコラボ。奥の富士山達は……。

富士山駅では屋上展望台から富士山が望めるのですが、あまりにでかくてビビるので見ない方がいいかもしれません。あの巨峰に人間が一気に上れる気は全くしません。それでも例年半分くらいは時間内に完走しているのだと自分を鼓舞します。

いや無理やろ。あんなどでかい山に非力な人間が……。

富士吉田市役所前には歴代優勝者の記念碑があり、尋常ではない威圧感を放っています。前日の手続きはあっさりしたもので、持参した紙を提出してリストバンドをもらって終了です。スタート周辺の景色を見て、明日に備えます。

とんでもない所に来てしまった気がします。

明日はここだけダッシュするのでしょうか。

折角なので早めに夕食を食べておこうと、市役所から程近い「やぶ」さんへ行ってみたところ、チキンカツ定食(1050円)が大変豪華で大満足です。カツのボリュームがすごく、デザートもパイナップル、メロン、スイカと贅沢です。店員さんも明るく、ここで食べてよかったなと思いました。おすすめです。

ボリュームもあって大満足でした。

お宿は明見温泉さん。市役所からは歩ける距離です。とても親切に対応していただいた上に、お部屋もきれい、お風呂もトイレも快適とものすごく良いお宿で驚きました。

普通に穏やかな心で観光に来たいところです。

栄養分の補給と翌朝の食料を求めてローソンに行き、ワッフルコーン、卵、チーズ、牛乳、水を仕入れ、翌日の準備を整えて21:30頃には就寝です。

隙あらば食べるスタイルです。

当日

レース前

明見温泉さんの優しさに恐縮

4:30前に起床です。割とよく眠れました。宿ではこんな早い時間からおにぎりサラダを用意していただき感謝です。会場までは歩いていこうと思っていたところ、何と送迎して下さるとのことで大助かりでした。明見温泉さんはとにかく至れり尽くせりで、宿泊して本当によかったです。

やはり東日本の朝は早いです。

おにぎりで元気いっぱいです。

装備と持ち物

アンダーアーマーのノースリーブにミズノの360度ポケットランパン、ユニクロエアリズム、ザムストハイソックス、ニューハレXテープ二重です。後半の岩場に備えて100均の手袋(大桑の赤のれんで購入)を用意しましたが、これがあるのとないのとでは大違いです。怪我を恐れずガンガン手を着き岩を掴めるので、相当脚を温存できました。

持ち物は、マイカップ、ジェルフラスコ(最初は経口補水液。途中の補給にも使う)スマホ(ジッパー付袋)、アミノバイタルプロ2つ、2run、ショッツ(終盤のお守り。使わず)、小銭(500円)を前の方に、下山用のポンチョ(奈良マラソンでもらって使わなかったもの)、靴下を切っただけの手作りゲイター、マスクを詰めた袋と手袋を腰の方に配置しました。これ以上は重いと判断し、荷物は絞りました。

これくらいであればそう邪魔には感じませんでした。

シューズは2019年に自己ベストを出した時の頼れる相棒、エンペラージャパン3(ミズノ)です。まだフル3本でしたが、関門ギリギリの身としてはケチっている場合ではありません。自分にはとても合っていますし、反発も強いので頑張ってもらうことにしました。グロス3時間0分1秒という不名誉な記録でこのシューズを終わらせるわけにはいかない、花道を用意したいという思いもありました。

よろしくお願いします。地味にリディアード結びです。
会場

五号目打ち切りという話もなく、何より快晴で富士山の山肌がくっきりと見えたので、今日はてっぺんまで行くのだと覚悟します。

誤魔化しようがないくらいくっきり見えています。

前日にワクチン接種証明と体調管理シートは出しているので、当日は検温のみです。試供品のアミノバイタルプロをいただいたのでスタート前に飲んでおきます。他に持参したアミノバイタルゼリー赤も飲んでおきました。トイレも別に行きたくありませんでしたが、安心感を重視して一応行きました。多少並びましたがどうということはありません。

荷物預かりもスムーズです。

富士山があまりにバッチリ見えるので日差しがきつそうだと思いましたが、序盤の林道では帽子が役に立たず、着用が義務づけられたヘルメットとの相性が悪いと嫌なので、山頂が曇る可能性に賭けました(この賭けに根拠などありません)。スタート前のアナウンスでは山頂の気温は11度でしたので、これはそこまで暑くはなさそうだと安心します。

スタートはDブロックでしたが、2019年の五合目が2時間12分だったので仕方ありません。要は今日頑張ればよいだけですし、過去の自分より(上りに)強い自信はありました。過去10回優勝の芹澤選手のお話で、開催に感謝すると共にバテた時は道を譲ることの大切さを改めて胸に刻みます。「今日のビールはうぅんまいぞ~!」の掛け声は今回は控えて、MCの方の声に心でエイエイオー!をやっていざ出発です。4時間30分ひたすら上り続ける戦いの幕が開きました。

丁度富士山が見える位置からスタートしました。

始まった以上は進むしかありません。頑張りましょう!

レース

前半(五合目まで)

序盤~馬返し(舗装路の上り)

スタートロスは44秒。ほぼ気にならないレベルです。本日の計測はネットタイムと言われたものの、自分レベルでは順位を競うでもなく、とにかく完走できるか否かだけが問題ですので、ガーミンの表示は高度、時刻、ネットタイムにしていました。今日はセンサーを着用していませんし、ペースや水平距離は参考にならないので、この画面だけで足りると考えました。

スタートからは皆さんとにかくつっこむイメージだったのですが、それ程でもなかったように思います。とりあえず左折して金鳥居目掛けて走ります。斜度はまあ上っているよなくらいで、金沢で言えば有松交差点からアルビスに向かうくらいでしょうか(こんなこと書いて分かる人はいるのか?)。ただ長いので、早くも少し疲れます。目安は7分で、概ねそれくらいで通過。これはみやすのんき先生がギリギリのゴールを想定して組んだスケジュールに準拠しています。次の浅間神社が15分、高速高架27分、中の茶屋40分、馬返し65分の予定です。五合目以降は見たこともない自分には、とにかく馬返しまでで完走の確率が高い集団に入り、後は流れについて上る以外に策はありません。後から振り返ってもこの考えは正解でした。

この先は苦し過ぎて写真など撮っていられませんでした。

浅間神社ではマイカップ給水ですが、渋滞が怖いのであまり止まっていられません。とりあえず落ち着いて奥のタンクを狙うのは鉄板かと思います。林道ではそこまで苦しくもなく、周りに合わせて上って行きます。体感的には野田山の下の方くらいでしたので精神的には余裕があります。

時々抜いたり抜かれたりしながら、腸腰筋で脚を上から回すことと腕を抱え込み過ぎないことに注意しながら淡々と進み、高架はほぼ予定通りの通過です。このまま行けば中の茶屋にも40分で着けそうだと言い聞かせ、慌てないようにします。無事に39分台で中の茶屋、ペットボトルの水を贅沢に飲み、体にもかけます。

この先は路面が結構荒れていて割れ目に落ちると捻挫のリスクがありますので、足元をかなり注視することになります。スピードも出ず、心配になってきました。旧大石茶屋跡でジェルフラスコの水を飲み、どうにか気持ちを奮い立たせますが、この辺りは歩いた方が速いのでは?という誘惑に負けそうになりました。しかしどうしても思うところがあり今日は全力を尽くす必要があったため、遅くなっていると分かりつつも走り続けます。

馬返し前のエセ最終コーナー地獄を進むと駐車されている車が見えてきて、確かあと少しのはず…と思った辺りでやっとあの柵に辿り着きました。給水で沢山水を飲んだ後での計測マットで64分35秒(ネット63分51秒)です。前回は歩いたりしているうちに72分かかったことを思えば進化したものです。最後はかなりペースダウンしていましたが、何とか歩かずに到達できたのも自信になりました。大乗寺丘陵公園入口付近(結構しんどい)や御参詣坂(冗談かと思うレベルの激坂)程の斜度になる地点はなかったと思います(金沢の人以外分からない情報再び)。

馬返しから佐藤小屋まで(トレイル)

みやすのんき先生スケジュールでは55分間で、五合目到着は2時間になっていますが、自分はロードの上りと職場の階段しか練習していないため、大体60分で2時間5分の通過を目指します。前回適当にやって59分台でしたので、これくらいはできるはずです。

ここは基本歩きで無理はしない作戦です。トレイルは実に弱いなと実感し、結構抜かれますが、大きく遅れを取らないようにだけ気をつけます。橋や幾らか平坦な所は周りに合わせて軽く走るようにし、落とし穴やハードルも大きなミスをしないようにします。琵琶湖バレイスカイランの経験からすると走れるレベルのトレイルですが、先は長いので体力を温存する道を選びます。

二合五勺で給水、この先は前回程は長く感じませんでした。一度でも経験していると違うものです。それでも四合五勺から五合目の辺りでは、本当に目標タイム通りにいけるのかな?という不安は拭い切れません。しかし舗装路に出て少し走り、右折して再びトレイルという流れは分かっていますので、その分の心のゆとりはありました。

五合目通過は2時間3分45秒、予定通りです。後は流れについていけば間に合うはずです。希望が見えてきました。補給食としてドーナツをいただき、持っていた2runも一粒食べておきます。下界の様子は見えにくくはありましたが、あまり暑くなっていないことにも勇気づけられます。

絶景は見られずとも暑いより百倍ましです。
後半(砂と岩場の世界)

後半について

ここからは未知の世界です。本やブログを読むと、誰しも「試走は一度はやった方がいい」と極めて正しいアドバイスを書いていますが、関東に住んでいない限りはそう簡単に富士山にやって来ることなどできません。私はぶっつけで臨むしかありませんでした。高山病も、力が伝わりにくいと聞く赤土も、ゴジラの背中と言われる岩場も何もかもが未経験です。そもそもどんな景色なのかも、直には見ていませんので先も何も分かりません。しかしそんなことを言っていては一生チャンスは巡って来ないので、とにかくできることをやるしかありません。

今大会は参加人数を絞っているので渋滞が少ないはずで大チャンスだと思っていました。更に前日夜には雨が降ったことから、砂も引き締まり、初心者でも歩き易いものになっているはずです。これだけ有利な条件が揃っているのに駄目なら、もう無理ではないかと考えましたし、また坂道練習ばかりの日々は嫌ですので、何としてもここで決めてしまいたいところです。

六合目~七合目

まずはヘルメットを受け取り、軽量かつ快適であることにホッとします。安全指導センターへの道は致命的な渋滞が起きるエリアとされていますが、立ち止まってしまう程のことはなく、それなりに流れていました。参加人数縮小のご利益がモロに出ていたと思います。

事前の案内では給水がないようなことも書いてあった気がしますが、ここでもお水をいただけたのはよかったです。高山病対策としては水分補給も大事ということもあり、前日からは経口補水液ばかり飲み、レース中もひたすら水を飲んでいました。マイカップだと遠慮なく注げるというのもあります。ジェルフラスコにも入れて小まめに給水します。富士山でふんだんに水が飲めるということは極めてありがたいことだと実感します。

この後に延々と続くつづら折りの砂地は、未経験だとかなり堪えます。いつ終わるのかという予測が立たない中、崩れる足元にめげずにただ完走ペースに乗った集団にいるはずだと周囲の方の経験を信じて進むしかありません。歩きのフォームとしては腰に手を当てると比較的楽になる感覚はありました。地面からの反発が期待できない局面では腕は重りに過ぎないため、ブレを抑えると有益なようです。大きな段差は手押しですが、そこまでの角度ではない場合は腰に当てるスタイルの方がよさそうです。

とにかく少しでも歩き易い場所を選び、たまにバテた人を抜くことを繰り返しているうちに、山小屋が見えてきます。そして噂に聞く岩場の出現です。実は岩場は腕を使うことで脚を温存できると聞いていたので、100均手袋をここぞとばかりに装着し、積極的に四つん這いで進みました。実際は脚の力で上れる角度と高さだとは思うのですが、下を向くことでまるで膝に手を当てて呼吸を整えるような感覚がありましたし(頭の位置が下がると気分的に楽なのでしようか?)、実際脚への負担は減らせるので、見てくれを気にしている場合ではありません。コース取りが上手かったとは言えませんが、ダメージは抑えられたと思います。素手だと怖くて岩に手を着けなかったと思いますが、分厚い手袋の力でガンガンいけました。ちなみにこの手袋は最後まで破れることなく掌を守ってくれました。

ハイハイでみっともなく進むおじさんタイムは結構続きました。次の給水はどこかなと思ってみてもそれらしい場所はなく、山小屋で買い物する時間もありませんので、やむなく歩いて通過します。この辺りは給水と山小屋の関係をきちんと覚えておいた方がいいですね。気温は下がっているはずなのに暑さを感じる時間が長く、精神的にも辛いですが、手袋も水で濡らして掌から体温を下げるように努めます。重くなると言えばそうなのですが、暑いよりましと判断しました。

八合目~頂上

先が見えない中、八合目富士山ホテルの関門が気になりましたが、よく分からないうちにどうにか3時間46分42秒で通過できました。ここから30分程のはずなのでアクシデントさえなければどうやら間に合いそうだと思います。しかし確信が持てないのでやはり常に不安です。上をちらりと見ては、“少なくともあそこまで何分くらいでは行かなくてはならないのだろうが、どれくらいかかるか全く見通しが立たないな”と考えてしまします。何とか周囲の方と声を掛け合い、絶対に最後まで行くのだと気合いを入れます。

九合目の鳥居は、例の小銭が刺さりまくっているもので、写真くらい撮りたいところですが、とにかく心の余裕がありません。呼吸が苦しいかというとそうでもないのですが、それにもかかわらずあまり脚が進まないという謎の状態に陥るのがトレイルなのかもしれません。ゼーハーは基本的に馬返しまでで、その後は休んでいるはずなのに、ちょっと動くと疲れるという体たらくで、本当にこれで大丈夫なのかと思ったりします。正直、もう二度とこんな経験はしたくないと思いながら、終わりの時が訪れるまでただただ耐えます。たまに見るガーミンの高度も3700mに近づいてきました。

頂上まであと600mという表示に、いよいよこの苦しみの終わりが近づいていると認識します。残り時間的にこのまま流れに乗ってさえいればいけるはずだと言い聞かせます。ところが一筋縄ではいかないのが富士山の富士山たる所以で、最後の最後に渋滞して上りにくくなってしまいました。これではギリギリになってしまうと恐怖を感じたため、ここだけは四つん這いでラストスパートをかけました。とにかく人がいなくて上れそうな道を腕力に物を言わせて進みます。ここで何となく止まっていては危なかったと思います。最後の鳥居に向かう上りでようやく終われそうだと理解できましたが、それまではまだこの先に道が続いたらどうしようと必死でした。

最後は左折して、走ることもなく一歩ずつ歩いてフィニッシュラインを越えました。今回は期するところがありましたので、ああもう本当に、ここにこうして辿り着くことができてよかったと、少し涙が出ました。約束通り、一緒に頑張った!

遠くは見えませんが、くしゃくしゃの顔で写真を撮っていました。

アフター

しばらく感慨に耽りつつ、写真を撮り、日本一高い場所からメールとZoomのチャットを送ります。同じくらいのタイムで完走された他の方も、やはりギリギリだけにこみ上げるものがあったようで、健闘を称え合いました。レース中は絶対一緒に頂上行きましょうと励まし合い、完走後はこうして心から喜び合える、そういう所が本当に特別な大会です。

フィニッシュ地点の感情の爆発ぶりと連帯感はけた違いです。

ゴール後はひたすら給水の水を飲み、アミノバイタルプロも摂取しました。できればもっと余韻に浸りたいところですが、ギリギリのゴールの上、下山も大変と聞いているのでバスの時間も気になります。本当のゴールはバス乗り場とも聞きますし、あまりのんびりもしていられません。

もっと見て回りたいのですが、時間との戦いです。

本当の最高点はあっちなんですよね。

砂が舞い散り辛いと聞いていたので、奈良マラソンポンチョ、安物マスク、使い古した靴下を切ってゲイターっぽくしたものを装備して出発です。実際走ってみると、当たり前ですが傾斜が急なので、トレイル経験のない身としては前腿に力がかかるのも、転倒に注意しなくてはならないのも、砂に足が埋まるのも全てが辛いです。霧が出ると単純に恐いですし、完走して気持ちが切れているので、とにかく長く感じます。それでも手作りゲイターはかなりの程度足首部分からの砂の侵入を防いでくれて、途中でシューズを脱いで砂を出すといった作業の必要はありませんでした。小雨が舞い湿ったこともあり、心配していた砂塵はほとんど無く、マスクも活躍の場はありませんでした。

見てくれは悪いしせこいですが、効果はありました。

普通に怖くないですか。

道中馬や高山植物が見られて少し和みます。

最後は五合目コースで見た風景、上りです……。

大体1時間15分程で荷物受け取りに至りましたが、途中平坦な道を走ったり、何故か出現する上り坂(最後は萎える)を早歩きしても、明らかに周囲より余力があり、やっぱり上りは違うなあと考えていたりしました。

荷物をピックアップし、プロテインバーを食べておきます。男性更衣室はないので、上だけ着替えてお土産を物色します。五合目行きの荷物袋には、着替えの他に現金3000円を入れておき、ショッピングする気満々でした。職場へのお土産、母へのお土産をそれぞれ選び(ポカリがたったの200円で買えたのもよかったです)、そそくさとバス乗り場へと向かいます。行列を覚悟していましたが、一切なくあっさり乗車できました。待ち時間に寒かったらと荷物袋に入れていたパーカーも出番なしです。

結構ラインナップが充実しているので迷います。

参加者数を抑えたご利益がここにも。

バスはスムーズに40分程度で道の駅富士吉田に到着し、ここで荷物を受け取り、着替えを済ませます。ICチップも回収です。下界に戻り、エンペラージャパン3にお礼を言います。ここではボロボロかと思いましたが、翌日洗ってみたところ、一部アッパーに穴が空きアウトソールも削れたものの、意外にきれいな姿に戻ってくれてよかったです。

靴下ゲイターはボロボロでした。

もう駄目かなーと思いましたが。

案外元気な姿を見せてくれました。

心身のダメージについて触れておくと、当日の夜は興奮に加え臀部や脚の火照りであまり眠れず(一応夜に銭湯で少し交代浴はしましたが)、翌日は大臀筋に恐らく今までで一番強い筋肉痛が出ました。腿前は下りでかなり負担がかかったためそこそこ強い筋肉痛になったものの、下り階段の多いトレイルよりはましだったと思います。ふくらはぎは軽度、少し心配していた腕や背中は特に症状なしです。やはり上りの筋肉は特別で、自分であればもっと階段トレーニングをやっておくべきだったと思います。

ホッとしてお腹も空いてきたところで、参加賞の金券を使って牛乳、炭酸水、よもぎパンを買いました。更に屋台もあったので、カルビ串もおいしくいただきます。富士山駅行きのシャトルバスに乗り、富士山駅半熟卵入りキーマカレーパンチョコパンを買ってから高速バスで新宿(東京行きが運休だったので)→JRで東京→北陸新幹線で金沢に20:54着です。長い一日になりましたが、日本一高い場所から真っ直ぐ母親に会いに行ける機会もそうそうないので、達成できてよかったです。

広くてものすごく立派な道の駅でした。楽しい場所です。

とにかく食べ物がおいしいです。

富士山駅への道でようやく落ち着きます。

パンが好きなのです。

かがやきに乗りさえすればこっちのものです。

実家ではこの一月程、富士山の箸置きが使われていました。

最後に

軽い気持ちで五合目コースに参加し、独特の空気に魅せられてしまい、自分も腹を括って山頂コースに挑むこととなりました。

こうして振り返ってみると、途中何度も弱気になりかけた自分が山頂に到達できたのは、生まれてから当日までの沢山の人の支えがあってこそだと改めて感じます。自分が願いを叶えたというよりは、願いを叶えていただいたという感覚です。そういうものが詰まった涙でした。

自分のような半端者が参加してよいのかと躊躇う程の何かに満ちた唯一無二の大会で、今後走らせていただく機会はもうないかもしれませんが、一生の思い出が胸に刻まれました。力を尽くして大会を実現して下さった富士吉田の皆様、道を譲りつつ応援までして下さった登山者の皆様、一緒に上って下さったランナーの皆様、本当にありがとうございました。

ここまでご覧いただきありがとうございます。コメントなどいただけるととても嬉しいです。