聞きしに勝るダイナミックな坂、変わり続ける景色、そして熱烈な応援。ムカついている暇などないくらいの急展開続きで向津具の魅力をこれでもかと叩き込まれ、“むかつく”という語の新たな概念を携えて帰ってきました。きっと誰しもそうだろうと思います。長門市生まれの童謡詩人金子みすゞさんの『こだまでしょうか』は、ほとんどの人の記憶の中にある詩だと思いますが、こだま以上のものがここにはあります。
アップダウンは見事な程多いです。千畳敷までの激坂区間の後半(長門のベタ踏み坂)は二度歩きましたし、他にも100m、200m級の上りは普通にあります。50m級になると高低図ではわからないといったレベルで、とにかくゴージャスで沢山上れます。下りもまともに走れない程の区間もあり、厳しいです。ガーミンさんによると累積標高1,893mとのことですが、100kmだったら耐えきれなかったと思います。
これだけ上り下りを繰り返しますので、景色もどんどん変わります。油谷湾、立石観音、元乃隅神社、田園風景、東後畑棚田等々、きつい中でも必ず、”気持ちいい!”、“上ってよかった!”と思える世界が広がっています。
そしてハードコースでも何とか走れるのは、偏に元気いっぱいの応援と充実のエイドのお陰です。奇跡的に曇りで涼しかったのもありますが、行った先には必ず氷の入った被り水とよく冷えたドリンク(コーラも沢山)を用意していただけていますし、常に希望を捨てずに前を目指すことができます。
給食も豪華で、俵むすび、しらす、長州とりのチキンカレー、もずくスープ、肉うどん、ゆず吉グミ、ゆず吉ロール、ゆず吉ゼリー、オレンジ、バナナ、苺、プチトマト等々が公設エイドで存分にふるまわれます。更に私設エイドでシュトーレンやスイカを用意して下さる方までいて下さり、心身のエネルギーが満たされ続けます。
大会ゲストは神野大地選手で、交流会での丁寧なQ&A、記念撮影、まさかのエイドでの応援までしていただけて感謝です。そして一位の中本健太郎さんはお忍びかのように混じっていましたが、普通に考えれば招待選手でしょう。このコースでサブ6はすご過ぎます。
走りはいつも通り無理せず、歩くべき所は歩いたこともあって、最終盤まで食べ続けつつ気持ちよく終われました。トイレ休憩二回を入れても、かなりの時間をエイドでの交流や食事に使えたので見せ場は作ったと思います。70km手前くらいから調子も出てきて、最後は上げられたのでよかったです。(8時間6分台。141bpm, 167spm, ストライド1.08m, 上下動比6.2%, 上下動6.9cm, 左右接地時間バランス48.6%:51.4%, 接地時間250ms, ズームフライ6)
長門市仙崎は金子みすゞさんが生まれてから20歳まで過ごした地ということで、金子みすゞ記念館にも行けました。普段全く考えもしないような世界や感情に気づかせていただける時間でした。みすゞ公園や花津浦を望むさわやか海岸なども巡れ、センザキッチンで海の幸も堪能して楽しい思い出がまた増えました。
“みんな向津具、みんないい”、ということで是非多くの方に走ってみてほしい大会です。でもコース的には向津具地区を走るのはダブルのみなので、ダブルを走ってこそだと思います。
長門の皆様、忘れられない程にとことん向津具時間を作り上げていただきありがとうございました!
下関海響マラソンもかなりきついですが、応援も多く、皆に愛される大会です。
今では終了してしまいましたが、くすのきカントリーマラソンもよき大会でした。まさかまた厚狭からバスに乗るなんて。
レース後のアンケートで、一番きつかった大会として挙げたのが会津磐梯山ウルトラマラソンです。2024年は暑さと終盤が……。
続きのページにはコースの全景、応援とエイドの様子、観光などについて書ける限り書きましたので、写真だけでもご覧いただけると嬉しいです。
コメント、スター、↓のバナークリック、SNSなどなんでもよいので読者の存在をお知らせいただけますと、私がこっそり鳥居を増やしてしばかれます。
次回予告は、“目指せ、花はすそうめん!”です。9連戦で書き疲れたので、少し間が空きます。
前日
大阪から初めての長門へ
8時過ぎまでたっぷり眠ってから朝食。時間の都合上、夜にあまり食べられないことを見越し、しっかり食べておきます。豚肩ロース、葱、人参、小松菜の味噌汁に納豆、ゆで卵、ヨーグルトです。やはり豚肉でビタミンB1を摂っておきたいですし、遠征先は野菜不足になるので、朝食でカバーすることになります。
クリーニングの受け取りや牛乳パックをスーパーに持っていくといった家事をこなしてから出発。移動は以下の通りでした(JALじゃない!)。
新大阪10:41発→新山口12:34着(のぞみ)
新山口12:58発→厚狭13:07着(こだま)
厚狭13:15発→長門市14:36着(美弥線代行バス)
6月に入ってJR西日本株主優待券が4,900円になったので購入しました。5月はまだ5,500円だったことを思えばお得ですが、もう数日待てば4,500円になったので、見極めは難しいところです。それでも7,560円+4,900円=12,460円と、2,660円お得だったので十分です。ちなみに帰路は徳山からさくらなので、なお、7,090円+4,900円=11,990円と2,190円お得という結果でした。
新山口では乗り換え待ちがあったので、下関海響マラソンの時にも買ったおそいぞ武蔵と本多屋さんの外郎重ねを購入。下関の思い出が甦ったり、外郎のもっちりした食感とさらりとした味わいに大いに喜びます。
新山口から厚狭まではたったの一駅。ここからシャトルバスに乗ってくすのきカントリーマラソンに参加したことも思い出します。今日は81分かけて長門市まで。途中、美祢にはすぐに着きましたし、長門市までも意外と近く感じました。
移動中読書は、河合隼雄先生『大人の友情』でした。精神分析家になるための修業時代から、カウンセリングで聞いた話まで、心に響くエピソードやなるほどと思う考え方のヒントが詰まっています。時々河合隼雄さんの本を読むと、心が不思議なくらい軽くなります。
もう一冊はブルーバックスの『「腸と脳」の科学』(坪井貴司先生)の再読です。腸自体もそうですが、腸内マイクロバイオータの活躍によって、人間を含む様々な生物の命が上手く回っていることに驚きを禁じえません。まだ分かっていないことも多いながら、自分の生活でも取り入れていけそうな部分はありますので、読んでいてとても刺激的です。
長門市にて
長門市駅
長門ステーションホテルにチェックインしようとしたところ、私が予約していたのは駅の反対側の長門セントラルホテルだったとのことで、わざわざ階段の下まで来て案内をして下さりました。
ご親切が身に染みましたので、一階のおみやげセンターでピロシキを購入しました。熱々で生地も具もおいしかったです。
受付
宿にチェックイン後、長門市駅15:15発→ラポールゆや15:40着の無料シャトルバスで移動です。このバスは(空港からの便とは異なり)予約不要です。満員で乗れないといったこともなく、普通に座れました。参加者は自家用車という方が多いのかもしれません。
なお、山口つながりでくすのきカントリーマラソンTシャツを着ていったのですが、他に着ておられる方は見かけず、気づいていただいた方がいたかも不明です。
受付会場のラポールゆやに着くと、外にはテントが出ています。フタゴカフェさんで買ったアップルパイをおいしくいただき、明日への活力とします。Mine秋吉台ジオパークウルトラマラソンのブースもありました。今年の有力候補として検討していたのですが、向津具にも出たので、流石に来年以降に回すことにします。
受付はRUNパスポートを提示するだけで簡単です。大会プログラムや参加賞のTシャツなども受け取ります。そのまま交流会会場に入り、ふかふかの椅子で開会を待ちました。何となく参加者のページを見ていると、12番の選手がご本人としか思えず、これは明日どうなるのかと楽しみになりました。
交流会
16時からの交流会は、まず市長さん、実行委員長さんやJALの執行役員さん達の熱意のこもったご挨拶があり、大会への力の入り具合が伝わってきます。司会の方もJALの社員さんですので、声の調子や抑揚から、まるで空港にいるかのような気分になれます。間もなく機内にご案内されそうな勢いです。しかし“今日JALで来られた方はおられますか?”という質問に挙がった手は疎らだったことから、山口宇部空港の未来が少し気になりました。
今回はゲストの神野大地選手へのQ&Aがあったのですが、質問される方は皆様真剣な内容ばかりで、聞いていて“おお”と思いました。神野選手への質問では定番中の定番ですが、上りの注意点の質問もあり、①視線は上や下ではなく真っすぐ、②腕でリズムを刻む、③最後は気持ち、とのことでした。①と②は誰でも取り組めそうですが、結局は③が人並外れているからこそ山の神になれるのだろうなと完全に納得しました。
お楽しみ抽選会は人数が少ないこともあって結構当たるのですが、私は当然不発でした。まあそんなもんです。大会テーマソング「ツヨク」を毎回歌っておられるKinuyoさんのライブは、“本物のライブは力強さが違うなあ”と感じていました。交流会と翌朝に歌声を聞いたことで、特に後半の上りは頑張る力になりました。
交流会の最後には、完走を祈念して、JALの整備士の方が折って下さった紙飛行機を皆で飛ばすこととなっており、それも独特でいいなと思いました。なお、私は飛ばすのが下手糞過ぎて、ステージの上に墜落しました。当たった方はすみません。
神野大地選手との撮影会もあったので、列に並びました。長年色々なメディアで見ているため緊張しましたし、後に並んでいる方も多かったので慌ただしくお礼だけお伝えして写っていただきました。交流会での質問への受け答えもそうですが、明るくて素敵な方だと感じました。これからも陰ながら応援させていただきたいと思います。
会場17:40発→長門市駅18:25着の便で帰りました。タイミング的にシャトルバスは満員だったので、是非とも乗りたい場合は早めに乗車しておいた方が確実です。
夕食
ととやさんにしました。基本居酒屋さんで定食はないのですが、神野選手が“前日はご飯を食べるとよい”と仰っていたので、ここでは釜飯を選択しました。三種スペシャルで、鯛、山口鶏、五目の揃い踏みという豪華な逸品ですが、素材だけでなくとにかく一品一品丁寧に作って下さるのでおいしさが違います。ダブルフルの応援もしていただけ、またいい思い出が増えました。
お宿
長門セントラルホテルさんです。シャトルバスの出る長門市駅南口前という最高の立地で二泊14,490円はお得です。コインランドリー、書店、スーパーにドラッグストアと、全て近くに揃っていて便利です。ちなみに予約は前年11月28日に完了しています。
部屋は私好みの靴を脱いで上がるスタイルでした。室内も明るくてきれいで完璧です。窓開け禁止なので少々暑く、エアコンを上手く使って調節する必要がありますが、ベッドも寝心地がよくて大満足でした。
アルクでは島根・津和野フェアが開催されていたので、噂の生どらプリン、よもぎ団子も買いました。ご当地牛乳とささみチーズカツ(フードロスの削減にご協力)も決め、バッチリです。マジックパールが売られているのもありがたいです。
何だかんだで遅くなり、消灯は22時頃になりました。アミノ酸を飲んでから就寝です。
レース当日
レース前
長門市駅南口4:55発→油谷総合運動公園5:30着の便にしました。どうせアップも不要ですので、4:50に会場に着いたところで退屈でしょう。少しでも長く寝ている方がよいと考えました。というわけで起床は4時過ぎです。
ウルトラはエイドが充実していることが多いので、前日にしっかり食べてさえおけば、フル以上に朝食は軽くでよいです。ゆで卵、チーズ、牛乳に別所のかすていらで全くガス欠の恐れはありませんでした。
身支度や持ち物も全て整え、4:45くらいに宿を出ました。今日はマイクロバスではなく普通のバスだったので、席にも余裕があります。と言いますか、ほとんどの人はもう一本先の便で行ったのでしょう。ラポール油谷では受付を終えた自動車組の方々も乗車されるので、全体としては丁度いいくらいだったのだろうと思います。
会場に到着したのは予定通り5:30頃。荷物預けが5:40までですが、停車場からすぐなので大丈夫です。手荷物預かりは建物の中で、シューズを脱がなくてはならないため、脱ぎやすいシューズにして後で履き替えるか、ひもゆるゆるで行った方がよいでしょう。
アミノ酸を飲み、荷物を預けてスタートブロックの方へ向かいます。Kinuyoさんの「ツヨク」がランナーを鼓舞する場にも立ち会えました。軽く動的ストレッチだけして、あわよくばかの有名選手(監督)の御姿を見られればときょろきょろしているうちに6時が近づいてきました。
【ちょっと真面目な話】
練習
きしろスタジアム5kmの翌日にいきなり足底腱膜炎が回復していましたので、ほぼ普通に練習を継続できました。ふくらはぎストレッチ、足裏マッサージ、バランスディスク片足立ち、温泉が効き、どこかの回復につられて治ったのかもしれません。ウルトラはフルマラソンの練習としてはやや中途半端な練習という位置づけになるので、調整はしません。
日曜:きしろスタジアム5km 19:16(ソーティマジックRP6)、スロージョグ60分(エボライド)
月曜:オフ
火曜:有酸素ジョグ60分(Zone2, 11.5km, ズームフライ5)
水曜:有酸素ジョグ45分(Zone3, 9.3km, エアロ20)
木曜:閾値走8km(32:04, ソーティマジックLT2)
金曜:有酸素ジョグ60分(Zone2, 11.3km, ズームフライ5)
土曜:オフ
シューズ
ズームフライ6白さんです。ふくい桜マラソンの次の奥熊野いだ天100kmでは踵が剥がれたものの、柏崎潮風マラソンではしっかり走れましたのでまだいけると判断しました。
ウェア
アンダーアーマー半袖、TIGORAアームカバー、ミズノバイオギア、ミズノマルチポケットパンツ、asicsハイソックス、ニューハレ踵二重と、定番の装備です。奈良マラソンキャップとサンシェードもポケットに入れておきましたが、幸運にも終始晴れていたので使わずに済みました。
ウルトラは時間が長いので、ワセリンも厚めに塗ります。勿論日焼け止めも塗りたくります。
持ち物
経口補水液とアミノ酸を溶かしたジェルフラスク一つと、アミノバイタル粉2つ、終了直後用のアミノプロテインとアミノバイタル粉を携帯しました。
千畳敷エイドへの袋には、アミノ酸を二つと経口補水液を入れました。袋自体が大きくないため、小分けの小さな袋は使いませんでした。
終了後の荷物にはプロテインとプロテインバーを入れておきます。帰りに温泉に寄ることも考えてタオルも持参します。ボディペーパーと着替えもすぐに取り出せるように同じ袋に入れておくと、終了後の流れがスムーズです。
レース
【前半フル】
序盤
- 序盤①(静かな川から早くもうねり)
まずは土のグラウンドの上を時計回りに走って出発です。それにしても先頭の選手達の勢いが違います。普段のウルトラなら、しばらくは先の方に見えているのですが、明らかに速く、あっという間に見えなくなりました。100kmが84.4kmになったからといって、こんなに飛ばすものなのでしょうか。
2km行かないうちに田んぼの中を進みます。何となく周りに合わせて走っていたのですが、大体キロ5くらいで、皆えらく速いなと思っていました。先のことを考えると落とした方がよい気もしたのですが、ズームフライ6の恩恵は大きく、ピッチを出せばそれだけで進むので、少々速くてもまあええかということにしました。橋を渡って掛淵川を左手に。朝早くから応援して下さる方が多くて感謝です。
4.0kmで最初のエイドです。一応コップを一ついただきました。ここから少し上って落ち着くのかと思いきや、大きな周期のうねりが結構長い時間続くことになります。しかしまだ怯むようなきつさではありません。左手の油谷湾の眺めはとても美しく、早起きした甲斐があったというものです。
上りの数が多いので、一々写真を撮っていてはキリがなさそうです。写真があれば大体何分くらい上ったのか分かって参考になるのですが、この辺は長くて数分レベルだったと思います。
- 序盤②(ダブルの特権向津具へ)
7.3kmの第2給水所でも、小さな子達が手際よく給水を捌いてくれています。朝早くからありがとうございます。まだ7時前ですよ。この先でダブルの部はシングルの部と別れて左の方へと分け入っていきます。
きれいにお花が植えられた花壇とその先の紫陽花を見て和みながら軽く上り、下ってから10kmです。この辺りも最終盤でまた通ることになるので、覚えておきたいところです。こんな感じの道が続きますが、帰りは結構堪えます。
56分台で11.7kmのパタ屋エイドに到着すると、エイドに普通に神野大地選手がおられて驚きました。フルの部にゲスト参加するはずが、ここにいて下さるとは。こちらではオレンジとバナナをいただき、百姓庵塩飴?でしょうか、黒糖っぽい味のする飴も口に含みつつ走り出しました、このエイドから早くも被り水を頭や前腕にかけ、涼みながら先を目指すことにしました。
この先も騒ぐ程ではないものの数分レベルの上りはあります。高低図は小さすぎてよくわかりませんが、確実にアップダウンは訪れますので、一々怯んでいては気力が萎えます。
前半
- 前半①(油谷島の洗礼)
15.2kmエイドで給水です。このエイドは写真が撮れておらず無念です。帰路に期待するとしましょう。この先、海岸線を走っているうちは平坦なのですが、右折してしまうと緑がいっぱいになり、左斜め上の方を走っていく人の姿が見えてきます。“15kmくらいから100mいかないくらいの上りが数回”というイメージでいたので、いよいよです。
油谷島の中を走るのは往路だけなのでよいのですが、それにしても最初の上りからなかなかの傾斜で、腕振りも使いながらの走りになりました。こんなに早い場面から頑張ってもいいことはないので、遅くてもよいと割り切ります。
一旦上りが落ち着いたかと思いきや少し下ってはまた上るという展開で、なかなか安定しません。“これは結構疲れるパターンだな”と思いながら、上りで追いつき下りで抜かれるということを繰り返します。
「今日は角島大橋は見えちょる?」の看板と出会い、下りに入ってからは景色がよくなります。おそらく遠くの方にうっすらと見えているのが角島大橋なのだと思いますが、走っている間は手前の島(俵島)の方が気になっていました。17kmを過ぎて一旦高度は落ち、ガーミンさん的には64mとなっていました。
18.0kmエイドもこの山の中ですから大助かりです。ランナーの心は弱いので、エイドの皆様が頼りです。この後はラップタイム的に少し上ったはずですし、高度計も40m上って50m下るみたいなこととなっていますが、写真も残っていません(どうせぶれると考えたか、きつ過ぎたかは不明)。21kmで大体1時間45分23秒くらいでした。
- 前半②(大浦エイドからまたも高みを目指して)
21kmにもなると漸く平坦になり、快適に走って行けるようになります。往路の選手とスライドするようになり、さっき通った所に戻って来たことを認識します。
22.4kmの大浦エイドでは応援のメッセージボードまで用意して下さり、嬉しい限りです。力になります。俵山銘菓猿まんじゅうが登場し、フルーツサイダーや梅干しも美味しくいただきました。ここに至るまでに何度もコーラをいただいており、どれもよく冷えていることに感心します。
油谷太鼓の応援もあり、大いに盛り上げていただきました。こんなに小さい子達が応援してくれるなんて。なかなか名残惜しく、ここはキロ7分44秒を要しています。
このエイドを出てから少し行くと、右手に棚田が見え、その後は校長先生を応援するメッセージなどを見ながら集落の間を走ります。この辺りまではまだよいのですが、またすぐ上りが始まります。
コースを一度走った経験があるのとないのとでは大違いですが、せめて高低図の予習だけでもしておいてよかったです。“25kmから30kmまででおおよそ200m弱上り”という頭でいました。高低図にばっちり書かれているだけのことはあって、ここもなかなか長いこと上ります。26.2kmの給水所も上りの途中にあったはずで、向津具小学校からここに至るまでに8分程かかっています。
地道に上り続け、高度計が137m付近で一旦落ち着き、そこからまた上っていきます。高度計を見ると、26km以降30kmまでは基本的にほぼ上りだったようです。26kmからの1kmが63mと一番きつく、その先は20~30m、何度か下り10mくらいです。28kmで2時間24分39秒くらいでした。
中盤
中盤①(体に悪い下りと楽しき川尻エイド)
流石に苦しくなりつつありますが、相対的には上り耐性があるのか、割と先行されていた方に追いついたりもしますので、励みにはなります。30.7km給水所では下りに転じて心に余裕が生まれますので、ドリンクをゆっくりといただきました。
“激坂の下り!ここから絶景!”というような看板があってから(高度計で154mくらい)は、視界も開けて棚田と川尻漁港、大浜海岸の方の姿を眺めながら下っていけます。ここはダブルだけの特権なので景色を楽しむことは楽しむのですが、下りがきつすぎてスピードが出せない上にダメージを受けます。ここは抑えながら下っていくしかありません。高度計で92m下っているのにキロ5分を超えてピッチも175まで落ちています。
石の鳥居を潜らずに左折して下り続ける中でも、誘導のスタッフさんやおじいちゃんおばあちゃん達が応援して下さるので、笑顔でお礼を言いながら走ります。
ここでお待ちかねの33.6km川尻エイドに到着。こちらでは事前予告にはなかったジュースバー(懐かしのチューペット)と蒟蒻ゼリーもいただき、しっかり身体を冷やしつつ英気を養います。折角ですのでオレンジやあんぱんも食べ、お腹を充たして再出発です。
透明な大浜海岸もきれいで、走っていて気持ちいいです。35km過ぎにあるトイレは、目立つ所にあって入り易そうでした。シングル組と合流してからは多少混雑するでしょうから、合流前にトイレに行っておくのも一手だと思います。今回は全く行きたくなかったのでスルーしましたが。
- 中盤②(立石観音から元乃隅神社へ)
この先も100mくらいの上りがあるので、ここで遅れをいくらか挽回しておきます。この辺りになると、同じ方を何回も抜くことになる(なぜなら下りとエイドで抜かれているから)ため、覚えていただけたりもしました。変な名前ですみません。
地図で確認すると、ここは終盤で大きく下る際にもう一度通る場所だったのですね。往路の上りは10分くらいで走り切れる傾斜でしたが、復路の下りはかなり急に感じました。
上っていくと、いきなりシングルフルのランナーさん達と合流します。合流する頃には上りも一区切りついており、左手の棚田をまたありがたく眺めることができます。
36.9km給水は当然混むので、被り水も譲り合い(私は手勺にしました。そんなに大量に被らなくてもよいので)、ドリンクもやや気を遣うようになります。ウルトラらしくのんびりしていて良い感じです。
ここからは立石漁港に向かって相当な傾斜で下ることになります。基本下りは(相対的に)遅いのでダブルの人には当然のように抜かれます。立石観音という看板を目にしながらも予習不足で何もわからず進んできますが、明らかに目立つ岩があり、前提知識がなくてもそのフォトジェニックな姿には何かを感じ取ります。頂には木造の観音菩薩像が安置された日本有数の夫婦岩とのことで、また貴重な経験をさせていただきました。
39.1km立石エイドになると人口密度が更に高まり、止まらずして補給は不可能になっています。私は誰もいなくても止まるのでほとんど影響はなかったといえますが。こちらでは俵むすびは外せません。ちりめんと共に和の味を楽しみます。初登場のチーズころんも三つ味があり、こちらではツナマヨころんをいただきました。
たっぷり休んで回復したところで、40km過ぎから100mくらいの上りが待っています。見た目にもよく上っており、シングルの方はかなり歩いていたと思います。ただ、上っただけの景色のよさは待っているので、淡々と嘆くことなくリズムを刻み、無理のない範囲で上り続けました。42kmの通過は3時間43分くらいでした。
下っていくと何やら観光客のにぎわいが感じられるようになります。左手を見ると赤い鳥居が列をなしています。“ここがあの元乃隅神社か!”と思いながら写真を撮っていきます(走りながらですので実際に撮れているかは全く不明)。確かにこれは壮観でした。実は意外に歴史が浅いということも知ったのですが、それはさておき、海に向かって並んでいる鳥居を上から見られるのは向津具ならではでしょう。なんとも贅沢なコース設定です。
42.195kmは大体3時間45分くらいで、いい時の100kmくらいのペースです。曇りで暑くない上にキンキンに冷えた被り水とドリンクのお陰で、体温上昇による消耗もなく済みました。しかしここまでもそれなりにアップダウンがあったこととこの先の激坂を思うと、そう甘くはないだろうと思っていました。
【後半フル】
中盤続き
- 中盤③(ここが噂の激坂区間)
下りの途中で激坂王決定戦区間の入口の計測マットがあり、その左手にトイレがあったので行っておくことにしました。マットを踏んでからトイレに入ることになりロスにはなるのですが、激坂で何位になろうが全く気にしていないので、ここで休みます。常設で使いやすく、快適でした。
一旦海沿いまで下り、上りが始まります。大体42kmくらいから5kmくらいで300m程上りというイメージでしたが、確か“上り4.4km”という表示があったはずです。
最初は橋を上っていき、43.9kmのエイドまでは100m程度の上りで難なくいけると思います(一番下から6分くらいでした)。給水で回復し、気持ちを切り替えて上っていきます。
高度計117mくらいでは落ち着きますし、中間点の少し先くらいまでは、走りながら写真を撮れるくらいの傾斜で余力もありました。阪神のメガホンを持った方々を撮影すると“逆に撮られるとは”と喜んでいただけました。
高度計208m程で一旦軽く下りになり、“こんな具合に短い下りを挟みながら上っていくのかな”と思ったところで、“ここから長門のベタ踏み坂”という看板が現れ、悪い予感を感じながら左折します。エイド到着から10分後くらいです。
実際坂の下まで来てみると、かなりの傾斜に見えますし、走り始めてからも脚にずっしりと体重がかかり、粘って走っても歩いているのと変わらないくらいになります。奥熊野いだ天の“富士急ハイランド ナガシマスパーランド”は“つかのま”ですが、それがまだまだ続くのです。もう周りに走っている人はいませんので、ここは戦略的に歩くことにしました。歩けば呼吸は落ち着きますし、脚も走りとは違った力のかかり方になるので楽は楽です。富士登山競走で培った腰の入ったパワーウォークで行けば案外落ちずに済みました。
一度歩くと次にもう一度走り出す思い切りが難しいことも思い出しました。なんとか気を取り直してしばらくは走ります。しかしもう少し行ったところで本日二度目の歩きとなりました。気持ちとしては歩きたくはなく、自分に負けたかのような気分になって嬉しくはありませんが、この先も200m級が二回あることを考えると、ここは頑張るところではないと判断しました。
大きな坂が一区切りつくところまでは歩き、少し下りになった後は、千畳敷前の軽い上り(高度計323m辺りで一度落ち着いてからもう少し上ります)も含めて走りました。区間タイムは34分51秒かかりました。
47.3kmの千畳敷エイドに入って行くと、まずスムーズに手荷物を渡していただけます。先に連絡してくれているのでしょうね。素晴らしい連携に感謝です。こちらでアミノ酸の袋を補充し、経口補水液もたっぷり飲むと共にジェルフラスクにも詰めます。
その先は、東亜大学の学生さん達がものすごい勢いで応援して下さります。両サイドを固めて次々とドリンクと給食を勧めていただけますので、テントに立ち寄ることも含めて可能な限り受けて立ちます。
JALオリジナルドリンク(ももとぶどう)の甘さで回復し、ゆず吉ロールもいただきます。
長州鶏のカレー、もずくスープ、フルーツサイダーもいただきます。カレーは“少ない方がいいっすか?”と好みの量まで聞いて下さるご親切ぶり。盛られた量は結構だった気もしますが、これでこそ食べる喜びが弾けるというものです。このカレーはとてもおいしく、大鍋で調理して下さっている姿と共に元気をいただきました。もずくスープもおきなわ100kを思い出すもので、“全国各地でよくしていただいて……。”とランナーならではの幸せに浸りました。ドライイチジクとナッツのケーキだけは見つけられませんでしたが、ミッションコンプリートと言えましょう。
エイドから出て走っていくと、“ゴミもらいますよ!”と追いかけて来てくれる学生さんまでおられ、つくづくランナーに親切な大会だと実感しました。防水用のジップロック袋はまだ必要だったので、お礼を言って下りに突入しました。
- 中盤④(またも豪華な矢ヶ浦エイド)
頂上から50kmまでは概ね下りです。時に少しの上りはありますが、さっきまでのように苦しくなることはなく、えいっと少し気持ちを入れることで凌げるレベルです。お腹がいっぱいなのが若干不安ですが。食べたばかりなのに50.3kmのエイドでもしっかり水分をいただきます。
途中軽い上りを挟み、勢いよく駆け回っている牛の姿と足音を珍しいものだと感じながら、時折見える海を眺めながら進みます。
54.2kmの矢ヶ浦エイドもうどんが出るということで楽しみにしていました。到着は5時間5分台です。ありがたくうどんを受け取り、テントのテーブルに置いておいしくいただきました。この牛肉が甘みの染み込んだ逸品で、正にうどんにぴったりの味でした。
ゆずきちグミ、明太ころんもいただき、しらすもすごく推されたため、“そこまで言われたら食べないかんな~”と勧められるままにおいしくいただきました。こちらでもかなりのいっぷくぶりを披露しました。後で知ったのですが、ここは黄波戸温泉の場所だったのですね。走っていると全然高さが分かりませんでした。
後半
- 後半①(田園風景からの大きな上りと私設エイドの喜び)
エイドの後は30m級の上りがありますが、その後はしばらく下りで、山陰本線沿いを行きます。ここも応援の方が待っていて下さりますし、その後の田園風景も気持ちのよい場所です。ご家族で声援を送って下さる方もおられました。
右折して58.5kmのエイドでもドリンクと被り水で体温調節を行います。この辺りからシングルの方を抜いたり声援に応えたりエイドを出発したりする時に、後方から「さば?」という疑念の声が上がるシーンが何度かありました。確かに、それだけ見ても何を主張したいのかわかりません。メッセージ性もかっこよさもなく、ただ謎だけを残して去っていきます。
この先から、5kmで200mくらいの上りになります。坂の入口には、“ここから長い上り!「ツヨク」を思い出して!”といった看板があり、“おそらく一筋縄ではいかないレベルの坂なのだろう”と気を引き締めます。
この坂もそれなりに長くはあるのですが(高度計では60,62,12,81)、千畳敷までの道よりは遥かに短く、傾斜も大したことはありません。感覚的に“これなら走り切れる”と分かりましたので、淡々と上っていきます。シングルやダブルの方も応援して下さるので、またやる気も出ます。下りで抜く人を応援することはあまり無い(速いのですぐにいなくなる)でしょうが、上りはゆっくりなので応援していただけるのが魅力です。何度もお会いしたメディカルランナーの方とも仲良くなれました。ありがとうございます。
そしてありがたいことに、この坂の途中(上り始めから12分くらい。高度159m付近)で私設エイドを用意して下さっている方々をおられ、何と手作りのシュトーレンをいただいてしまいました。この展開でこのふるまいは嬉し過ぎます。ブルーベリーヨーグルトと共にありがたくいただきました。ごちそうさまでした。
62.3kmの給水所も上りの途中ですからしっかり休みます。ウルトラはタイムはともかく最後まで元気で走ることが大事なので、エイドごとに気持ちを切り替えていきたいところです。
- 後半②(私設エイドとの再会・東後畑棚田、本当の向津具ダブルマラソンへ)
このエイドから5分くらいで頂上に到達し、下りに切り替わります。ここで阪神のメガホンを鳴らしておられる私設エイドの方に“さっきも通った方!”と気づいていただけたので、今回はガッツリ止まってスイカと経口補水液をいただきました。“大阪から初参加でダブルなんてすごいですね”とお褒めの言葉をいただきましたので、“100kmも10回以上走っていますので”といった感じで楽しく過ごしました。
高度計は243m辺りで打ち止めになり、63kmくらいから68kmくらいまでは下りなので景色を楽しみながら走れます。バンドの演奏も間近で聴くことができ百人力です。メロディは懐メロ調な一方、歌詞的にはウルトラマラソンに特化したもののように思いますので、オリジナルソングをわざわざ作って下さったのかもしれません。
こちらは東後畑棚田の展望台になっていたので、コースアウトして記念撮影をしておきました。眼下の日本海にイカ釣り漁船の漁火が美しく浮かび上がるまで待っていると関門アウトになるので、明るい時間で満足します。道中棚田は何度もありましたが、やはりここからの眺めは初見でも惹きつけられるものがあります。
木陰も通りつつ下っていくと、65.0kmの宇津賀エイドに至りました(到着時6時間13分台)。ここも高校生の応援がすごくて圧倒されます。もう元気いっぱいで、“さば!”(呼び捨て)といった声援が飛びます。普段あまり受け取らないチョコや塩タブレットもとても断れるような空気ではなかったことから、“ちょっと待って”と言いながら順番に全ていただきました。
ここでしか飲めないハーブティー、カフェオレ、イチゴ、プチトマト、ゆずきちゼリーをおいしくいただき、談笑しつつ過ごします。“大阪から!”と驚いて下さる方も多いので、“山口の中でもえらい遠いっすね”といったやり取りが何度か発生しました。
出発前に念のためトイレに寄っておきました。今回もやはり成果はなく、タイムロスは大きかったのですが、安心感が得られたことで終盤の走りにつなげればよしということにします。洋式は一基のみでしたが、ウォシュレットまで付いていてきれいなトイレでした。
黄色いガードレールを見ながら進み、割と短い間隔で67.7kmのエイドに至ります。感謝しながらここでいつも通りのんびりしていると、後方からセーラームーンが来ました。言うまでもなく男性です。“すごいの来た!”と言いながら記念撮影に応じていただけました。ありがとうございます。
この後少し行ってからシングルと分岐して下りに入ると、後ろから迫って来る足音が。“この距離で下りを攻められるだけの余力がある方がいるのか”と思っていたところ、さっき会ったばかりのセーラームーンの方でした。笑うしかないのですが、こうして笑顔を届けながら走っておられるかたは本当にすごいと思います。
蓮の池のほとりを走り下りが終わると“最後の上りです!”という応援を受けて右折します。概ね170m程上るようです。場所的にもここが本当の向津具ダブルマラソンだと思います。
ここに至るまでに力を使い切っていると肉体的にも精神的にもきついですし、別に歩いても何ら問題ありません。私はいつも通り余力を残していますし、千畳敷の坂で歩いた悔しさもありますので、ここは走り切るのみです。長いには長いのですが、あの暑い会津磐梯山の80km以降の坂も上り切っていますので、それに比べればどうということはありません。
先行していたセーラームーンを上りで抜き、あと数名は抜いたかと思います。このくらいの距離になってくるとある意味苦楽を共にしたこともあって、粘っている人は応援できますし、脚を痛めている人は気持ちを慮るようになります。順位を気にするとそうも言っていられないのかもしれませんが、私にとっては、そしておそらく多くの方にとっても、ウルトラはそういう世界だろうと思います。
終盤
- 終盤①(往路に戻って案外うねる)
70.5kmのエイドでも笑顔で応援していただいて力を借りられましたし、橋の上では写真撮影をして下さる男性までいて、笑顔になれます。高度計で50,97,28の区間を経て無事に上り切りました(上り始めから13分程)。ここからは下りになり、落ち着いて進みます。
こちらの橋の上では写真を撮って下さったのですが、なんと長門市の広報ページにも私めの写真を使っていただけていい記念になりました。とっても楽しそうに走っています。
第9回JAL向津具ダブルマラソン - 長門の話題 - 長門市ホームページ
坂を上っている途中からようやくスイッチが入ったところがあり、下りも気持ちよく走れました。ウルトラは慣れが肝心で、体力と脚の残り具合に対する予測が立てば怖さはありません。72.9kmのエイドでもピンピンしている姿を見せ、どれくらい盛り上がったかはともかく親切な皆さんの記念撮影は重ねていきます。
左折してからは見覚えのある景色が現れるようになり、橋本校長先生を応援するメッセージも設置されていました。地図を確認すると、この辺りが向津具地区なのですから、70km手前の上りも含めてダブルに参加せずして向津具を走ったとは言えないのではないかという気が(後になって)しています。
大きな上りはないものの、この距離でも地味にうねっているので、時折上りが訪れます。往路がそうだったのですから当然です。この辺りは上りと下りがとんとんくらいです。
エイドの高校生にも元気な姿をお見せしたいので、笑顔で76.1km のパタ屋エイドで楽しく過ごします(到着時7時間22分台)。 “給食はここが最後です!”とのことだったので、カフェオレ、お手のせ利休(黒糖饅頭)、チーズころん、オレンジ、バナナも悉くいただき、胃腸の見せ場を作ります。
- 終盤②(みんな向津具、みんないい!)
残り7kmくらいでも完全にスイッチが入っていますので、“往路で見た紫陽花だ”とか思いつつ、油谷湾を望みながら快適に走ります。前方に人の姿も見えませんが、私は一人静かに走るのも大好きなのです。
79.1kmのエイドまでくればあともう少し。終盤になると遠い位置からもこちらを見つけて手を振って下さるので、手を大きく振りながら近づいて行きます。こんなふざけたランナーのことも温かく応援していただきありがとうございます。
右折しても上り、落ち着いたかと思えば80km地点(7時間41分台)でもまた上り坂という展開ですが、困るほどのものではありません。長年かけて積み上げた疲労耐性とランニングエコノミーに対する手応えを感じながら走れる贅沢な区間です。
81kmくらいでシングルや棚田ウォークの方とも合流し、エールもいただきました。歩道を走っていると棚田ウォークの方もおられて危ないのですが、81.5km エイドには中から入れました。おそらくダブルのランナーは車道左端が正解だったようです。“あと少しなほっちゃ”というメッセージも掲げられています。なほっちゃ?
ラスト2kmくらいの駐車スペースでは、男の子が応援してくれていたので、一瞬しかチャンスがなかったのですが、撮影を試みます。“撮ってもらえた~!”と喜んでいたので、“撮れたと思うよ~!”と応えながら進みます。余力を残すと最後にいいことがあります。
最終盤は海岸沿いにすーっと道が伸びており、先の方を走っているランナーが見えます。追いつけそうな方が分かりますので、目標になります。健闘を称える意味で、軽く声をかけて前に出させていただきます。
最後は橋を渡ります。84kmを通過し、橋の先で折り返してから土のグラウンドへ。“今度は反時計回りか。完全に出発時と逆の道を辿るのだな”と思いつつ、最後上げられた満足感と共に、吹奏楽と司会の方の声に迎えられて、とことん向津具この旅路を笑顔で締め括りました。
アフター
レース後
会場
チップを返却し、完走メダルをかけていただき、麦茶と塩せんべいを受け取ります。完走証も即発行していただけるのが嬉しいですね。荷物預かりが混む前に速攻で受け取り、着替えました。男子更衣室は特になく、荷物を受け取った場所で着替えることになったのですが、(タオルを持参していた私はいいとして)、スタッフの女性陣は不快ではなかったのだろうかと若干気になるところではあります。
早いうちにプロテイン、アミノバイタル、アミノプロテインを摂取し、一呼吸おいてからプロテインバーも二本食べました。走っている間はどうかと思ったものの、一応足裏も大きく悪化することなく終われたようです。ズームフライ6さんは激しい下りの影響でフォアフット部分も損傷しましたが、最後までしっかり脚を守ってくれました。終盤の上がりっぷりはこのシューズのお陰です。
ふるまいの鶏鍋、焼き鳥をいただき、充実した思いと共に山口の恵みを味わいます。鶏鍋は骨付きで、見た目にも豪気です。アンケートに答えてもち吉アイスキャンデーもいただきました。味も選べたのでチョコを選択しました。
長門市駅行きのバスは1時間に1本なので、16時まで時間があります。“40分に1本くらい来てほしいな”と思ったりもしましたが、利用者数を考えると妥当な本数だったといえます。周囲にコンビニやスーパーは無いので、色々持って行った方がよいとは思います。シャトルバス乗り場の方へ少し歩いた道路の対岸には自販機が4台程並んでいるので、そこで炭酸水は買えました。
少しゴール付近の様子を見て応援し、会場の余韻に浸ってからバスに乗車しました。今日が初ウルトラだった方もおられたでしょうし、このコースですから達成感はとてつもないことだと思います。走られた皆様、応援して下さった皆様、お疲れさまでした。
黄波戸温泉
長門市駅行きのシャトルバスが途中に寄ってくれるので、折角だからと行ってみました。通常400円ですが、ナンバーカード提示で200円に。ロッカーは20円要るので小銭の準備が必要です。ボディーソープなどはありますので、タオルを持って行きさえすれば事足ります。激混みかと懸念したものの、16:30頃は常識的な混み具合でした。
お湯も温くてゆっくり身体をほぐせますし、何と言っても露天風呂から深川湾を望めるのが贅沢です。車でないと行けないような高台の上にあるものだと感心していましたが、実はさっき普通に走って来ていたと知り、ウルトラマラソンは常軌を逸していると感じた場面でもありました。
深川湾の夕日
Wash & Dryさんで洗濯。小型の洗濯機なら400円と比較的良心的ですし、乾燥機もパワフルで10分で十分乾きます。両替機がないこと以外は満点かと思います。
乾燥機を回している時間に湊はまゆう公園の先の堤防から夕暮れの深川湾を眺めていました。こんなに静かな海は見たことないと思うくらい、波一つない鏡のような水面に、鳥の姿と声が混じり、一日の満足感といくらかの寂しさを湛えていました。
夕食
喫茶ぴぃまんさんにしました。単にコインランドリーの隣にあって便利だからというのが大きいのですが、飲みたくもないお酒やソフトドリンクを頼まなくてもよいという点で、喫茶店はかなり有力な助っ人候補なのです。喫煙可能店という絶望的な条件ながら遅い時間だったため先客もおらず、臭いも気にならないレベルだったのでセーフでした。
生姜焼きセットにしたのですが、お肉もご飯も多いですし、目玉焼きまで乗っていて野菜も食べられるというウルトラ後には理想的なメニューでした。身体も大喜びです。ありがたくいただき、しっかりお礼をお伝えしました。
明屋(はるや)書店さん
折角宿の目の前にあるので、行くしかありません。売り場面積も広く、品ぞろえが豊富で書棚の間を歩くのが楽しかったです。『ガルシア=マルケス中短編傑作選』は絶対に気持ちが塞ぐので読みたくはないと思いつつ、避けては通れないだろうと選びました。『骨の不思議』は身体づくりに活かしたいところです。
アルクさんで長州どりタルタルソース(フードロスの削減に貢献。ケチなだけ)、エンゼルシフォンケーキバニラなどを買い足し、今日も幸せな一日だったと思いながら締め括りました。ふるまいで鶏鍋、焼き鳥といただいていますが、タルタルソースも外せません。シフォンケーキはふわっふわで、お上品な味わいです。
23時には消灯です。一日疲れたというのもありますが、何よりも不自然な早起きの結果だろうと(毎回)思います。今日も楽しい一日を与えていただいたことに感謝しながら、眠りに就きました。
翌日
みすゞ公園
夜中にトイレに起きたりはしたものの、7時前までよく眠れました。心拍数も平常通りで、耐性がついてきたのかもしれません。足裏はもっと痛くなるかと思いましたが、10日前より明らかに状態がよいので一安心です。背中はウルトラらしい筋肉痛、腹筋と腿前は急な下りならではの重みですが、怪我はないので72時間もすれば戻るでしょう。
特に目的も定めずに、体調の確認とリラックス目的で、スロージョグにて出かけます。適当に南口の方を走っているうちに仙崎の方に行けそうだとわかったため、そのまま進み、小さなトンネルを抜けたりと冒険心を擽られながら散策します。
白潟湾からトンネルの横を通って先に出ると、みすゞ公園がありました。金子みすゞさんはここ仙崎出身とのことで、波の橋立を詠んだ詩碑もあります(こちらからはおそらく見えないと思いますが)。階段になっていて上り易そうだったので上まで行き、「丘の上」での景色を目に焼き付けてきました。
仙崎の方へ行くと、小松原が切り倒されていくことを惜しむ詩もあり、ここで暮らしていたことがよくわかります。
41分で5km強のスロージョグになりました。宿に戻り、簡単な朝食とデザートの虎屋さんの栗饅頭をいただきました。栗がしっかり入っていて、白あんとよく合っていました。和菓子はよいですね。
仙崎観光
長門市駅のコインロッカー(300円)に荷物を入れ、10:10発のJRで移動です。美祢線や山陰線の一部は土砂災害により運行休止中ですが、仙崎までは行ってくれるので、貴重な機会だと乗りました。
仙崎駅までは5分程度で、景色を楽しめる時間もなかったのですが、朝通った道を思い出したりしながらの移動は、それだけで楽しいものでした。仙崎駅は最果ての駅感がいいですね。
駅前からの通りはみすゞ通りと命名され、沢山のお店や民家の前に、金子みすゞさんの詩が掲げられていました。
まちかどギャラリーではかまぼこ板を使ったモザイク画が展示されており、光の中で詩の世界に浸ることができます。きれいというよりは、内容的にも少しぎくっとする感じです。
金子みすゞ記念館
金子みすゞさんが仙崎の地に生まれて後、生家は金子文英堂という書店を営むことになり、20歳までを過ごしたとのことです。建物自体は火災に遭ったり様々な所有者の下で食堂になったりもしたそうですが、様々な人の協力(記憶など)もあって、実家跡に再築・再現されました。
実際に使っていた井戸にも詩があります。二階のご本人の部屋もあり、ここで机に座って物語を紡いでいたのかと、神聖なものに触れさせていただいた気持ちになります。
本館にはその短い生涯と作品の数々についての常設展示があり、幼少の頃から学業優秀で友達にも好かれていたことや、お話を考える喜びに溢れた時期があったこと、最期は悲しい思いを抱いていたことなどを知ることができました。企画展では1930年という排外主義の時世にありながら、ずっと広くて大きな視座で世界を見ていたことが分かります。黒曜石のような瞳には私たちには見えないものが数限りなく映し出され、人も命も自然も、あらゆる存在に対して温かい眼差しを向けていたのだと実感します。
みすゞ通りを端まで歩くと、詩にも詠まれた極楽寺や、金子家の墓所のある遍照寺を訪れることができます。ただ手を合わせるだけでなく、世界をもう少しだけでも優しく見ることができればと思いました。ギャラリーで手にした詩を、持ち帰らなくてはなりません。
さわやか海岸
そのまま左をぐるりと回り、静かな海辺を歩きます。水が透き通っているのもよくわかります。花津浦の方まで眺めることができ、あの向こうへと去って行った船は、今どこでと金子みすゞの詩にまた教えられました。
センザキッチン
長門の特産品が揃う人気の道の駅で、観光バスも次々とやって来ました。遊覧船もあるので、そちらを楽しんでおられる団体さんも多く、買い物も含めて皆さんとにかく楽しそうでよかったです。
昨日あれだけゆずきちのお菓子をいただいたので、お土産もゆずきち尽くしにしました。ゆずきちクレープは、ゆずの果汁がちょっと入っているというレベルではなく、果肉の味と香りが素晴らしく、際立った存在でした。
- ひものや食堂ひだまりさん
市場内にありおいしそうだったので入店し、ゆうひセットを選びました。瀬つきアジフライ、カマスフライ、のどぐろの干物ですが、新鮮な素材を出来立てで提供して下さるのでうまいのなんの。このご時世にごはんのおかわりも自由ということですが、ごはんが進みまくるおいしいお魚で大満足です(おかわりは自重しましたが)。
- ~海辺のパン屋~ララ ベーカリーさん
天然酵母は海由来とのことで、珍しい気がします。一番人気の百姓の塩ロールは期待通り中もジュワッと、外も塩味が利いていて、たっぷり穀物パン(チーズクリーム)も癖がなく柔らかい上質のパンでした。長門は車がないとパン活は難しいので、貴重な存在です。
少し周囲を歩いてみましたが、人工島まで行く時間はなかったことから大人しくバスで長門市駅に帰りました。駅前も軽く歩き回って満足したところで、荷物をピックアップして帰路に就きます。
長門市15:09発→厚狭16:30着 美弥線代行バス
厚狭16:36発→17:02徳山着(こだま860号)
徳山17:11発→新大阪18:59着(さくら562号)
という乗継で新大阪までなんとサブ4で帰って来られます。厚狭駅乗り換え6分は勇気が要りましたが、流石はJRさんというべきか、問題なく接続できました。鶏卵せんべいの甘みを噛み締めながら無事に日常へと帰りました。
最後に
予てより極めて高い評価が聞こえてきた大会でしたので、以前からいつか出たいとは思っていましたが、ようやく参加が叶いました。期待を遥かに超えていたのはある意味期待通りでしたが、ここに来ない限りは絶対に得られない素敵な思い出ができ、本当に幸せなことです。
金子みすゞさんの『こだまでしょうか』のように、単に自分が発したものが跳ね返ってくるのではなく、沢山の思いや熱がこめられて届けられるから、ランナーは歓びを感じながら走ることができるのです。そういった、生きている中で本当に出会いたい感情に触れることができた時間になりました。
向津具ダブルマラソンがなければ長門という(関西人には)遠い街を訪れる機会もなかったでしょうし、素敵な応援を届けて下さった皆様にお会いできることもなかったでしょう。私はすぐに走り去っていく沢山のランナーの中の一人に過ぎませんが、楽しんだことと感謝の気持ちがいくらかでも伝われば嬉しいです。
大会に関わって下さった長門の皆様に重ねてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
ここまでご覧いただきありがとうございます。