平成最後に参加させていただいて以来開催が延期されていましたが、2023年にようやく復活を果たし、またあの素晴らしい大会を走らせていただけることに胸が高鳴ります。
2019年大会は、初参加の上に加賀温泉郷との連戦のため弱気でしたが、素晴らしい景色、神様仏様のご加護と思われる気候、そして那智勝浦の皆様の温かい応援と手厚い支援のお陰で予想外に9時間22分台で終われました。護摩木に書いた「笑顔で完走」も達成でき、炫涛の木札を手に、感謝感謝の一日でした。
噂には聞いていましたが、苦しくなると現れる公設私設のエイドが豪華で何度も復活できました。めはり、茶粥、梅干、いちご、オレンジ、バナナ、トマト、ブルーベリーヨーグルト、プルーン、素麺、羊羹、ぜんざい、パウンドケーキ、梅ジュース、みかんじゅうす、ゆで卵、豆腐、紅茶等々(隠しビールも二か所あるとか笑)、終始元気と勇気をいただきました。
思い返せば今日に限らず平成の31年間はずっと守ってもらってばかりだったなと考えながら走ってきたところで、ラストで受け取った花は抱きしめたくなるくらい嬉しいものでした。この先の人生で、平成最後の思い出として、何度もこの喜びを思い出すことでしょう。皆さんもきっと同じ思いですよね。
那智勝浦の皆様、最高の平成の締め括りをさせていただきありがとうございました!令和もよろしくお願いします!
2019年の100kmは全部で三本でした。いずれも強く記憶に残っています。フルのその先にあるウルトラの世界には、多くのランナーが魅了されています。もし興味を持たれた方がいらっしゃれば、是非とも挑戦してみていただきたいと思います。
前日(大移動と前夜祭)
2時入眠6時半起床です。寝不足です。68.7kg。通常メニューに米を追加しました。何もしていなくてもガンガン食べられるものです。デザートはブリーチーズにシリアル一杯。ごちそうさまでした。ウルトラは久しぶりですので、お昼は食べない方がいいのか少々迷うところでした。
うとうとし出した頃に紀ノ川SAに到着してご休憩。こっち方面はあまり来ないので新鮮です。気温も低くて気持ちのいい場所でした。和歌山は案外近いものですね。
お店に入るには時間が微妙なのでパンを購入しました。アルペェンさんのレーズンロール130円は良心的です。D'oh!さんは種類が多く迷います。クロックムッシュもバタークリームも実に美味でした。二つで388円です。
折角ですので駅前を散策したところ、やたらとスナックが多く、激戦区なのだなという印象です。時間があれば神社等も観光したかったのですが、如何せん紀伊勝浦は遠く、あと二時間くらいかかるので無理はできません。移動中にはヴェルヌの『地底旅行』を読んでいたのですが、なかなか地底に入らず焦れていたところ、ようやく火口まで来ました。この情報から移動時間の長さが伝わるかは微妙ですが、とにかく遠いと思っていただければ。
17時前には大体の用意を済ませ、護摩木も書いたので前夜祭へと向かいます。エイドは2.5km間隔のエリアも結構あり、ガス欠はなさそうだと予想します。食べ過ぎとタイムのロスの方が注意ですが、気負う必要はないし、楽しく走るぞとあれこれ妄想を膨らませていました。
前夜祭は場内の音量が大きくて(席が密集している割に)隣の人との会話が上手くできないという問題はありましたが、ふるまいの素敵さの前には些細なことです。流石は和歌山、マグロがうまいです。マグロの胃袋のピザはなかなかお目にかかれません。演奏やコース攻略で歓待していただき士気が高まります。
レース
レース前(荘厳な那智の滝、意外と寒し)
エイドが多いので、ジェルフラスコは経口補水液(水500に対して一袋だと濃いので700に溶かしたもの)のみとグレープ+アミノバイタル赤を混ぜたものに絞りました。結局塩熱サプリは4/8しか食べなかったので、大体想定通りです。アミノバイタル粉は3袋携帯し、50.9km円満地公園と76.1kmの長井集会所エイド、フィニッシュ後に消費しました。スマホはジップロックイージージッパーMに入れます。
装備は隠岐の島と同じくアンダーアーマー半袖青に日焼け対策のアームスリーブ白、白キャップです。サンシェードは気温が低い上に日陰も多そうなので、往路29.3kmの長井集会所エイドまでは不要と判断し、同エイド行荷物に入れました。熊本城と同じ勝負ロングタイツも履いておきます。踵のテーピングは二重、シューズはアミュレットです。
長井集会所エイド行の荷物は、OS-1、ゼリー三つと日焼け止めを、疲れた状態でも袋の中で見つけやすいよう青い小袋に入れます。こういうちょっとした工夫がストレスを減らします。経口補水液も欲しくなると見込んで、同梱しておきます。
ゴール行荷物にはアミノバイタル青とプロテイン、プロテインバー、着替えに洗濯ネットと本一冊を入れました。今振り返ってみても、荷物の配分や取り易くする工夫は功を奏したといえるでしょう。
全体の方針としては、涼しいうちに距離を稼ぐ(ただし飛ばすわけではない)ことを第一としました。遅く走る=楽というわけでもなく、単純に暑い中路上にいるだけで消耗するので、ある意味短期決戦が望ましいためです(短期と言っても10時間程度はかかるのですが、13時間や14時間よりは短いですので)。コース的にも60km手前を過ぎれば下りの時間が長く、後は最後の気力勝負を残すのみなので、心理的負担は少ないと読んでいました。
過去の優勝タイムを参照する限り隠岐の島ときつさはそう変わらないだろうと推測しました。とは言え、加賀温泉郷との連戦ということもあり無理に記録を狙うつもりはありません。エイドはできるだけ幅広く食べて地元の方との交流を楽しむことも目標にしていました。
トイレは20km台と50km台で済ませておこうと計画を立てます。全身がどうなるか分からない(腹筋や指がつったりする可能性もある)終盤での不規則な動きは避けるのが鉄則ですので。結果として24.2kmゴルフ練習場先の仮設と50.9km円満地公園の常設を使用しました。仮設は狭さと段差が嫌ですし、衛生面も劣るので、今後も極力常設を使いたいところです。
バスが駐車場に到着後、荷物を預けて念のためトイレに寄っておきます。そこから坂を下り、受付後階段を慎重に下りて那智の滝へと移動します。寒くはあるものの、これまでにもっと寒いレースは何度も経験している(東京マラソンや熊本城マラソンのスタート前は危険でした)ので大丈夫だと思いました。それでも冷えると辛いのは確かなので、護摩木を奉納した火の傍で暖を取っていました。
那智の滝は荘厳で、平成の最後にここまで来られたことに感謝すると共に、今日は一日守っていただけるようにとお祈りをしました。スタート直前には段々明るくなってきて、ライトなしでも大丈夫でした。あまり後ろの方だとまずいので、ある程度前の方に陣取ることとします。
レース
前半(最初上れば当分下り)
明るくなり、いよいよ待ちに待ったスタートです。ここはダッシュで、というわけでもなく、まずは皆でゆっくり階段を上ります。計測マットを過ぎ、すわ下りと思ったら100mくらいで折り返して結局上ります。今日はタイムが出ないと思いました。遠くの海と日の出の美しさに打たれながら見晴台エイドで水をいただきます。急いでも仕方ありませんし、止まって撮影します。
序盤で既にGPSより看板の距離表示が長かったため、“しめしめこれは今日は100kmより短くて済むぞ”、とせこいことを考えました。長丁場なのでこれは大きいです。上りの途中で前夜祭で盛り上げて下さったマリオにご挨拶させていただきました。今回で8度目とのことです。あの格好は重くて暑いでしょうに、エンターテイナーです。
無理なく走って額に汗がにじみ出した頃に頂上に到着です。GPSによると最初の5kmは34'58"、頂上までで45分かかっていたらしいです。ここから12km下りか…とまた新たな勇気が必要になります。光も不足し揺れも大きいので写真はブレブレです。10.1kmの那智高原エイドでは早くもコーラをいただきます。
緑に囲まれながら13.9km南平野三差路エイドへやって来ました。この道は三回も通っていたと終了後に地図を何度も見て理解しました。チョコレートは歯に挟まってなかなか溶けないのが難点ですね。腹筋を固めてブレを抑え、着地が前にならないように気を付けながら更にひたすら下って行きます。10~15kmの24'50"は自然に走った結果です。特に急いだわけではありません。
21.7kmの井鹿会館では常設であればトイレをと思ったのですが、仮設だったのでパスしました。思い起こせば一日を通じて苺を沢山いただきました。星型の坊主頭で迎えてくれた少年がかわいらしかったです。彼は帰りも鐘を鳴らして待っていてくれました。この辺りで80kmと合流したため人が増え、少し賑やかになります。田畑の緑の中、平地を気持ちよく進みます。
24.2kmのゴルフ練習場エイドではめはりずしが提供されたので有難くいただきます。これでこそ和歌山ですね。みかんジュースもふるまわれ更に元気になります。少し離れた所に仮設トイレがあったので、立ち寄っておきます。この後も川沿いの静かで気持ちいい道を走っていきます。日陰も多いので暑さによる身の危険は感じず、風景に目を奪われながら進む時間でした。
26.9km中里会館では羊羹をいただきました。羊羹もあちこちのエイドで沢山食べました。山々を望みつつ歩道を走っているうちに29.3km長井集会所エイドに到着です(7時40分頃)。日焼け止めを塗り直し、経口補水液も飲みます。「いいペースですよ」と言葉を掛けていただき、「涼しいですので」等と話しました。素麺と果物をいただいてまた回復します。
このエイドでは椅子に座ったのがよくなかったのか、再始動の際に左脚の脛辺りがやや不自然な動きになったようです。帰りは座らないようにしようと思いました。復路でも通るので、また後でよろしくお願いしますとお礼を言い再始動です。山へ向かう橋を上り、長閑な風景を仰ぎながら歩を進めます。出合橋でもコーラで給水。やたらと元気いっぱいで明るいエイドでした。
人がいないエリアでも風船で応援してくれる心遣いが温かいなと感謝しつつ、川沿いを進みます。西中野川トンネルを抜けたところでコーラやみかんを積極的にいただきます。65kmのスタート待ちのランナーからのエールも嬉しいです。この時点で8時10分なので、5分のリードです。意外と早く着いたなという感覚でした。
中盤(長い上りが二回あるも、ここさえ乗り切れば)
熊瀬川エイドまでは4.4km空き、この大会にしては少し間隔が長いエリアになります。それでも応援がいて下さるので辛くありません。この仮装の男性は最後の最後にフィニッシュ直前でも迎えて下さった方だと思います。熊瀬川エイドでは茶粥をいただきました。めはりもですが、和歌山でこれは外せません。ここからは上りが続くため、気持ちを切り替えます。
上りは3kmも続かないはずだったので左程構えていなかったのですが、公式42kmの久保宅エイドでは既に思ったよりきついな…という状態でした。何なら歩いてやろうかというくらい失速していました。途中でタケコプターを付けた男性に抜かれて、すごいです頑張って下さいと言うのがやっとでした。
GPSとは大分ずれていましたが、自分の中で今後に活かすため、手元の時計も参考にしていました。フルの距離は歩かない、4時間を切るということだけは守りたかったのです。42.2kmで3時間59分台ではあり、一応一つの目標というか目安は達成してほっとしました。もう少しはこのまま粘れればと持ち直します。
上りは辛かったものの、遅いながらも肘を強めに飛ばして脚を使わないようにするとかなり楽だということに気付き、ここからはこのスタイルで行くことにしました。どうにか田垣内三差路エイドに着き、めはりと氷砂糖をいただきます。勧められるままに猪のオブジェも撮影。このエイドには隠しビールがあったとか……。
45km付近で右股関節に若干の疲れが出たので不安になったものの、その後何となく走っているうちに気にならなくなりました。しばらくは下りなので気分も楽です。口色川三差路ではおいしいぜんざいと抹茶塩をいただきます。ぜんざいを「全財産を投じて用意した」というネタに笑ってまた気力が湧いてきます。こういうやり取りが楽しめるのも、ウルトラの大きな魅力ですね。
川沿いを走って50.9km円満地公園に到着です。ここではしっかり休むことにしてまずはトイレに寄っておきます。ゆで卵に梅塩を付けて栄養補給です。梅ジュースが実に美味しく、おかわりもしました。くどいようですが流石は和歌山です。なお、ここから先はほぼ全てのエイドで被り水を利用しました。実際暑くなってからでは遅いですし、長期戦でぼんやりしがちな頭をしゃきっとさせる意味でも大事です。
左折して応援を受けながら進むとまた上りです。両側が岩というのは珍しかったので上り切った記憶のために撮っておきます。今こうして記憶を辿れていますので、写真があると役に立つなあと実感します。
少し下ったらこの標識(「ようこそ つかのまの富士急ハイランド ナガシマスパーランドへ」)と何だか見るからにすごい坂に出くわします。そういう坂はいらんねん…と思いながらも、ここを通るしかありませんから、肘を飛ばすのみのスタイルで上り切ります。腕と背中は疲れましたが、脚を残せたのが非常に大きかったです。
少し行った所に私設エイドがあり、ここでパイナップル、ぶどうに大好きなプルーンをいただきました。おいしいですし疲労が和らぎました。感謝です。結構速いですね等と褒めていただき、調子に乗って昨年隠岐の島に出ました等と話をして過ごします。
そこからほんの少し上ると小阪下三差路エイドです。みかん、苺等をいただき、流れる水を頭から被ります。既にトップの選手数名は折り返して下ってきており、速さに驚きました。
“たしか58kmくらいで折り返しなので、上りはそれ程長くないだろう”と走り出し、下って来る先行ランナーとエールを交換しながら進みました。帰路ではこんなに上ったのかと思う坂と景色でしたが、肘を飛ばしまくったこともあり上っている間は左程辛くありませんでした。両手で交互に草むしりをして物を投げるくらいのリズムです。まあ5kmに31'22"かかっているので、決して速くはないのですが。
大体上ったかなと思った頃に平野バス停エイドに到着です。ブルーベリーヨーグルトとパウンドケーキをいただきました。こうしていただくスイーツは、おいしくてまた力が湧いてくるのでたまらないですね。景色もよかったので写真を撮り、また帰って来ますと告げて走り出します。ゼッケン番号から名前を調べて呼んで下さることも多く、とても励まされました。
「頂上まであと2km」の看板に、えー、まだ上るのかよと思いながらも、ここでは笑顔で折り返してくるランナーにナイスランですと声を掛けたりしつつ明るい気持ちで先を目指します。景色もよくてこの先の下りも楽しみにしていました。待望の折り返し地点ではコーラをいただきます。折り返しで5時間24分台、残された上りは85km以降のみ、この状況からしてサブ10は十分に狙えると思いました。
折り返してからは今度はこちらが励ます側だと思ったので、明るい声で頑張りましょう、エイドもうすぐですよ等とエールを送りつつ戻ります。再び訪れた平野バス停では梅やバナナをいただき、景色を楽しみながら余裕で下ります。小阪下三差路では朝のスタート地点へのバスで案内して下さった千葉さんにお礼を言えました。素麺もうまくて楽しい一日に更にいい思い出を加えてくれます。
ここから急な坂も含む下りが続き、たまに前にいる人を抜いたりしているうちにエイドに着きました。ここが熊瀬川エイドだということは後で知りました。たしかに写真を見るとメニューは共通ですね。今回は山菜を乗せた茶粥をいただきます。これもまたおいしくて希望が見えてきます。山菜の名前を思い出せずすみません。次回参加する際はきっちり覚えて帰りたいと思います。
この先、途中の看板で「もうすぐ熊瀬川エイド」という往路用の表示があり、“そうかもうすぐ65kmのスタート地点だ”とようやく大体の位置を把握できました。一度通っている場所なので、ああ帰ってきたなあという気持ちです。この辺りでも大体は単独走ながら、たまに少しずつ落ちてくるランナーを捕らえる展開でした。
往路でも書いたとおり、この区間は4.4kmエイドが空くのですが、ありがたいことに一か所私設エイドを用意して下さった方がいたのでそちらでもコーラをいただきました。OS-1ゼリーまで用意して下さっており、献身的な応援に打たれる一幕でした。西中野川トンネルエイドではせとかをいただきます。これはむっちゃうまい逸品です。また来年も来てねと応援を受けて笑顔で応え、改めて走り出します。
後半~終盤(いよいよ最後の上り。後は下って歓喜のフィニッシュへ)
トンネルの中は涼しかったですし、被り水もうまく使えていたこともあり、ここまで一度も暑さで死ぬ気配を感じずに済んでいます。エイドで休みつつアベレージ5分43秒くらいで安定していたので、無理なく動いて5分30秒台くらいだったと思います(細かくは見ていません)。5km毎のタイムで27~29分台が続いていたため、10時間はほぼ間違いなくいけると考えました。
出合橋では前のランナーの誕生日を祝う場に遭遇したので一緒に拍手しました。帰り道では、この橋を渡って左折すれば長井集会所だと分かっていますので元気が出ます。長井集会所エイドではフラスコの中身を変えるか迷いましたが、残りの距離的にちびちび吸うより一気にいった方が効きそうなこと、詰め替えに要した時間を取り戻そうと焦りたくないことから三つを掴み出して腰のポケットに突っ込み再出発しました。
76.1kmで7時間でしたので、もう普通に行けば10時間切りは間違いありません。中里会館ではまたしても柑橘類、羊羹をいただきました。こちらでも名前を呼んで力づけて下さり、とてもありがたかったです。ゴルフ練習場ではみかんじゅうすをいただいたのですが、これが驚きのうまさでおかわり必至なのです。小さなきょうだいが準備してくれていたのも微笑ましく、また前に進もうという気持ちになれました。
その後ナメック星人(?)の被り物をした男性に追いつきました。折り返し前は大分先行していた方です。暑いでしょうにと言うと、「脱いだら負けかな」と言われて笑いました。往路でも応援して下さった星形坊主頭の少年の鳴らす鐘に迎えられての井鹿会館エイドではコーラをおかわりし、豆腐も食べて最後の上りに備えます。ここに来てあっさりした豆腐を食べられるのは身体にも優しくてよかったです。
少し進むと「ここから最後の上り7km」という嫌な看板が姿を現します。往路でこれは嫌だなと思いながら駆け下りた地点です。しかしここまで来たからにはサブ10は絶対に達成するのだと肘を飛ばしに飛ばして上へと身体を運びます。途中黒部のPRウェアを来た男性や65km(?)上位の女性を声を掛けつつ抜く等しつつ、極力止まらず進みました。
そのまま行くこともできたとは思いますが、残り時間と気力体力を考えた結果、85kmを過ぎて初めて歩きを入れました。ここまで来たら後は崩壊しなければサブ10ですから、歩きながらライチ味のジェルを吸います。新停車場線エイドまでは1度しか休まなかったと思います。次のエイドの間は2.8kmですが、平地に近いエリアもあり、生駒ボルダー的な走り易さだったと思います。
新停車場頂上②から南平野三差路エイドまでは1.8kmしかないにも関わらず、何度も歩きました。この10kmは35'06"と34'24"でしたが、“このために貯金を作っていたのだからあわてる必要はない”と言い聞かせていました。最後下りに入ってしまえば30分かかることはないので大丈夫です。歩いている人、脚が動かない人もいる中、少しずつ、少しずつ上っていきます。
どうにか上り切って、「もう後は下りだけだよ」と言われた時は本当に嬉しく、年甲斐もなく大喜びで「やったー!」などと言いながら出発しました。ここには上げていませんが、親切な皆さんの写真を撮ることもでき、嬉しかった思い出をまた呼び起せることが自分にとって何より大きな財産になりました。現に今こうして書いている間も、あの時の喜びが沸々と蘇ってきています。
下りは下りで衝撃が来るのですが、上りより楽なのは間違いありませんし、5kmで30分かかることもありえないため、もういけると確信しました。後は海を目指すばかりです。ここに来て、“これはサブ9.5も狙える”と気付きました。途中は車が多くて若干怖かったのですが、道を譲って下さるドライバーさんもいて、感謝しながら下りました。井関手前エイドでも給水は欠かしません。
道が開けた場所で名前を呼ばれながら誘導していただき右折します。笑顔で応えて最後の井関三差路エイドへ。最後なので紅茶をいただきました。「残り2.8kmです」と言われ、もう本当よくここまで走らせていただいたなと感謝の気持ちがまた一層強くなりました。名残惜しい気持ちを抱きつつ、本当に最後の再始動です。
途中数十メートルの未舗装路があり注意を要したものの、後は川沿いをひたすら進むのみです。少しだけ苦しかったですが、嬉しさが勝っていたので笑顔は保てました。ついにラスト1kmの看板が見えてきたので、最後の力を振り絞って撮影します。誘導していただき道路を横断し、いよいよ長い旅もフィニッシュを迎えます。
最終盤はもうずっと平成の思い出がぐるぐる頭を巡り、”今までわがままばかり言ってきたな、でもこうして子供の頃に描いた冒険ができる人生が送れて幸せだな”等と考えていました。ここで一輪挿しの花を渡され、心の深い所にグッと刺さりました。少しうるっと来ましたが、ここは泣くところではないと思い直し、花を左胸に押し当て温かさを感じてから、笑顔でありがとうとお礼を言いながらフィニッシュしました。
アフター
レース後(心も充たす食べ放題と丹敷の湯)
そのまま喜びに浸るかと思いきや身体の状態をチェックしたかったため、ゴール後即トイレへと向かいます。脱水はなさそうでしたし、歩行にも支障がなく、一安心です。ここからふるまいのうどん、豚汁、発泡酒、ぜんざい、アイスをいただき(とっても嬉しい食べ放題です!)、アミノバイタル粉、プロテイン、プロテインバー2本、朝の菓子パンを食べました。あの素敵な100kmを走り終えた満足感に包まれた中での発泡酒は世界一うまいものだったといえます。
フィニッシュ会場のすぐ傍にある丹敷の湯の入浴券もいただけますので、混む前に向かい、汗を流してお湯に浸かり筋肉をほぐします。他のランナーさんとも話したのですが、こんなに近くで終了直後に温泉に入れるとは、ありがたい限りです。入浴後牛乳で栄養を補給して、更に温泉気分をエンジョイします。なお、タオルを忘れても販売があるので大丈夫ですが、家にタオルが増えてしまうのはランナーとしては若干頭が痛い問題ですので、持参をおすすめします。(私は忘れましたが……。)
アミュレットは流石に今日のハードコースで減っています。下りが長いからかもしれません。これでレースでの走行距離は200kmです。今であればこういう減り方(踵から大きく削れていく減り方)はしないので、当時はかなり負担の大きい走り方をしていたのだと怖くなります。今のフォームならどれくらい走れるのかは早く確かめてみたいです。
しばし会場で余韻に浸り、帰って来るランナーさん達を迎えます。テープを持っていて下さるスタッフさんの衣装が素敵です。帰ってきて、アナウンスで名前やコメントを読んでいただきながらここを通り抜けることは、本当にものすごく嬉しいですよ。
会場から紀伊勝浦駅までも送迎していただけて、至れり尽くせりです。駅の傍にあるコインランドリーへ予定通り立ち寄ります。大人として不潔は許されませんので。流石に16時半頃に風呂も何もかも終えて洗濯に勤しむ人はおらず、店内には私一人でした。洗濯400円乾燥100円です。
宿に戻りプロテインシェーカーとジェルフラスコの洗浄も終え、17時40分頃には街に繰り出します。折角だからと本を買ったのですが、時代が古いこともあって難解でした。それでもGW中に地道に読んだことにより、熊野の地の伝承、歴史について知識を得ることができ、今回の遠征の思い出がまたいっそう濃いものになりました。
夕食はマグロステーキ定食と紀州ゆず梅酒を選択しました。和歌山の鮪は本当にうまくて困ってしまうくらいです。これ以上は望みません。夜はどこのお店も混雑していたと思います。外に列ができているお店もありました。
19時頃に宿の風呂へ。狙い通り空いていたのでゆったり浸かれました。その後部屋にてファミマの諸々で打ち上げです。やることはいつもと変わりません。思う存分肉を食べ、平成最後のレースを無事に終えられた安堵感に力も抜け、眠りへと落ちていきます。
翌日(紀の松島巡り、鯨博物館)
もっと寝ていたかったのですが、5時前には尿意で覚醒しました。若い方にはピンと来ないと思いますが、年を取るとこんなものです。仕方ないので起きることにします。昨日は下りがきつかったこともあり腿前にダメージがあると、起床時点でも分かりました。
とりあえず海へ向かいます。釣り人の朝は早く、6時にもなっていないのに何人か竿を垂らしていました。
鳥居があるのが弁天島です。上手く撮れば角度的に那智の滝も見えるとのことですが、うろうろしても正直分からず仕舞いでした。この周辺は泥ダイアピル岩体の見られるエリアらしいです。地学徒的には熱い情報だと思います。
この海岸沿いには遊歩道がありますので、とりあえずぐるっと回ってみます。波の音が力強く、海の緑もきれいでした。折角ですのですぐ近くまで下りてみました。ウルトラの翌日ですので結構なリスクを感じないでもない(身体が思ったようには動かないため)のですが、ここまで来たからにはやるしかありません。岩の上で伸びをして、海と一体化した気分になれました(ちょっとビビりながらですが)。
朝の疲労抜き観光ジョグは6kmをキロ8分36秒でした。どこを痛めているわけでもないのに、最初はとにかく身体が重くて力が入りませんでした。100kmってこんな感じだったっけと思いつつ終盤は大分ましになったのでよかったです。下りの衝撃が腹筋に来ているのもよく分かりました。
ファミマでは前夜祭でご一緒した方と遭遇して昨日の思い出等を話せて楽しかったです。ラッキー過ぎます。大阪から来られているとのことで、ご縁を感じます。またここでお会いできるといいなあ。
太地町立くじらの博物館はよくぞここまでというほどの貴重な展示のオンパレードで圧倒されました。個人的には舌、心臓、目等の標本が、当たり前ですがとにかくでかく、とても印象的でした。そのサイズが物語る迫力といいますか説得力といいますか、やはり実物は違いますね。ここまで鯨に関する資料が集まっている施設はないのではないかと思います。流石は捕鯨発祥の地です。
イルカショー、クジラショーに加えて水族館まであり、餌やりやふれあいスイム等もオプションで体験できるんですね。家族連れも多く、皆様楽しそうでよかったです。イルカもクジラも賢く、水しぶきは大きくて力強いものです。まだ小さいらしく、いずれこのクジラが2トンにまでなるのかとただただ感心しながら、子供に混じって感嘆の声を上げたり、拍手を送ったりしていました。
なお、赤ふんにニーズがありそうなのでこちらも上げておきます。
クジラの串カツは思った程臭みがなく、普通に食べられました。もう少し量を食べないと特徴は掴めないというのが率直な感想です。何にせよ貴重な体験です。昔は鯨の肉が当たり前のように食べられていた(給食に出たりもした)わけで、ちょっと想像のできない世界ですね。
太地町から戻ってきて最後に鮪をいただかなくてはとにぎわい市場にやって来ました。“いやいやこのカマ焼きうますぎんだろ”と言葉を失います。とにかくでかくて身がどんどん出てくるし塩のシンプルな味付けとジューシーな肉汁がもう最高でした。しかもこれで500円とは……勝浦恐るべしです……。とにかく、ここにはまた絶対に来ようと強く思いました。
福助堂さんで買った(+サービスしていただいた)お菓子を食べながら家路につきます。お店でも、あんな距離をよく走るもんですね等と言葉を掛けていただき、楽しく談笑できました。もう一本遅らせて観光するべきではという思いもありつつ、諸事情(主に体力面)により早く帰ることにしました。お土産物屋さんでかりんとう、那智黒等もしっかり購入しました。ありがとう那智勝浦、また会う日まで。
最後に
いかがでしたでしょうか。私の拙い文章でも、改めて書くまでもなく十分に伝わっているかと思いますが、公設私設のエイドの充実ぶりは想像の遥か上を行き、前夜祭、協賛店や温泉のご協力等々、地元の皆様からは本当に温かすぎる程の歓待を受けました。大企業の協賛はなさそうな様子なのに、ここまでやっていただけるとは感謝しかありません。
レースも、スタートが那智の滝という時点で有難すぎです。護摩木で完走祈願、棚田や海を望みながら走るコース設定、完走木札と全てが奥熊野の魅力を最大限活かしています。こんな素晴らしい大会で平成を締めくくることができるとは、なんと幸せな人生でしょうか。
那智勝浦の皆様、最高の100kmを支えていただきありがとうございました!次回も楽しみにしていますので、どうぞよろしくお願いいたします!