初参加でしたが弩級のウルトラマラソンでした。このスケールの大きさ、正にウルトラという言葉がふさわしく、ウルトラの中のウルトラということで“スーパー”ウルトラマラソンと称してもよいのではないでしょうか。地元の皆様の温かさ、超豪華なおもてなし食材、絶景、気温、全てが想像以上です。とにかく出てみて下さい。
ほとんど死にかけていた分、長い長い旅を、実況と応援に迎えられて終えることができた瞬間の喜びは計り知れないもので、一生の思い出になりました。猛暑(100kmの完走率は39.0%!)の中でも9時間50分で走れたのは白川村、川北町、白山市の皆様のお陰です。本当にありがとうございました。どなたかが欠けてもゴールに辿り着けなかったと思います。支えて下さったお一人お一人に感謝です。
追記:本当に本当に残念なことですが、コロナ禍での休止とホワイトロードの土砂崩れもあり、2020年以降は開催されることなく、2024年に終了となってしまいました。自分にとって鶴来を走って松任でフィニッシュするというコースは特別なもので、2024年の今でこそもう一度走りたいと思っていただけに、やり場のない気持ちもありますが、これもまた縁だと思います。大会を支えて下さった皆様のお陰で、最高の思い出ができました。本当にありがとうございました。
前日(白川郷観光と受付)
白川郷に着くまで
ルートはいくつか検討しましたが、値段は大差なく、
・大阪から高山が遠い
・ぷらっとで名古屋経由は朝早過ぎる
という点に鑑み、大阪→金沢(2時間46分、6,380円)、金沢→白川郷(1時間強、2,000円)を選択しました。
乗り継ぎのタイミングで金沢駅にてゴーゴーカレーさんで昼食です。お昼時は繁盛しており名前が10番目でどうかなと思いましたが、回転も速かったです。
ここでは定番のロースカツカレー中を選びます。ルーが濃厚でおいしく、カツも全体ではボリュームがありながら食べ易いサイズで満足感がありました。付け出しのキャベツ、ステンレスのお皿、フォークという全ての要件を充たした金沢カレーの定番でございます。
更にすずめの塩豆大福を購入します。つきたての餅が柔らかく、餡も絶妙なので金沢に来られた際には是非ご賞味ください。他にもお団子やおはぎ等の果てなき誘惑が……。
残念ながらひゃくまんパンは買えなかったのですが、約40分の滞在にしてはうまく楽しめたと思うことにしてバスに乗り込みます。(12時40分発です。)
白川郷到着後
少しうとうとしているとすっかり景色が変わっています。バスに揺られてこの景色を見るだけでもワクワクしますね。
1時間強座っているだけでもう白川郷バスターミナルに到着です。金沢ルートは楽ちんで正解だったと思います。ここで、宿とは逆方向ですが折角なので白川郷の合掌造りを見学することとします。
いきなりおみやげ物屋さんの立派な藁葺屋根に圧倒されます。
であい橋を渡り、少し日陰で腰かけて庄川を眺めます。金沢から1時間ほどでこんなに素晴らしい場所に来られるなんて、何故もっと早く来なかったのかと思うところです。
白川八幡神社で翌日の無事を祈願します。只では済まないでしょうから、あらゆる方面の力を借りようという追い詰められっぷりです。『ひぐらしのなく頃に』の聖地だったらしく、絵馬も沢山かかっていました。
合掌造りは外から眺めるだけでもありがたいものですが、内部も公開されているわけですから、是非とも入らねばと神田家にお邪魔します。中がどうなっているかは気になりますよね。
いざ中に入りますと、まず囲炉裏の広さと天井の作りに息づく歴史に打たれます。江戸後期に石川県の宮大工の手により建造された、英知の詰まった建物です。
二階は元々は養蚕のための空間だったそうで、今は酒造りや生活の道具が展示されています。タイムスリップしたかのような空間で、しばしぼんやりとしていました。
なんと四階まで見学することができ、暗い部屋の中から見渡す合掌造りの家並みは、ここでしか体験できないものなのだなあと感じ入ります。外は暑かったのですが、吹き込んでくる風は、力強くも涼しさを含んだものでした。
中二階は天井が低いとか、屋根が60度に近いとか、耐震のための組み方とか、とにかく自分の身体を中に入り込ませると直に感じ取れて自分の中に残ることが沢山ありますので、是非ともこの素晴らしき世界遺産を体験しに白川郷を訪れてみていただきたいなと思います。
さて、施設見学だけが観光ではありません。カーボローディングの名の下に名物を食べるミッションが残っています。ここまで来たからには五平餅とどぶろく入りきんつばをいただきます。どちらも食った感があり、満足です。
宿から受付会場の道の駅白川郷までは地味に距離がありますが、歩くしかありませんので、淡々と進みます。Tシャツや攻略マップ、お酒までいただき、明日は頑張らねばという気持ちになります。
折角ですのでここでお土産を買います。暑さで痛まないものということで栃のみせんべいと豆板を選びました。すぐに消費するものとして牛乳、桑ソフトクリームも購入し、明日への活力を充填します。カーボローディングの名の下に……。
受付会場からの帰り道で看板を見て、ああいよいよ明日はここを走るのかとその気になってきます。
今回お世話になったすみれ荘さん。スタートに最も近いというロケーションも素晴らしいのですが、食事が豪華で大喜びです。よし写真を撮ったぞ、え?まだあるんですか?の繰り返しでもう有難すぎ。相部屋の皆様も親切な方ばかりで、過去の白山白川郷ウルトラマラソンや他の大会の話で盛り上がります。夕食は18時開始で、20時過ぎには消灯しました。
レース
スタート前
20時20分頃就寝3時起床です。同室の皆様が慣れておられる方ばかりだったのでかなり快適に眠ることができました。勿論アイマスクと耳栓の力も借りています。
朝食は3時からでお願いしていました。起き抜けでも全く苦にせず食べられる身体ですので、注意するべきは食べ過ぎです。朝から立派で充実のお食事でした。卵と魚も食べられて燃料的にも良好です。
予想最高気温が35℃ともいわれていましたので、今日の目標で最優先するべきは、倒れずに100kmを走り切ることです。それが達成できれば自分として大きな自信になり、経験値もたんまり獲得できます。二番目の目標はおもてなし食材の完食ですが、これは体調的に無理なら完走を優先するつもりでした。タイムは暑さ次第で、短期決戦を狙って焦ると後半撃沈のおそれも大きく、あまり遅いと逆に命の危険があるので出たとこ勝負というイメージです。
装備は暑さ対策最重視で、白キャップ、白サンシェードの兜スタイルに白アームスリーブです。シャツはアンダーアーマーの半袖で肩を出さないようにします。ネッククーラーは一応持っていきましたが最後まで使わずでした。ランパンはミズノの360°ポケットです。タイツは暑さが怖く迷いましたが、下りの衝撃を和らげた方が後半持つと見てミズノバイオギアを着用しました。シューズはミズノのアミュレット。100kmも4本目(隠岐の島2本、奥熊野いだ天1本)ですのでこれでラストでしょう。
持ち物は、どう考えてもエイドが充実していますので、ほとんどいらないと考えました。マイカップ給水があるため、ジェルフラスコ二つのうち一つにアミノバイタル赤を詰め、もう一つは空けておきます。アミノバイタル粉は3本持参し、44kmと66km辺りで使用しました(最終盤は頭が働かず忘れました)。かわち保健センター行き荷物にもゼリーを入れましたが、予想通り不要でした。こちらは日焼け止めさえ送れればいいかなという作戦です。
宿の方に見送っていただき、スタートまでの道を歩きます。場所がわからず前の人についていったのですが、真っ暗でしたのでライトが重宝します。この時眺めた夜空があまりに美しく、こんなに近くで星空をはっきりと見られたのはいつ以来だろう、忙しい都会の暮らしの中で忘れてしまっていたな、これから先どれくらいこんな素晴らしい世界に包まれる機会があるのだろうと、幸せと共に寂しさすら感じました。
スタート地点には4時半前に到着しました。闇の中、ライトに照らされたランナーと荷物預かりのトラック、テントが異様な空気を醸し出します。走りもしないのに早速エイドで補給です。諸々ご準備いただいている食材を消費すると共に、マイボトル給水のアミノ酸コンクも酸っぱさがいい感じで、この先積極的に利用しようと考えました。
マウンテンエリア(白川郷~白山白川郷ホワイトロード)
完走祈願のお祓い、灼熱の中でのレースにおける体調管理と特別ルール(60km以降は完走扱い)の説明等を経て、いよいよスタートです。この時間になると空は明るくなってきます。長く長く、そして過酷な100kmの旅が今始まります。
まずはスタートの寺尾防災グラウンドから坂を下り、右に折れてすみれ荘さんの前を抜け、白川郷の集落に向かいます。道路の電光掲示板にもランナーを応援するメッセージが表示され、励みになります。白川郷では光がまだ足りなかったため写真はぶれぶれでしたが、昨日歩いたからいいやと思うことにしました。
4.5kmで早速最初のエイド、寺尾駐車場です。メニュー的にバウムはここで食べるしかないだろうと思ったので、早速大きなカットをいただきます。甘いもの大好きですから。
最初の5kmこそ30分と少しで通過し、その後も序盤でありながら腕をスイングして身体を浮かせるテクを使ったりもしたものの、先々のことを考えると温存した方がいいなと思い直して早々に歩きと写真撮影を入れていきます。
そうこうしているうちに7.7km馬狩料金所エイドです。楽しみにしていた飛騨牛乳をちゅーっと飲んでやる気が出ます。一本いただけるとは贅沢です。ジュースも欲しかったのですが飲み過ぎは危険なので自重します。ここでも大量のぶどうがふるまわれますので、おいしくいただきました。
坂を歩きつつ、この景色はまた思い出したいなあと感じた場所では積極的に写真を撮ります。ホワイトロードではテレビ金沢さんの取材も来られており、絶景スポットを押さえておられたことでしょう。放送はあったのかしら。
ちんたら歩き、頑張っているランナーさんに抜かれながらもどうにか13.7kmの蓮如茶屋エイドです。ここでは飛騨牛乳を使ったコーンスープがいただけますので、逃すわけにはいきません。少し多いかなと思ったのもつかの間、甘くてするっと胃袋に吸い込まれていきました。
その後も15km過ぎで少し走り易く感じる上りもあったものの、あの標識まで行ったら歩こう、あの日陰を出たら歩こうといった感じで、のろのろと進みます。周囲の誰も、こいつがサブ10で100kmを走り切るとは思っていなかったと思います。ただ、サブ10は結構時間的に余裕があり、想像以上に歩いても間に合いますので、特に気にしていませんでした。
17.5kmの表示で、上りもあと2kmくらいかと思っていると、いきなりコース最高地点1,445mの表示が現れて面喰います。折角ですので少し引き返して写真を撮っておきました。最高地点の思い出は残しておきたいですしね。
このトンネルを抜けるとひたすら下りです。もう本当に気持ちよく、ブレーキをかけずに下っていきます。その前に19.0kmとがの木台駐車場エイドにて早目のトイレとおからドーナツによる補給で準備を整えます。
満を持しての、目の前に広がる大パノラマを全身で感じながらの下りです。この瞬間は、こんな贅沢な経験をさせていただいて本当によいのだろうか、普通に生きていてはまず想像もできない世界だ、と胸を震わせながら下っていました。吹いている風、全身に伝わる下りの衝撃、強まってきた日差し、全てが合わさったこの時だけしか感じられない世界です。
ガンガン下っているとすぐに23.4kmの国見山エイドです。こちらでもスプライトをいただきました。ドリンクもよく冷えていて豊富なので何度も活力をいただけます。
この日はトンボが沢山飛んでいて、おそらくもう少し下った辺りで、その羽がきらきらと輝き、まるでダイヤモンドダストのような幻想的な光景を見ることができました。白山白川郷にはこんな奇跡もあるのだなとはっとしました。
坂を下っていくとカメラマンさんが待ち構えており、ああ、ここがふくべの大滝かと気付きました。ここぞとばかりにコースアウトして写真を撮ります。ここを素通りするのは惜し過ぎます。高さもあり、比較的間近で見られるので迫力もありました。
ここのエイドでは素麺がふるまわれます。これがよく冷えていておいしいのです。量が多いかなと一瞬ためらうものの、一気にいけてしまいます。レーズンもおいしくいただき、益々やる気が出ます。
少し行くと28.2kmの蛇谷園地エイドです。ここでは温泉炭酸水が出るということで、待ち焦がれていました。炭酸ばかり飲んでいる気もしますが、それぞれに異なりますので、その度に新たな気持ちに切り替わります。
ひたすら続く下りでは、無駄な力を抜き、ブレーキをかけないことが大事です。結局そういう走りが一番ダメージが少なくて済みますので。20km地点で2時間13分かかっていましたが、30km地点で3時間1分まで戻していました。特にタイムは細かくは見ていませんが。勢いがついていたので姥ヶ滝を撮る余力はなく、かもしかの滝も感心しながら通っただけにとどまりました。
なお、この辺りはまだ日陰が多いので、キャップは腰のポケットに挿したまま進みました。兜スタイルで重量があり、衝撃に耐えることで首が余分に疲れるからです。特に首元への日光を遮ることが狙いですので、必要がない時は小まめに対応した方がよいです。何となくキャップを被っているだけだと、蒸れて暑く感じたりもしますし、何のために装備をしているのかはレース中でも意識するべきかと思います。
そして目の前の景色にひたすら感謝しているうちに32.5km白山林道石川管理事務所エイドに到着です。ここではおろしうどんが提供されます。またしても量が多いのではと思いながら(実際一口では無理)、おいしくするするといただきました。スタッフのおじさんが「ゆっくり食べて」と仰っていましたが、スピードも出てきたので少々急いで食べました。さっぱりした味付けでまたまた元気が湧いてきます。
アミノ酸コンクを補充し、しりたかの滝を右に仰ぎつつ坂を下っていく辺りではもう峡谷が近づいてきます。料金所が見えてきて、ホワイトロードもここで終わりかと少しの寂しさとこの先への期待と不安が入り混じった気持ちになりました。
その後地味な上りもありつつ、37.7kmの一里野温泉エイドに到着です。スキー場の緑がきれいでした。自分の少し前を走っている男性ランナーさんが家族に出迎えられていて微笑ましかったです。ここの目玉は報恩講汁です。名物として掲げられている以上いただくしかありません。重たいこともなく、おいしくいただき、親鸞聖人のご加護があることを祈ります。勿論堅豆腐煮しめも忘れずにゲットし、順調に全てのおもてなし食材をいただいていきます。
ここでマウンテンエリアは終了です。この先はあまり景色が変わらないと言われる道のりですし、猛暑が予想されますのでどうなることやら……。
キャニオンエリア(手取キャニオンロード~パーク獅子吼)
さて、きつめの下りは終わったものの、この先も緩やかに下っていきます。手取川の峡谷は光を浴びた水の色も美しく、清々しい気持ちで走ります。この辺りではまだ山が日陰を作ってランナーを守ってくれていました。40.2km目附谷エイドでもスタッフさんが待っていて下さります。
まだまだ自然豊かな景観を堪能できますが、滑落防止のため基本的にランナーは山側を走行することとなっていますので、あまり川の写真は撮れませんでした。それでもこういったトンネルを抜けていくワクワク感は強い喜びを与えます。昔祖父の運転でこういう道を通ったこともあるなと考えていました。
この頃には時折熱風が吹き上げてきて、いよいよ後半戦は大丈夫かという気持ちも芽生えてきます。しかし、炎天下でコース誘導をして下さったり、エイドで食べ物や水を提供して下さる皆様のご期待にお応えしないわけにはいきません。何とかして楽しかったという感謝の気持ちをお伝えするためにも、事故を起こさず(要するに救急車のお世話にならず)ポジティブシンキングでフィニッシュすることだけを考えます。
44.0km瀬戸エイドまでやって来ました。ここらでアミノバイタル粉を摂取しておきます。ここでは加賀みその豚汁が出ますので、塩分補給ということでありがたくいただきます。写真を撮ってブログに載せますと言うと、わざわざお椀に撮影用の豚汁をよそって下さりました笑。その後もしばらくランナー達への展示がなされたと思われます。エイドの皆さんがこの記事を読んでいて下さる可能性は低いですが、面白かったですよ。
道の駅瀬女(せな)のエリアは応援して下さる方も多く、笑顔でお礼を言いながら進みます。幸い雲が直射日光を遮ってくれていたので、そこまでの危険は感じずにいられました。ここでもまだ兜は重さを考慮して、太陽が照り付けるまでは腰のポケットに挿しておきます。川を渡る際は集中して写真を撮ります。
47.6kmの白山下サイクルステーションまでやって来ました。ここでは待望のにわかそばが食べられます。「いや~これを食べに来たんですよ~」「大阪からお越しのさばさんのためにおばちゃん達早起きしたのよ~」といった会話を楽しみながら思い切りいただきます。走っているからか一層お蕎麦の味が美味しく染み渡ります。
常設のトイレも近くて使い易く、エイドはあらゆる面で充実しているなと実感しつつ再出発です。もうそろそろ50kmだけどこのまま真っすぐ行くのだろうかと思っていたら49.0km地点にも三ツ屋野エイドが設置されていました。こちらでは水分補給と被り水で身体の冷却に努めます。少し下の写真は梅干しのようなことを書いていますが、写真はぶどうですよね。
平地の走りはできるだけ効率よく走ることを目指すのみで、フルと変わりません。大転子が前に出る感覚を意識しながら脚は力を入れず、地面からの反発をしっかり受けて頭に力が抜けていくイメージで走るだけです。腕は免震装置と捉え、上半身は壁を作る。ピッチは落とさずにSSCを活用する。これくらいしかできることはないのですが、大体キロ5分半くらいでは走れていたはずです。(フォームについてはみやすのんき先生の書籍を参考にしています。)
わずか2.5km先には錦ヶ滝いこいの森エイドです。こちらでもまず被り水に立ち寄ってからテントに向かいます。今までに出ていないものとしてういろうをチョイスします。食べ易いラッピングになっており、こういう心遣いも流石石川と嬉しくなります。
ここでしばらく関東から参加されているIさんという方とお話ししながら並走させていただきました。フルのベストは同じくらいで、非常に真摯にマラソンと向き合っている方だということがよくわかりました。佐渡トキマラソンはいいですよと教えていただき、ちょっと参加してみたくなりました。お互い頑張ってサブ3を達成しましょう。
54.8km北陸電力手取川水力センターにやって来ました。こちらでも思い切り頭から水をかけていただきます。(強く首を押さえられたのはここだっただろうか……。)この辺りからずっと雲が出なくなり、日陰もないことから体感温度は相当のものでした。重たい兜で首筋も守りながら進みます。
おそらくこの先少し公園の中のような場所を走り、橋を渡ってまた公園という展開だったと思います。56.4kmバードハミング鳥越エイドでは、もうすぐ特別ルールでは完走扱いとなる60km間近だが、それでは満足できないだろうから何とか100kmまで到達したいという気持ちが強くなってきました。とにかく倒れないために被り水と水分摂取を最重視します。
そしてついに59.8kmかわち保健センターエイドまで来ました。まずは水浴びで身体を冷やし、クエン酸コンクの補充に勤しみます。原液を入れ過ぎてうっと思いましたが、ここはスポドリと混ぜて程よい塩梅にしてエイドの女子高生に褒められました。DNSのエナジージェルもここで一つ消費し、お守り代わりにもう一ついただきます。
隣のテントでは奥様方が用意して下さったスイカ、炊き込みご飯、そばソフトが並びます。速いのに写真まで撮ってすごい等とお褒めのお言葉をいただき益々調子に乗ります。実際この時点ではまだまだ余力もあり、内臓も全く問題なかったことからガンガン食べました。
このエイドでは預けた荷物を受け取れますので、大急ぎで日焼け止めを塗り直します。極めてありがたいことに袋に入った氷をいただけましたので、手に持って走ります。掌を冷却できると体温上昇を抑制できますので、とてもとても助かりました。勿論首筋や耳、脇、腿等当てたい箇所に当てられるのも重宝します。
エイドを出て右折すると60kmです。この10kmは1時間1分かかっていたようですが、あれだけエイドで休憩している割にはロスは少なく、かなりいけそうだという気持ちになります。ただ、暑さは厳しさを増しており、61.9kmの広瀬エイドに着くまでには氷も解け切ってしまいました。広瀬エイドでは写真を撮る余力もなく、水浴びと水分摂取のみで先に進みます。水を用意して下さった皆様に感謝です。そして旅はいよいよ最終章へと続きます。
レベルエリア(手取川~日本海)
鳥越大橋はきれいだなと感じる余裕がまだ心のどこかにある状態で鶴来にやって来ました。祖母が鶴来出身なので、この辺りには来たこともあり、どこか懐かしい気持ちにもなりました。
65.1km旧加賀一の宮駅舎では塩糀きゅうりがふるまわれます。塩分は欠かせませんし石川でお馴染みの料理ですので、また力が湧いてきます。何度でも回復するのです。
エイドを出るとすぐに急な上りです。うっと思う間もなく歩くことにしました。歩いたところで大勢に影響はありませんし、無理して疲れる方が危険です。坂を上ると白山比咩神社で、成程と納得です。鳥居の前でですが、残りの道のりの無事を祈りました。
なお、この頃にはスマホとエイドの位置が記されたカードを入れたジップロック内部も浸水してしまっており、カードが溶けて跡形もなくなっていました。水浴びの際はきっちり口を閉じないと駄目だと学習しました。スマホが一応無事でよかったです……。
この後も少し下ったと思ったらまた上りでだらしなく歩くという体たらくでしたが、何とか66.3kmのパーク獅子吼エイドに辿り着きます。ここでは楽しみにしていたキッシュをいただきます。甘酒も「飲む点滴だから」と勧められれば飲まない手はないでしょう。このエイドでは氷の袋をいただけ、またもしばらくの間命をつないでいただきました。
パーク獅子吼は数年前に母と一緒に来たことがあり、ロープウェーで上まで行ったなあとその時のことを思い出して懐かしんでいました。晴天の日曜日、沢山のパラグライダーが空を彩っていました。
いよいよラスト3分の1となり、沿道でも応援していただけることも多くなりましたが、ここから階段や信号待ちという地味なトラップもあり、徐々に心身の疲労を強化していきます。信号を越えて堤防を上ると69.2km十八河原公園エイドです。もうこの先は日陰などないのだという覚悟を決めるために写真を撮っておきます。ここで信玄桃という和菓子をいただき、嬉しいなあと少しだけほっとします。
70kmの計測は、何もない河原に係の方のテントとマットがあるだけというシュールなものですが、ここはもう「エイドまで500m」のコーンが見えることだけを希望に、ただ淡々と無駄の少ないフォームで進むしかありません。まだ力はあります。71.8km明島エイドでいただいた梨が甘くておいしかったです。
この先一旦川沿いから離れますが、どうせまた戻って来るのは分かり切っていますので過度な期待はしてはいけません。73.7km東部地区学習等供用施設エイドに至る頃には水浴びも全身になっており、気温の上昇も感じます。日焼け止めが落ちるとか、シューズが重たくなるとか言っている場合ではありません。生命維持を最優先します。ある意味、これ以上暑くはならないに違いないという前向きな思いも持ちつつ、豚汁で塩分を吸収します。
既に川北町には入っていますので、スタート前の「いちじく太鼓が出たら川北町ですね」という司会のお姉さんの言葉を思い出しながら、住宅地の中を進みます。このエリアでもご自宅の前で応援して下さる方が多く、力をいただけました。ようやく77.6kmの川北町保健センターエイドへ。待ち焦がれたいちじく太鼓をいただき、いちじくの甘さともっちりした皮の美味しさに舌鼓を打ちます。
さて、楽しいエイドを過ぎると堤防を上らされ、もうこの先に待ち受けるのは灼熱地獄でしかありません。遠くに見える手取フィッシュランドの観覧車を視界に何となく捉えながら進むのですが、あまりの暑さと変わらない風景に、一体今自分が何をしているのかもわからなくなることがありました。耳も時々聞こえなかったりしましたし、さっきずぶ濡れにしたキャップもすぐに乾くことに恐ろしさを感じつつも、あと2時間くらいで終わるのだと言い聞かせて進みます。81.3km手取フィッシュランドエイドでいただいたレモンはちみつは染み渡りました。
エイドはどこにでも設置できるわけではないと分かってはいるのですが、この辺りは地味に距離が空くことも多く、精神的に追い詰められつつあったので、まだかまだかと朦朧とする意識の中でただ前に進むばかりです。85.3kmの石川ルーツ交流館エイドではおぼろ豆腐をいただく力も残っておらず、ただただ身体を冷やしてあと90分耐え抜くことにシフトしていました。クエン酸コンクだけはがぶがぶ飲み、補給もしました。
次の88.1kmアプリコットパークエイドでは本当に危ない状態に近づきつつあると自分でもわかっていたので、少し長く休憩を取り、とにもかくにも全身の冷却に努めます。最早写真を撮る余裕もなく、水分と水浴び、そして応援の声だけを頼りに少し歩いて再出発です。
もう距離も段々分からなくなってきた辺りでいよいよ最後の難関である日本海沿いの道へと導かれます。とにかく写真だけは撮るのだと脚を止めて撮影。見渡す限り何もありませんし、誰もいません。ほぼ単独走で精神的にはこれ以上ないくらいの辛さです(記録を見るとラスト10kmで4人しか抜いておらず、そりゃ寂しいよなと思います)。もうここまで来たからにはサブ10できませんでしたで終わったら嫌だなという意地しかありません。90kmのマットがあるだけの場所を通過し、這う這うの体で91.5km松任石川環境クリーンセンターエイドへ。ひたすら水浴びと水分補給、これしかできることがありません。それでも皆様の応援のお陰でまた何とか前へと進むことができます。
もはやピッチも180spm出ていないことは明らかでしたし、SSCを活用できている感覚も全く無くなっていました。タイムの貯金的に、ここから上げるよりも倒れないソフトランディングを目指すことの方が大事だ、これも経験値のなせる業だと自分に言い聞かせます。
意識が飛ぶことも一度や二度ではなくなり、進んでいる実感もない中、海岸沿いでコーラを提供して下さった男性のお陰で命拾いすることができました。あのタイミングであそこにいて下さったことは、涙が出そうなほどありがたかったです。
永久に続くかと思われた海岸沿いの道も右折で終わりを告げ、公園の中に入っていきます。ここが94.4kmの松任海浜公園エイドだったということは後で知りました。フルーツトマトだけは食べようと噛みしめ、後はひたすら冷却です。男子高校生?にあと5.6kmです頑張ってくださいと力強く励ましていただき、どうにか辿り着かなくてはと進みます。
橋を潜りどこを走っているのかわからないままに残り5kmまで来たことに気付きます。もう残りはキロ7でもサブ10だと理解はしていましたがとにかく不安なのです。少しの間ですが、スタッフの女性二人とご一緒できたのは心強かったです。もうウイニングランですよ、と檄を飛ばしていただきありがとうございます。
かなり街中まで来て、97.1kmの千代野中交差点エイドです。ここでもとにかく倒れないようにだけ注意しました。次のエイドまで1.4kmと励まされ、沢山の応援に送り出していただきます。
そして高架下を潜りふらふらになりながらも98.5km千代尼通り商店街エイド、最後のエイドまで来ました。本来であればここであんころをいただくはずだったのですが、わずか1.5kmでも油断できないという追い詰められっぷりだったため、水分補給のみで再度走り出します。あんころは別途購入の上堪能したいと思います。
どんなに長い道のりでも終わらないことはありません。右折して、どうやらこのままフィニッシュへと向かえそうだと実感できた時には安堵の気持ちがようやく湧いてきました。そして松任総合運動公園前の信号に辿り着いた時は、ああ帰って来たんだ、この暑さの中やり遂げたんだという喜びに包まれました。
そして最後の最後、実況と両サイドの応援の声に迎えられてゲートに向かうこの時間は、今までのどの瞬間よりも生きていることのありがたさを噛みしめながら、ただ何度も「やった!」「嬉しい!」といった言葉を漏らしながら笑顔で前へと歩を進め、ついに歓喜のゴールを迎えることができました。本当に、支えて下さった皆様のお陰で、感謝しかありません。
アフター
スタッフの学生さんにメダルをかけていただき、飲み物や完走証も受取ります。順位は思ったよりよかったので、いかに過酷な環境だったのかと改めて思い知りました。
一応立ってはいましたし意識もはっきりしていましたが、本人が思っている以上にダメージを受けている可能性が高いと判断し、救護室に立ち寄り氷を受け取ると共に風に当たって涼んでいました。
荷物を受取り、着替えを終え、プロテインとプロテインバーを摂取した後で能登豚串とビールで打ち上げです。やっとほっとしたなと思いながら、肉を噛みしめました。
猛暑にも関わらず太鼓の演武やステージで盛り上げて下さる学生さんも素敵でしたし、総合案内で眩しそうにしながらバス乗り場の説明をして下さった方がとても可愛らしかったです。100km先のあの道からこの会場まで、沢山の方の力が結集してこの大会が成り立っているのだと感じました。
帰路では銭湯に行こうかと思ったのですが、駅から遠いのと荷物が多いのとで見送り、金沢へと帰りました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今年は特に厳しい環境だったため、大会を支えて下さった沢山の方、100km走ったランナーも途中で賢明な判断をしたランナーも一丸となって大会を作り上げられたのだと思います。一人一人にお礼を言いたいところですが、それは叶いませんので、ブログに思いの丈を綴りました。大会に関わって下さった方に感謝の気持ちが少しでも伝わればと思います。
白川村、川北町、白山市の皆様、本当に素晴らしい経験をさせていただき、ありがとうございました!
後日談
宿泊は白川村で、終了後お土産を買う力もなかったため、白山市にはふるさと納税で感謝の気持ちをお伝えすることにしました。返礼品はスミヤ精肉店さんの自家製焼豚。お肉が上等過ぎて切る時から緊張するレベルでしたが、いざいただいたところもううま過ぎてただただ感謝するしかないレベルでして、気付くと正座していました。お肉と幸せを噛みしめながら、これは独りで食べるには勿体ない、喜びは誰かと分かち合ってこそだなと感じました。本当においしいものは大切な人と一緒にいただきたいですね。
ここまでご覧いただき、本当にありがとうございました。