四年間待ちに待ったこの日を迎えられました。あの日と変わらぬ素晴らしい大会で、これ以上望むものはありません。護摩木の奉納から始まり絶景の中を進むコース、充実のエイドに完璧な運営、そして温かな応援の全てが揃っていて、大会が掲げる『中規模クラスでの全国一の手作り大会』の目標はとうに達成しているのではと思います。
エイドは茶粥にイタドリ、梅ゼリー、梅ジュース、鹿肉、最終盤までめはりが登場する等々地元食材が目白押しです。勿論みかんや苺は至るところに。梅干しもみかんジュースも色川茶も本場のおいしさ。あろうことかヤクルト1000やビールまで登場し、どこまでやって下さるのかと思います。
応援がまた沢山でかつ温かいのが嬉しい限りです。エイドまで行けば必ず明るく励ましていただけるので、上り坂でもまた頑張ろうと思えます。何度でも復活します。お犬様も山羊も総出での応援、心に染みます。本当にありがとうございます。
流れも時間も止まったかのような水面にしても、そのまま飛び出して行ってしまいそうな下り坂からの景色にしても、美し過ぎる彩りの木々と草木の香りにしても、心奪われる光景が多くて、写真を撮り忘れることもしばしばでした。絶景ゆえにコースはハードなはずですが、日陰が多くてそこまで暑くないことと、やはり応援の力が大きく、割と好タイムで走り切れてしまいます。
レース以外でもお楽しみは盛り沢山。マグロの町ですので、マグロカツ、海鮮丼、カマ焼きと三日続けてのマグロ尽くしです。翌日は弁天島を眺めたり(朝だったので渡れず)、大門坂を通って那智山へお参りしたりで今回もまた充実した楽しい時間を過ごすことができました。
上りが急な所もありましたが、エイド以外では止まったり歩いたりすることもなく走り通し、9時間18分でこっそりPBでした。ズームフライ4で体調もよかったので、普通に行けば4年前の自分は超えられるだろうと思っていましたが、その通りでした。(146bpm, 176spm, ストライド1.00m, 上下動比6.4%, 上下動6.6cm, 左右接地時間バランス48.7%:51.3%。ガーミンの合計タイムが移動時間より30分以上長いのがウルトラらしさです。)
前回は平成の思い出と後悔、そして希望を感じながらの100kmでしたが、今回もこの四年間の思いが頭と心を巡る、ただの100kmではなく人生が凝縮されたような旅路でした。那智勝浦の皆様、素敵な、そして最高の時間を与えていただき、本当にありがとうございました!
続きのページにはコースやエイドの写真は勿論タイムも細かく書いたので、ファンラン目的の方から真面目な方まで参考になると思います。何よりも大会の素晴らしさや楽しさが伝わり、関わって下さった方がよかったなと思っていただけると嬉しいです。
2019年は平成最後の日曜日に開催されました。そういう意味でも生涯で特別な大会として刻み込まれています。
他にエイドが豪華過ぎる(食べ切れない)大会の代表と言えば、えちご・くびき野100kmマラソンがあります。こちらは隔年開催ということでレア度が高いので、出られる時には是非出て下さい。
白山白川郷ウルトラマラソンもすごかったです。ホワイトロードが2022年の豪雨被害から復旧し切っていませんが、こちらももう一度は出なくてはなりません。
マラニックでのんびり、福井の食を堪能できる東尋坊愛のマラニックも。2023年は距離が短くなりましたが、103km完食の達成感はすさまじいです。
前日(くろしおで和歌山へ)
起床時65.3kgで、そこそこうまく減量できていました。朝食はまず普通に鶏もも肉と白菜、人参、ほうれん草の水炊きにくすのきカントリーマラソンの際に山口で買ったポン酢をかけてシンプルにいただきました。
クリーニング店やスーパーに行ったりしつつ、パン活も欠かせません。フードスケープさんでは香りと塩味が利いたオリーブアンショアと甘く香ばしいクルミのミルクフランスをいただきます。店内では肉を焙っていたりで食欲をそそりまくります。
ブーランジェリーフクシマさんでは、塩昆布の隠し味がうまいスパイシーベーコンとパフの香ばしいパンオショコラ、シンプルなバターロールを買いました。ついでに京都マラソンで試供品としていただいたシリアル(BAKEDオーツ)とプロテインバーを食べて満足したところで出発です。
大阪駅からくろしおで4時間弱。同じ関西とは思えない移動時間ですが、読書が捗るのでそれはそれでいいです。14日以上前の予約なら5960円と金沢に行くより安いのに長時間乗車できるというのはお得な気すらします。
今回うかつだったのは大阪駅の乗り換えでして、くろしおは西の果てにできた新しいホームに来ると土壇場になって初めて知りました。何となく環状線のホームをうろついていて異変に気付いてから小走りで移動する羽目になったのですが、世の中の動きはウォッチしなくてはなりませんね。いや大阪に住んでいても駅で使うのはごく限られた範囲のみですので……。
車窓からは期待通り太平洋の美しい姿が楽しめます。この光景を楽しみに、日差しを受けてまで進行方向右側の席を取りました。紀伊田辺の少し前ではアナウンスまでしていただき、親切な気配りに感謝です。移動中はキルケゴールの『死に至る病』に飽きてきたところで大江健三郎の『ピンチランナー調書』に切り替えたものの、自分には合わなくて少々悩みました。まあこういうこともあります。
今回は勝浦温泉お宿はなさんに泊まったのですが、非常に快適で言うことなしでした。迎えて下さったご主人も大変にこやかでご親切、建物もとてもきれいで必要なものが全て揃っています。駅からもすぐです。そして二泊で8,600円という何かの間違いではないかと思うくらいのお値段に感謝しかありません。ありがとうございます。
早めの夕食のため出掛け、海を見て戻ってきたことを実感します。まさか四年も空くとは。そしてこの四年間は自分にとってあまりにも。
パンを補充しようときむらやさんでかのこケーキ小豆入りを購入し、商店街を物色してbodaiさんでマグロカツ定食をいただきました。もう見た目からして普段お目にかかれないものですが、とても柔らかくて美味です。レタスのお味噌汁も、流石は和歌山の梅干しも、芋羊羹も、どれもおいしくてよかったです。応援していただけて気持ちも高まります。
エバグリーンとセイムスを巡り、牛乳、チーズ、ゆで卵等を仕入れて帰還。宿のお風呂にも入りばっちりです。湯上がりにプロテインバーと牛乳で贅沢します。
翌日の荷物を分け、ゼッケンにブログのPRを書き(やはりご覧いただけると嬉しい)、護摩木に思いを込めて準備完了。アミノ酸を飲み、歯を丁寧に磨いて就寝です。勿論耳栓も持参しています。20:40には消灯です。
レース当日
レース前(まさしく那智の滝へ)
目が覚めてガーミンさんを見ると11:30、“ついに101本目にして寝坊によるDNSを決めてしまったのか、誰か起こしてくれればいいのに”(無理や)と血の気の引く思いをしつつもそれは勘違いだったと分かり一安心(心臓に悪いので時計は24時間表示にしたいと思います)。そんなしょうもないこともあったりでやや寝不足感はありましたが、とにかく3:00に起きられた時は安堵しました。
何は無くとも朝食です。エイドで食べればよいので軽めでOKです。この後スタート前にプロテインバーを一本追加しました。装備を整え、一応トイレに行ってみるも期待した程の成果は得られず。しかし最後までトラブルはなかったので、やはり普段の、特に三日前くらいからの食事は注意して間違いはないと分かりました。
シューズは先週の加賀温泉郷マラソンで下ろしたばかりのズームフライ4です。2022年の100km以上はいずれもアシックスのエボライド(初代)でしたが、厚底カーボンで走ってみたいとかねてより思っていました。今日いよいよ確かめられるかと思うと楽しみです。
ウェアはいつも通り、白キャップ、アンダーアーマー青に日焼け対策の白アームスリーブ、タイツ、ミズノ360°マルチポケットパンツ、ザムストハイソックスにニューハレ踵です。先週ランライフさんで買ったサンシェードは長井集会所エイド行きの袋に入れます。エイドが充実していて手ぶらでもいいくらいですが、一応ジェルフラスコを一つ(経口補水液とアミノ酸を溶かしたもの)とアミノ酸を2つ携帯します。
長井集会所行きの袋にジェルとゼリーを1つずつ入れ、袋を小分けにして焦っていても取り出し易いようにします。大きな袋の中で散らばって探すのはストレスですので。フィニッシュ会場へは着替え、デオドラント類、洗濯ネット、洗剤(コインランドリーは自動投入だったため結果的には不要)、お風呂用のタオル(忘れても買えるけど家にタオルが増えるのは辛い)とプロテイン、プロテインバーを入れます。
バスはすぐ傍まで来て下さる上に3:51発でスムーズです。どの時間にどのバスに乗ればいいのかも事前にわざわざお知らせしていただけました。車内でスタートまでの流れも再確認して下さります。この大会の運営は本当にしっかりしています。
坂を上っているなと思ったら駐車場に到着。この、暗い中辺りを煌々と照らすライトがウルトラらしいです。ズームフライ4に履き替えて荷物を預け、那智の滝口へと移動します。四年前はこの時点で結構寒かったのですが、今日は空気が少し温く感じました。計測マットの上を通過して受付完了ですが、本当に読み取ってくれたのかなと疑心暗鬼にならないではありません。那智の滝へと向かう階段をゆっくり下り、いよいよだという気持ちが湧いてきます。なお、トイレはあまり数がありませんが、いざとなればスタート直後にかけこむのもありだと思いました。
護摩木を奉納し、一日、心からの笑顔で走るのだと改めて自らに言い聞かせます。那智の滝はあの日と同じ、闇の中でライトアップされた姿で、こちらを見下ろしています。自分自身のあの日と今と、その違いを思って、少し言い難い気持ちにもなります。
鳴り響く太鼓の音はそのまま身体を中の方からも揺さぶり、戦いへと向かう気持ちになります。自分は、100kmは遅めの有酸素ジョグの長い版だと思っているので力みはないのですが、やはりこの響きには心が動きます。大分明るくなり那智の滝がその姿を現したところで、いよいよ「神に見送られ仏に迎えられるウルトラマラソン」のスタートです。
レース
序盤~前半
序盤(7km上ってひたすら下り)
のっけからしょぼい話ですみませんが、何とガーミンさんのGPS検知がスタートに間に合わず、高度不明のままの旅立ちとなりました。折角のアップダウン祭なのに勿体ない……。
さはさりなん、とにかく進むしかありません。まずは階段を上りますが、ここは急ぎようがないのでのんびり行くしかありません。上り切るとまず左に少し下ってすぐに折り返しです。写真を撮ったものの光が足りず掲載できる代物ではありませんでした。
そこからはざっくり7km程上るのですが、どうしたことでしょう、前回と異なり全然周りより速く上っていけるのです。これはやはり身体が「く」の字に折れ曲がらないようにしつつ腕を使うことのご利益だと思います。感覚的には無理のない範囲で、キロ5分40秒くらいだったようです。
24分台で見晴台エイドに到着です。それなりに上りますが、全然元気なのでお立ち台に上って下界を眺めてきました。
その先は結構上りが続きますが、左手に見える朝焼けに心を奪われながら進んでいけます。ツツジが咲いているなと和む程の心の余裕もありました。「上りあと2km」といった親切な看板もあり、まあもうあと少しだなという目処も立ちます。最後の方はややきつめですが、ここも多少スピードが出なくても構わないので、リズムと姿勢だけは意識しました。この頃にはGPSも検知してくれてほっとします。ここで40分台です。
下りに切り替わってからはとにかく楽ですので、心拍数が130bpm程に下がることにほくそ笑みつつしっかり休みます。しかし前回もそうでしたが、序盤ということもあり何も考えなくてもキロ5を切ってくるのですね。時々下りでも粗い呼吸で飛ばしている方に抜かれましたが、キロ4近くで走っていたのではないかと思います。上り下りが急でピッチはやや上がりにくく、走っている間は大体180台中盤から後半くらいでした。
52分台で那智高原エイドに到着。確実にポカリをいただきました。エイドの後は急な下りになり、タイツの恩恵を感じるところです。絶対後々効いてきます。
コース図を何度見ても覚えられないのですが、今回は下りながら、どうやら平野バス停エイド(17番と19番)らしき場所を認識しました。その先の13.9km南平野三差路エイドではコーラや羊羹をいただきました。甘いものを積極的に取るスタイルです。ゆっくり写真を撮っていると“あらまあ”と喜んでいただけます。ここで1時間11分台です。
南平野の辺りも下りですが、結構路面が凸凹しているので、何度か足を取られそうになりました。後でも書きますが、特に弱っている最後の帰路は要注意です。この辺りも樹木の中を気持ちよく下っていきます。日陰が大半で快適です。所々に花も咲いていて、いいコースを走らせていただいているなと思う贅沢な時間です。新停車場線エイドも帰りで頼りになるエイドで、ここでは水分摂取に勤しみます。1時間32分台です。
前半(奥熊野ならではのご当地フードに感謝)
85kmの看板などを見ながら“帰りはここを上るのか”と思っているとようやく視界が開けます。そして80kmの方が、どうやら最初に上らされるようで、しんどそうに上ってくるところですれ違います。この辺りで下りでは少し分かりにくい地面の隆起があり、足が引っかかりました。“自分だけかな”と思ったのですが、すぐ後ろの方の足元からも“ガガッガッ”という音が聞こえてきたので、多分注意した方がよいのでしょう。
馬がいるなあと思う頃には21.7kmの井鹿会館です(1時間48分台)。ここではお豆腐がふるまわれますので確実にいただきます。この豆腐が何者なのか確かめるのを忘れました。ここから先は基本フラットなのですが、その気もないのに何故かキロ5を切ったりします。“これは後半辛いかも。しかし今は自然だから流れに任せるか”とそのまま進むことにします。
24.2kmのゴルフ練習場エイドでは今回もめはりずしを用意して下さっています(しかもシェフがその場で次々と握って下さる)ので、食べるしかありません。これでこそ和歌山です。塩味がとてもおいしく、歯触りも楽しめる逸品です。ここでは更に「カラマンダリン生しぼり」という力強い紹介文のあるみかんジュースもふるまわれますので、そちらもいただきました。これは何杯でもいけます。ここで2時間1分台です。
26.9km中里会館ではまさかのヤクルト1000が。全国的に品薄のはずがこんな所に出してしまって本当によいのでしょうか。ありがたくいただいて心の安らぎを得ます。甘夏?もふるまわれるので、ビタミン補給に成功し身体も大喜びです。2時間14分台です。
29.3km長井集会所エイドでは預けた荷物を受け取れます。とりあえず日焼け止めを塗り直し、アミノ酸粉をポケットにねじ込みます。更に素麺と豊富な果物もいただき、のんびりと過ごします。
確かこのエイドに到着した際には18番?だと教えていただいた(2時間27分台はイメージより速い)のですが、もたもたしているうちに結構な人数に置き去りにされました。ガーミンさんによるとこの1kmは7分26秒かかっているらしいです。まあその後もこちらの調子がよかったせいか何度も追い付き、エイドで抜かれてはまた追い付くということを繰り返したのですが。自分にはシリアスな気分で100kmも走り続けることはできません。だってまだ7時間くらいあるんですよ?
長井集会所を出るとすぐに橋があり、いよいよ山に向かうのだという気持ちになりますが、よく考えるまでもなくさっきまで山にいたわけですから、またすぐに山に戻るというのが当たっているのでしょう。後でここに戻って来る時はゴールへの希望を抱いて快走していたいものです。
31.5km出合橋でもコーラなどをいただきます。ノリのいいお二人が写真撮影に応じて下さりました。同級生ということで、こうして大会を支えていただけることに感謝です。今回がまた、関わって下さった皆様にとっても良い思い出になりますように。このエイドで2時間41分台。休んでいる割にはえらく速いです。
中盤
中盤①実はハードな色川茶畑
西中野川トンネルを走っていると演奏が聞こえてきます。『あの素晴らしい愛をもう一度』が刺さる人は多いでしょう。トンネルの先では大歓迎で、勿論みかんをいただきます。そして“隠しビールがあるんじゃないですか?”と小声で尋ねたりしてリピーターぶりを発揮します。2時間59分台で到着です。
ここでトイレに行こうとしたのですが、生憎全て埋まっていたので諦めました。そりゃ65kmのスタートで人がわんさかいるわけですから、浅はかでした。次に見つけたらピットインするぞと決めて再出発です。
この先の、いやずっと前からも続いている熊瀬川沿いの景色はとても好きで、流れも時間も止まった鏡のような水面や、木々の緑と光がなす静かな情景がとにかく素晴らしいのです。ウルトラならではの心のゆとりと、独りの時間がまた特別なものがあります。
人気のない道を進むのもよいのですが、時に寂しくもなるところで、「ボーッと走ってんじゃないョ」とNHKのあれに渇を入れられると共に打楽器で元気づけられます。この方々は最後の最後、ラスト200m程にも駆けつけて下さっていました。
少し下りもあったので帰りは要注意だなとか考えていると熊瀬川エイドに到着です(3時間21分台)。茶粥があると言われましたのでスルーするはずもなくいただきます。紀州口熊野マラソンもそうでしたが、やはり和歌山はこうでなくては。梅干しもいただき、更になかなか名前を覚えられない山菜(イタドリ。帰りにもう一度聞いてようやく記憶)の食感と味付けにも舌鼓を打ちます。大きなワンちゃんも応援して下さりました。かなり人に慣れている様子で、怯えることもなく近づいて来てくれましたし、写真も望むところだという感じでした。
ここではトイレ休憩も入れますのでキロ8分以上かかりました。少し坂を下った後はしばらく長い上りが続きます。最初の方はともかく、途中でグッと急になったなと思ってからもまだしばらく許してもらえません。
そろそろ止まってしまうのではと思う絶妙のタイミングで42kmの久保宅エイドです(3時間38分台)。こちらでは色川茶がいただけるのですが、正にすぐ目の前の茶畑で収穫したもので、そして正にそのお茶の葉を育てて摘まれたおばさまがおられるという、産地直送どころか“ここが産地”という最高の環境でおいしくいただき、直も直にお礼も言えました。地方の食をこうして楽しめるのも素晴らしいです。
再度走り始めるも、茶畑とは厳しいものなので、なかなか終わりがやって来ません。そしてこれもまた茶畑の宿命、日当たりも良好です。段々きつくなってきますが、前半で歩くつもりは毛頭ないので、多少減速しようが上半身の力で押し切ります。順位を上げるチャンスでもあります(しかし直後のエイドで誰よりも長居するのであっという間に順位を下げます)。途中GPSで42.2km辺りの写真を撮っておきましたが、3時間46分49秒はともかく心拍数172というのが素敵です。
心拍数の上がりっぷりを気にしつつ田垣内三差路エイドに着くと、冷えたおしぼりを渡していただけてすっきりします。上ってきてよかったです(3時間52分台)。ここでも茶粥を勧められ、“いえ今さっき下でいただいたばかりですので”と言えるはずもなく、お漬物と共にいただきます。このエイドでは最早隠れてもいないビール(小さな缶)が見え、尋ねると飲んでいくように頻りに勧められましたが、体力に自信がないので涙を飲んで見送りました。更に“記念写真を撮るから並んで、ゼッケン見えるように”とかそういう声掛けにも応じて長閑な時間を過ごします。
この先の下りは気が楽というのもあるのですが、本当に美しい眺めが広がっていて、二度目の今回も印象深かったです。下っていくと、小学生に“マラソンの人、頑張れ!”と声をかけてもらったりして、“君達はこんなことばかりしている大人にならなくていいけど、自分の望んだ人生を歩んで下さいね”と未来ある彼らのことを思います。
口色川三差路では梅ゼリーがふるまわれ、こちらもご当地メニューですからどう考えても見逃せません。大喜びでいただき、どんどんシリアスランナーに抜かれていきます。到着時点で4時間12分台です。
もう少し下ると左手に川が見えるようになり、何となくキャンプ場の気配を感じるようになります。ここで50kmの看板があり、GPSより1km以上短いものの、4時間23分台というタイムにこれは結構な記録が出るのではという煩悩が湧いてきます。終盤の坂を考慮しても9時間10分くらいでいけるのではと。
中盤②坂の上の絶景とすれ違いながらのエール
円満地公園エイドでは楽しみにしていた新メニュー、鹿肉(焼き肉)です。ご親切にも焼き立てのものを持ってきていただけました。あまり脂っこくなく、ランナー的にはとても食べ易いと思います。塩がまたよく合います。ジビエ万歳。色川茶もおいしいですね。エイドでいただく度に褒めています。更に楽しみにしていた梅ジュースまでいただき完璧です。このエイドでもゆっくりしていたので、皆様気さくに写真撮影に応じて下さったり、山羊もいると教えていただいたりで何かと楽しかったです。
この先は少し行くと上りと思っておいて間違いありません。両サイドにデカい岩がそびえる場所を数回クリアして、一際高い壁が見えたらようやく下りになります。
これでそのまま許してもらえるのかなと思ったら今度は例の「つかの間の富士急ハイランド、ナガシマスパーランドへ」の坂です。“ウッ”と思うところですし、折よく車が来てくれたお陰で迫力のある写真が撮れたのですが、ここで術中にかかってはなりません。少し耐えれば済む話ですので、腕を使って脚を残すことに注力します。この辺りから、腕はより真っ直ぐ後ろに振るようにしたところ、相対的に楽に進んだように思います。
減速しつつも上り、前回は私設エイドがあった地点にその姿が見えないことに一抹の寂しさを感じつつも、すぐ上から聞こえてくる応援の声を励みに上ります。この辺りで折り返して来たトップの選手とすれ違い、すごい人がいるものだと毎度ながら感心します。
小阪下三差路エイドには4時間45分台で到着し、みかん、苺をいただきます。果物にはどれだけ助けられたことか。ここだけではないのですが、わざわざゼッケンナンバーから名前を探して下さり、一言コメントも読んで下さるので、“二回目で食い意地が張っている”ということがバレてしまうのですが、それも話の種になるので、やはり一言コメントはいいものだなと思いました。氷は掌に握り、血液の温度上昇を抑えます。
この先の上りは前回もそこまで急な印象はなかったので、あまり怯むことなく腕振りで進みます。別にキロ5とかである必要はないので気楽なものです。折り返してくる上位選手に声をかけていただけると嬉しかったので、自分も後でお返ししようと思います。
坂の途中、見晴らしのいい場所には平野バス停エイドがあります(5時間1分台)。ここで今回もブルーベリーヨーグルトとパウンドケーキをいただきます。好きなものを食べると元気が出ます。当たり前のようなことですが、ウルトラでは大事です。“二回目やね”“四年前も楽しくて最高でした”といったやり取りもあり、また走り始めます。
この先2.5kmで折り返すのですが、途中棚田が美しいエリアがあったりで、上ってきた甲斐があったなと感じること間違いなしです。コースは、緑の中にいる時間も、視界が大きく開けて遠くまで見渡せる時間も、いずれも心がハッとするようなもので、様々な形で絶景に出会えるといってよいでしょう。
折り返し地点ではまたしてもコーラをいただき、コーンを丁寧に回って水を被ります。多少暑さは感じるものの、日陰が体感的には7割以上で、風もあったのでまだ辛いわけではありません。それでも精神面を考えて、積極的に利用しています。注意すべきはただ一点、シューズに水がかからないように思い切り脚を開くことです。ここで5時間15台分と前回より9分早く、余程崩れない限りはPBが出そうです。
折り返してからはすれ違うランナーと声を掛け合いながら、“お互い見ず知らずなのにこうして笑顔で通じ合えるなんて、なかなか日常ではない素敵な時間だな”と考えていました。普段は何故あんなにも視線を合わせられず、人と人との距離を縮められないのでしょうか。
平野バス停(5時間28分台)では行きと違うものをとバナナをいただきました。ここは「ありがたや~」のショートカットを選択できる運命の分岐点ということもあり、表示も面白いです。自分の足でゴールできるようにというこのコースを設計された方は天才だと思います。
下りながら、「もうすぐエイドですよ」「ナイスランです」と励ましながら笑顔で進みます。皆様ももう少しすればこの目の前の素晴らしい緑と空に出会えるのですから、頑張って下さい。
戻って来た小阪下三差路(5時間42分台)では被り水の後、苺をいただき、氷も握りしめて再出発です。エイドで楽しく談笑している方も多く、ウルトラのよさをまた感じます。
しかしこの先の下りでは疲労の蓄積を感じます。何せ下りなのにキロ5分20秒台辺りを見るようになりましたから。“下りなのに”腿裏に響く、“下りなのに”ふくらはぎに来るといった、自分の常識の範囲内には収まらない負荷がかかっていて、下る力が削られてきたことを認識します。それでもフォーム的には反り腰の方がへっぴり腰よりマシなので、ひたすらこれまでの自然な動きを心がけます。タイツもずり落ちないように時々引き上げます。
下っていると先ほどのお犬様と飼い主の女性がおられたため、お礼を言い、橋を渡って熊瀬川エイドに戻ってきました。食欲にやや陰りが見られたため、ここは無理せず羊羹をいただき、水分摂取に努めます。今思えばチョコパイくらいは食べておくべきでした。ここで5時間55分台です。
後半~終盤
後半(暑さ対策と心休まるエイド)
この先はいよいよ帰り道です。緑が煌めく熊瀬川沿いを次のエイド目指して進む旅です。GPSで66.6km地点での撮影に成功しました。1.2kmくらい距離表示看板とはずれていますが。
70kmの看板を見ると西中野川トンネルエイドです。流石に日差しが強くなって暑さを感じたため、ここからサンシェード(先週加賀温泉郷マラソンで買った)を投入します。被り水でバッチリ濡らし、その先はキャップの前後を日差しに合わせて変える必要もなくなり、快適でした。更にこの頃から風が強くなりキャップが二度吹き飛ばされましたが、サンシェードは頭に密着しているので無事でした。黒部名水マラソンでランライフさんにお礼を言いに行こうと思いました。
このエイドでもみかんをいただき、“この大会は応援もエイドもすごいんです”と熱っぽく語り、楽しくやり取りを重ねてから出発です。この区間で二人に抜かれましたし、平地でもキロ5分20秒くらいまで落ち、エイド休憩が入ると更に遅くなるのですが、ウルトラのコツはフル以上に“絶対に無理しない”ことだと思っています(観光もしたいので潰れるわけにはいかない)ので、苦しいペースに上げないこと、応援を受けて心に潤いを与えることを継続します。
トンネルを抜けて緑に包まれながらただ静かに進みます。途中で応援メッセージを見て、戻ってきたと実感します。出合橋エイドでは往路より応援の方が更に増えており、前回同様やたら賑やかに盛り上げて下さります。折角ですのでパンをいただきます。到着時で6時間40分台です。
少し行くと行きに通ったあの橋が見えてきて、ここを過ぎれば長井集会所エイドはすぐそこです。坂の上には通過確認のスタッフさんが待っていて下さります。暑くなってきたのにありがとうございます。
76.1kmの長井集会所エイドには6時間53分台で到着。タイムを気にする割には素麺をおいしくいただき、つゆの塩気にも回復します(キロ7分20秒かかっていますが、本当にタイムを気にしていたのでしょうか)。預けた荷物からはアミノショットとハニーアクションジェルを取り出してポケットにねじ込み、被り水も済ませてにこやかに走り出します。ハニーアクションは確か割と早い段階で気分転換に飲んだと思います。
もうこの先はコースもよく覚えていますので、あの橋を渡ればヤクルト1000をいただいた78.5kmの中里会館エイドだと分かります。苺と甘夏をいただき、名前で応援されまくりながらまた走り出します。到着時で7時間8分台です。
この辺りでも少しずつ前のランナーさんに追いついたりしますが、張り合う気もなく成り行き任せです。向かい風がやや強めの時間が続きましたが、身体を冷やしてくれるので助かりました。順風になれば身体が軽いので、それはそれで助かります。
81.2kmゴルフ練習場横では丁度順風で軽快に走れました。そしておいしいみかんジュースをおかわりしてしまいました。ここに来てこの配置は嬉しい限りです。めはりをいただく自信はややなかったのですが、行きと違うものを食べねばとトマトをありがたくいただきました。到着時で7時間24分です。
終盤(最後の坂を上り切れ)
とにかくスピードも落ちて来てこのままではまずいのではという気もしましたが、鯉のぼりの応援もあり、83.7km井鹿会館エイドには明るい表情で到着します(7時間39分台)。豆腐は行きにいただいたからいいかとちょっと弱気にコーラ、ポカリに絞ります。星型坊主頭の少年がいて、“き、君は四年前の!?”と聞きたかったのですが、勇気が出なくて惜しいことをしました。
少し行くといよいよ最後の上りに入ります。「上りあと7km」という嬉しくないお知らせがランナーの心を挫きにかかります。ここで自分が考えたことは、“前回は歩きも結構入れたので、走り倒せば絶対にPBが出る”でした。大人気ありませんがやってみたいと思いました。同時にまた、できそうだと思いました。腕振りをフル活用して行ける所まで行くのみですが、ここで無理して最後つったら目も当てられませんので、キロ7でも心拍数が上がらなければ成功ということにします。普段人目を憚らずにやっているスロージョグの感覚が役立ちました。
実際走ってみると、決して走れない程の坂ではなく、一つめの新停車場線エイドまではやや傾斜がきついためキロ7分弱、次の新停車場頂上②までは緩やか(生駒ボルダーくらい)になりキロ6分ちょい、そこから1.9km先の南平野三差路エイドまでは最後の方がかなりきつい(キロ7分20秒以上かかっています)がここさえ粘ればという具合です。間に三人くらいは抜いたと思いますが、基本一人で目標物もなく、歩いたかどうかを知るのも自分のみです。それでもただただ歩数を積み上げるばかりです。一体自分は何故こんなことをやっているのかと思いますが、自分自身に何かを見せたいという気持ち以上に幸せの鍵は無い気もします。
エイドが近づくと、男性スタッフさんが「エイドもうすぐです!飲み物も冷えてます!」と励まして下さるので、満面の笑みで応えます。こんな所にエイドを設置して準備してランナーを迎え入れるのがどれ程大変なことか。感謝しかありません。被り水でまた復活します。
女子トップの方を90km手前で(久々に)捕らえ、何とかこの上りの記憶を残そうと頑張って写真も撮ります。段々終わりが近づいて来るのは山の雰囲気からも分かりますが、もうGPSも300m置きくらいに見て自らを鼓舞します。そしてようやく三つ目のエイド(91.5km南平野三差路)に到着し、後は下りだと安堵します。各エイドの到着は、8時間1分(上り突入から18分)、8時間18分、8時間30分でした。
ここでは水分だけでいいかなと思ったものの、「めはりもあるよ!」「本当はもっとでっかいけど、ランナーが食べ易いサイズにしたよ!」とわざわざラップを捲ってまで勧めて下さったので、不安な気持ちはおくびにも出さずクワッと?と笑ってありがたくいただきました。終盤で固形物はきつそうにも思いますが、ここで咀嚼することと塩分でまた元気が出ましたし、エイドの皆様の向日葵のような笑顔と温かさに励まされましたので、食べて本当によかったです。
もう残りはほぼ下りですので、手を振って元気にエイドを発ちます。しかしもう下る力が残っておらず、期待した程スピードが出ません。それでも確か前回もこんな感じだったからと焦らず、前に何人かいる(ショートカットの方かもしれない)ランナーとの距離が近づいていることを認識しつつ下ります。ここは自動車の通行量が多くてご迷惑をおかけしているなと思いましたが、車から温かく応援して下さる方も多く、あの日と同じ優しさに感謝します。
残りのエイドもあと二つ、8時間47分台で辿り着いた井関手前エイドでもしっかり給水し、井関三差路の表示が見え応援の声が聞こえてくると、いよいよ終わりなのだと心も震えます。
ラスト97.2kmの井関三差路エイドでは、今回も、「今日一日ありがとうございました」とドリンクをいただき、丁度同じタイミングでおられた11回完走のいだ天さんに敬意を抱きます。ここで9時間2分台ですから、どうやらPBは固そうです。
残りは歩道を行き、ラスト2kmからは、詳しくは書けませんが、平成から令和に移ったこの四年間にあったこと、できたこと、できなかったこととその後悔が駆け巡りました。でも、だからこそこの大会はこのタイミングで出場して、しっかり走り切ることが自分には必要だったのです。「神に見送られ仏に迎えられる」、自分も遅かれ早かれ行く道なのです。
最後はピッチも上がり加速して、残り500m程で誘導していただきお礼を言いつつ道路を横断、フィニッシュ地点前の応援に笑顔で応え、お花を受け取ります。いつもはガッツポーズや腕を広げて喜びを外に出すことが多いのですが、今日は胸にお花を抱えるように、心の奥の方に向けて締めくくりました。ありがとう。
アフター
レース後
会場(素晴らしきおもてなし)
まずは樹魂の完走木札をいただき、冷えたおしぼりで顔を拭います。この樹魂という言葉にこめたおのずから成る生命が意味するところが伝わってきます。そしてチップを返して即完走証が発行される流れのよさに感心するとともにああそうだったなと過去を思い出します。PBを4分以上更新したことに満足すると共にえらく順位がよかったことを意外に感じます。多分参加者数を減らした分だと思いますが。
トイレが一度だけの割に水分は沢山摂ったので、早めに少し離れた会館のトイレに行っておき、充実のふるまい会場へと向かいます。
ここはドリンクは勿論うどん、ぜんざい、アイス、プリンにヨーグルト、ゼリーなどが好きなだけいただけるという楽園です。そしてこのハードなウルトラを走った後ですので、世界一うまい発泡酒が飲めます。更に福助堂さんの和菓子までいただけるという。
荷物もすぐに受け取れて大変ありがたかったです。回復のためにアミノ酸粉、プロテイン、プロテインバー二本を摂取するのもいつも通りです。
丹敷の湯も無料で入れますので、混む前に向かいます。15時過ぎなら余裕を持って入れました。しっかりお湯に浸かって身体をほぐし、とりあえず怪我は無さそうだと確認します。水風呂はないのでシャワーで脚を冷やしました。なお、着替えは事前にまとめておいたので、脱衣場でもスムーズでした。
会場に戻り、フィニッシュするランナーを見届けたり、満足感に浸っている沢山の方の様子にいい時間が訪れたことを感謝したりしてから、送迎タクシーで紀伊勝浦駅まで送り届けていただきました。
気になるズームフライ4ですが、かなり身体を守ってくれたものの、大破とはいかないまでも相当のダメージを受けていました。急な下りや路面が悪い時もあったし、持ってあとフル一本くらいかな、飛騨高山ウルトラはどうしようかなというところです。
那智勝浦駅(マグロとご褒美スイーツ)
まずはコインランドリー(400円。乾燥機100円)からスタートです。17時過ぎには乾燥まで終えて、こちらも混む前にとマグロを求めて山賀さんへ。おすすめのミックス丼は、何と本場の新鮮なマグロが溢れているではありませんか。よく噛み締めて身も心も幸せな一時を過ごします。しかもランナー応援ということで割引まで。こんなによくしていただけるとは。
まだ18時の閉店前ということで、福助堂さんの生クリーム滝一番さくらをいただきます。これは幸せなお味です。マグロもスイーツも贅沢が過ぎます。
その後翌日の朝食を調達し、宿のお風呂にも入り、道具の片付けも終え、観光予定を考えつつ22時に消灯です。一日お疲れ様でした。
翌日
漁港と弁天島
夜中はトイレに起きたくらいで“脚が痛くて眠れない”とか“興奮して目が冴える”といったこともなく、まずまず眠れました。しかし安静時心拍数が48bpmと高めでしたし、近年まれに見る強度の筋肉痛もあり、100kmはこんなもんだったかなと思いました。下りがきつかったため腿前が強く、上りのせいかふくらはぎの上の方もいつもより張っています。怪我はなさそう(火曜には戻った)ですが、左腸脛靭帯付近はフルマラソンではあまり経験しない感覚がありました。
6時にはきしむ脚の様子を見ながらスロージョグ開始です。72時間は絶対に速く走らないので、ペースは気にせず、終わってみればキロ8分51秒でした。観光予定を考えながら港の方へ行くと案内看板があったので、前回と同様弁天島を目指すことにします。そういえばあの日もここを歩いて波の音に圧倒されたなと思い出しながら、遊歩道を歩きます。
弁天島は干潮時なら歩いて渡れるそうですが、流石にこの時間では無理でした。天気が良ければ遠くに那智の滝が見えるはずですが、こちらも判別不可でした。それでも、ここに立つことができてよかったです。
しばらく周囲をうろうろして、海がどうつながっているのか新たな発見をして(方向音痴)お宿に戻ります。朝食は普段と大体同じですが、完走賞の福助堂さんの滝一番もいただきました。乙なブッセです。
那智の滝へ
二回来たことがあるといってもスタートは5時、しかもすぐに背を向けて去ってしまうので満足に那智の滝を拝めたとは言い難いところがあります。前回は紀の松島を巡り太地くじら博物館に行きましたので、今回は満を持して熊野詣を果たすことにします。丁度8:25紀伊勝浦発のバスに乗れそうでしたので、宿を早々にチェックアウトして繰り出します。
さてバスのチケットを買おうかなと思って係の方にどのチケットを買うのがよさそうか尋ねていたところ、隣にいた女性が“急に予定が変わって使えなくなったから”とご自身のフリーパスを譲って下さりました。“いやいや千円お支払いしますから”と申し出たものの固辞されたので、気持ちよくお礼を言っていただきました。こんな親切な方に巡り合えるとは感謝ですし、いつか誰かにお返ししなくてはと思いました。
バスはあっさり大門坂に着き、ここで杖を借りられる趣向に感心します。これは弱ったランナーにはありがたい限りです。もし辛くなったらこの杖に縋ろうと一本お借りして登り口へと向かいます。ちなみにこの杖は上でお返しできる(回収していただける)ので、わざわざ下りてくる必要がないのが助かります。
大門坂は杉並木の中を全長約640m、高低差約100mの石畳が続き、「熊野古道」と聞いて多くの方が思い浮かべるであろうあの道です。関所や霊場への入口といわれた振ヶ瀬橋を渡り、樹齢約800年の夫婦杉に迎えられ、緑と水の音の中を上っていきます。杖は竹のものを選んだので、ついてみると音がまた風情を増してくれました。
筋肉痛はどんなものかと思ったのですが、使う身体の部分が異なるため、意外と問題なく上れました。怪我をしていたりすると駄目ですが、バネは使わず筋肉だけで上るので大分別の動作だと実感できました。足下がよく整備されていたというのもあります(またタイムの話かと思うかもですが、夫婦杉から15分くらいの道のりです)。
大門坂が終わると、“ここに出るのか”という駐車場横に出ます。昨日来たばかりのあの駐車場です。そこから参道は更に石段が続きます(473段あるらしいです)が、あまり疑問もなく上っていき、割とあっさり那智大社に到着します。遠くまで見渡せる景色に、こんなに上って来たのかと少し驚きます。
まずは昨日の無事を感謝し、これからのことを願います。そして宝物殿にも入館し、宝剣や鏡、通過、室町時代の甕や那智の火祭りの扇神輿など貴重な資料を見ていたのですが、係の方がこれまた大変ご親切な方で、那智参詣曼荼羅(比丘尼が布教のため持ち歩いた)の解説や参拝順路から帰りのバスの時間まで教えて下さりました。“昨日100kmのスタートがここでして”という話で喜んでいただけたりで、ここでもまたいい思い出ができました。
那智山青願渡寺にもお参りし、ここぞという三重塔と那智の滝の撮影スポットから滝を眺め、更に三重塔からしか見えない滝つぼを見届けて、いざ滝口へと向かいます。昨日スタートしたあの場所へ。
石段を下り、改めて護摩木を奉納、下から昨日とはまた違う姿を眺めます。拝所舞台に入ると更に近くでお参りでき、生まれてきたことの感謝が胸に湧きます。
11:04発のバスで紀伊勝浦に戻る途中、井関三差路を見て、昨日のラストを思い出します。
最後まで食を堪能
勝浦漁港にぎわい市場では今回も身がぎっしりで甘辛だれと香ばしさが際立つマグロのかま焼きと日常ではそうそう見ない鯨の竜田揚げをいただきます。たんぱく質で身体がどんどん回復していきます。
デザートに気になっていたan寿anさんの看板商品、ロールケーキをいただきました。スポンジもクリームも心地よく舌の上に広がります。
お土産を買った駅前の林土産物店さんも、小倉家さんもすごく優しく接して下さり、また来たいと思いました。走り終わった後も笑顔でお礼を言ったり話ができたりするのがマラソン大会の素敵なところです。
パンダくろしおに乗り、海を眺めながら大阪へと帰ります。締めは福助堂さんの最中で。四年ぶりの奥熊野いだ天ウルトラマラソンもやはり最高でした。本当にありがとうございました。
最後に
こうして振り返りながら、コースもエイドも応援も、テーマも何もかもが素晴らしくて、出る度に一生忘れられない思い出が生まれていく大会だと改めて噛みしめていました。走るだけではなく、神に見送られて生を受け、束の間の人生で輝き、静かに仏に迎えられる、そんな人生の理が詰まっているように思います。
大会が掲げる『中規模クラスでの全国一の手作り大会』の目標は確実に達成していると思います。第30回大会を目指して頑張っていきましょう。また一緒に喜べる日が巡って来ることを心から楽しみにしています。
今回大会にご協力いただいた那智勝浦の皆様、本当にありがとうございました。
長い記事にもかかわらず、ここまでご覧いただきありがとうございます。