「この山には過酷に挑む価値がある」、この言葉が全てを物語っています。過酷に挑める真剣な大会だからこそ、自分の中に渦巻いている本当の願いが、挑んでいるその瞬間だけであっても確かな形になるのです。今年は個人的に参加しにくい環境になったのですが、第77回という数字と、抗いがたい魅力に我慢できず、エントリーを決めました。私に来年があるかなんてわかりませんし、必ず訪れる最期の瞬間には山頂からの空を思い出したいので、行ける時に行くしかありません。
fujimountainrace.city.fujiyoshida.yamanashi.jp
今年は昨年以上の練習ができていたので、完走はできる自信がありました。自己ベストも出せるはずという手応えはありましたが、昨年より12分以上縮めて4時間を切れる(3:58:10)とは、想像以上でした。この日を目指して準備を重ね、レース中も冷静かつ強気に上り続けて結果に結びついたこと、“全力を出すべき時に全力を出せた”ことに満足しています。
毎年心から思うことですが、本当に富士吉田の皆様と登山客の皆様の応援・ご協力はありがたい限りです。街中の歓迎ぶりから沿道応援、トレイルでも要所要所での声掛け、水も果物も沢山の充実のエイド、道を譲って下さるだけでなく笑顔で応援して下さるなど、絶対に独りでは上り切れない富士山にも、勇気づけられながら無事に上ることができます。幸せなことです。
完走後に飲んだ今日のビールは最高にうまかったです。前日からレース後にかけ、木村屋さん、いづみやさん、やぶさんといった富士吉田のお気に入りのお店で美味しいものを沢山食べられましたし、富士吉田市役所のプレートなども含めて、街全体の歴史と思いが感じられる時間でした。
翌日も解放感と共に河口湖観光を楽しめて、こちらでも行く先々で完走をお祝いしていただけました。お陰様で今回の富士登山競走もまた、最高の思い出の一つとなりました。応援していただいた皆様に、心よりお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
昨年全力で挑んだ経験が今年につながっています。毎年必死ですが、生きた証は心に残ります。
初の山頂コース完走は、初サブスリーと同じく誰にとってもおそらく一生忘れられない経験だと思います。勿論私にとっても。
今年出場したレースで最も富士登山競走に効いたものは、会津磐梯山ウルトラマラソン100kmです。暑い終盤でも黙って上り続ける経験が生きました。
続きのページには、年間トレイル0本(ついでに半年でフル12本、100km2本などをこなしつつ)、試走なしでも4時間を切れる練習の詳細や、レース中に気を付けたことやラップ、更には観光、移動のことなどについて事細かに書いています。大長編ですので、一部だけでもご覧いただけますと幸いです。どなたかの参考になったり、レースで応援して下さった方に思いが伝わったりすると本当に嬉しいです。
コメント、スター、↓のバナークリックなど、何でもよいので反応をいただけますと、“幾らかでも肯定的に捉えて下さる方がいるのか”と嬉しくなり、また坂道を上り始めます。次回予告は、“今年こそ 涼しくなるのか 北海道”です。
富士登山競走に向けた特訓・準備
方針
今年も概ね昨年と同じ内容ですが、準備期間を長めに取り、質・量も強化しました。一番興味のあるところだと思いますので、詳しく書きます。よく言われることですが、富士登山競走に挑むランナーは、鍛え方が違います。
鏑木毅さんは、『鏑木メソッド』の中でトレイルの練習について、パズルのピースのように練習を組み合わせると説明しておられます。その説明を読んだ時は“まあマラソンでもそうだよな”くらいにしか思わなかったのですが、今回真剣に練習する中で、確かにその通りだと実感し、全身を強くしていくための組み合わせを試行錯誤する日々でした。
フルマラソンであれば、言ってしまえば延々と走ることでかなりの部分必要な走力が養われると思います。しかし富士登山競走の場合は、長時間のロードの上りで止まらず走り続けるための動きと距離感・暑さ耐性、大きな段差を上るための筋力とバランス感覚、ただひたすら上を見て歩き続ける力と諦めない心、それらを万遍なく強化する必要があります。時間がいくらあっても足りないとまでは言いませんが、限られた時間の中で取捨選択を繰り返す日々です。
昨年も書きましたが、強度を上げ過ぎずに継続することが大切です。別大より後の練習やレースの中で、タイムトライアルのように力を出し切ることは一度もしませんでした。とにかく何の疑問もなく上り続けるのみです。ドラマも友情も称賛も必要ありません。坂と階段とトレッドミルにただ独り向き合うだけです。
そしてこれも去年も書いたことですが、強度を上げ過ぎないがゆえに連日続けることができ、夜に上り練習をやらなかった日は(朝60分程度平地を走っていても)罪悪感に苛まれます。純粋に二部練が増え、夕食も22時を過ぎ、洗濯・乾燥まで終えて眠れるのは1時ということもあり、何かとしんどいです。
富士登山競走は異種格闘技戦という表現もありますが、ルール的に打撃主体のストライカーよりグラウンドの攻防に秀でたグラップラーが強い、つまりロードよりトレイルの力が決定的だと思います。ですので、この大会で活躍したいのであれば、絶対にトレイルの経験を積んだ方がよいです。“ここは走るべきなのか歩くべきなのか”といった判断が適切にできるようになりますし、時間と距離・高度に対する感覚も身につきます。私は年間のトレイルが0本ですので、こんな準備で立ち向かうしかないのですが、本当はよくないと思っています。
なお、毎年書いていますが、みやすのんき先生の『サブスリー漫画家 激走 山へ!』は必読です。日々の練習から完走ギリギリのタイムスケジュール、コースの詳細まで解説されていて、これなくして私の完走はありえません。
スケジューリング
昨年はGW明けからトレッドミルを始めましたが、今年は心の余裕を持って本番を迎えたいと考えたことから、4月にトレッドミルの歩きをスタートしました。GW期間中に金沢での上り練習も始めました。
大会も積極的に入れました。4月から6月の3か月間に、フル4本、100km2本、ハーフ1本、10km2本を走っています。当然、どれもタイムを狙って必死に走るわけではなく、目的は主に"走る能力を落とし過ぎない+α"です。距離別に書くと
・10km:閾値走
・ハーフ:フル、100kmからのリカバリー具合の確認
・フル:有酸素ジョグ40km+残り9分以内
・100km:有酸素ジョグ。最後まで歩かず、上り耐性も強化する。
といったところです。
トレッドミル(4月初旬以降7/22(月)まで20回)
私のような平地の人にとっては、富士登山競走にしか役立つことのない「特訓」です。クロストレーニングだと言い聞かせたりもしましたが、トレッドミルで歩いて速くなったという記事も見かけませんでしたし、まあ世の中そんなもんだろうと思います。しかしこれは間違いなく上りの早歩き力を強化してくれます。
ベースは15%,6km/h,60分の歩きで、調子がよければ途中からビルドアップを入れました。給水はなしです。汗はかきますが、水浸しになるようなレベルではなく、おそらく世間的にも許容範囲です。時間がない日もありましたが、“50分でもいいから”と、とにかく行ける時には積極的にジムに行きました。
ゼーハーしながら猛然と走り続ける必要はないと思います。UTMB三位の鏑木毅さんであれば傾斜15%で8km/hを2時間といった離れ業も可能ですが、大抵の人は鏑木さんではありません。
私は7km/hで40分走るところまでしかやりませんでしたが、本番では4時間を切れました。多分これくらいで十分なのだろうと思います。いきなり長い時間に挑むと挫折して凹むので、30分、35分、40分と段階的に余裕を確かめつつ負荷を上げました。
7km/h・15%の動きは、仙骨を前に出す意識をロードのようには維持できず、回転は遅めになり、走ってはいるものの歩きの感覚も何割か入るイメージです。昨年は178spmと走りに近い感覚でしたが、今年は171spmで筋肉頼みの動きになっていました。まあこのくらいの時間・速さならどちらでも対応できるということだと自信になります。今年は給水なしでした。
実感できる効果は次の通りです。
・歩きのための筋力強化、身体の使い方
・一定のリズムで歩く意識づけ
・退屈を退屈と思わない鈍感力の強化
・発汗への慣れ
シューズは昨年からエボライドスピードを使い続けています。冬は1%,10km/h,60分をやったりもしましたが、トレッドミルだと全然減らないのでまだまだ元気です。
職場の階段上り(6月末以降7/21(日)までで7回)
中能登トレジャートレイルのセミナーで鏑木毅さんが、“職場に階段がある人はラッキーです!”と目を輝かせながら話しておられ、その時はそういうものかと思っていましたが、今や欠かせない練習になりました。今年は特に、岩場でその効果を実感しました。
富士登山競走は上りのみですし、下りは歩きでもかなり疲れてしまいますので、非常階段を上ってエレベーターで下ります。終業後にトイレで着替えてスタートです。
目的は身体の使い方の確認と筋トレですので、一段飛ばしで歩きます。本番で大きな段差を走れる局面はほぼ無いので、とにかく飽きずに一歩ずつそれなりの力で上り続けるコツを掴み、動きに慣れれば成功です。山頂コース大会記録の2:27:41を保持する宮原徹さんなら走って上り下りを繰り返しても練習が成立するのでしょうが、大抵の人は宮原さんではありません。
24階×5本から始めて2回目にして×6本で28分を切って昨年と同等の力があると分かったので、ここからは無理をしないよう、淡々と上ることに徹しました。1本5分くらいと抑えても、最後は速くなり上っている時間は30分もかからないので、そんなに辛い練習ではありません。最後の練習の1本では4:07で上れました。合計で24回×39本、936階を上ったようです。
腰を立てて前に出す意識を持つと身体が持ち上がり易く、かつリズムもよくなりました。呼吸も何パターンか試しましたが、やはり筋トレと同じようにステップに合わせるものに落ち着きました。最後の最後に気づいたのですが、腸腰筋を使って脚をスッと速く引き上げるよう意識すると、大分スピードが変わります。勿論後ろ足で蹴る動作は入れません。
夜でもエレベーターでそれなりに人に会いますが、知らない方は“なんだこいつは”と思いつつスマホを見ているだけですし、知っている方は応援して下さるしで、結局気にするほどのことはないと割り切れました。
主な効果は次の通りです。
・片脚で全身を持ち上げるための筋力強化
・段差を上るために必要な動作の習得
・延々と上り続けるメンタリティの涵養
シューズはこだわらず、通勤時に履いているナイキフリーにしました。
ロードの上り@金沢(5月半ば以降7/15(月祝)までで9回)
大会の合間を縫って月に二回くらいは帰り、野田山(→1.2km↑100m程)をメインに上りの練習を入れました。
今年は昨年に比べて上りのジョグやウルトラでも速く楽に走れていたことから、この上り練習でも昨年程は抑え過ぎないようにしました。雨の日の6本目は10秒くらいしか速くなりませんでしたが、そこに至るまでの5本は平均30秒くらいは速くなっていました。腕もそこまで大きく振らないようになりました。大きく振って身体を浮かせることもよいのですが、全身の疲労が強くなるので、ここ一番に限ることでよいと思います。
野田山は土日に6本ずつが基本メニューです。新盆の三連休は車が増えるので、代わりに大乗寺丘陵公園の坂(→1.2km↑80m程)を使ったり、卯辰山(→1.4km↑100m程)6本にしたりと変化もつけました。気前よく熱中症警戒アラートが発令され続けた昨年とは異なり、曇りと雨で涼しい三連休でしたので、かなり意味のある練習ができました。
平地に慣れているランナーは、上りの先が見えないと、どこまで頑張ればよいのか分からず、とても疲れてしまったり、歩いてしまったりします(私も5合目コース出場時に歩きました)。これは身体で慣れるしかないので、つづら折りが続くコースの経験を積むことが大事です。ウルトラも活用するとよいと思います。冒頭にも書きましたが、今年は特に会津磐梯山ウルトラが素晴らしい鍛錬の場になりました。
最後の方は上りでも(ゼーハーならないレベルで)スパートを入れていました。フルマラソンのスパートより腿裏から臀部への力のかかり方が大きいのが分かります。平地のスパートに活かせるのかはこれから確認していきたいと思います。
効果は概ね次のものになります。
・上り坂でどこに負荷がかかり、どう辛くなるのかの確認
・暑さ耐性の強化
・先が見えないつづら折りでも上り続ける精神面の強化
シューズはエンペラー2、エンペラージャパン3といった薄底が多く、たまにハイパースピード2も使用しました。
平地のランニング
歩き・階段・上り坂だけやっていると、ピッチを高く維持して細かく跳ね返る動きを忘れてしまいますので、平地を走っておく必要もあります。レース参加もこの目的で活用している面が大きいです。
平日朝は可能であれば有酸素ジョグですが、やはり疲れてくると朝も起きられない日が増えます。そんな時は、“35分でもピッチを上げる感覚を確認できればよし”と目的を切り替えて走りました。何も有酸素能力の維持・強化ばかりが全てではないのです。有酸素ジョグではタイムは気にせず感覚で走ります。心拍数は140bpm弱くらい、概ねキロ5分10秒から30秒辺りです。夏はこんなものです。
シューズはライトレーサー4、ハイパースピード2、ターサーRP3、エンペラー2、Nikeズームフライ4などです。
今年は週一くらいで閾値走も継続しました。私の練習は冬でも、ほぼ有酸素ジョグと閾値走のみですので、その流れを維持した方がよいと判断してのことです。6月までは19分台後半、7月に入って2回は20:46程まで落ちましたが、7/17(水)は19:47で走れたので、昨年より確実に強いという自信にもなりました。閾値走は薄底のHanzo Rを使っていましたが、アウトソールの突起が無くなって久しいので、流石に替え時です。
懸垂逆上がり・懸垂
今年も申し訳程度に週一から二回程度やっておきました。別に逆上がりができたからといって山で有利になるとは思いませんが、腕と背中、体幹の強化と、“過去最高の身体で挑む”という意識づけにはよかったと思います。
去年も今年もやらなかったこと
プランク等の体幹トレーニング
完走レベルなら、歩く際に使う筋肉を意識する訓練の方が役立つ気がします。筋トレを頑張ったからという謎の理由で、走りと歩きの練習をサボってしまいそうな気もしますし、やることは絞りました。
インターミッテント走
去年と同じく、有酸素能力を伸ばしたいなら真正面から長めのジョグをするべきと考えたことからカットしました。今や冬でもやっていませんね。
インターバル走
冬でもやりませんし、今年もやる理由が思いつきませんでした。“頑張った先に休みがある”という思考に慣れてしまうと、“とにかくどこまでも動き続ける”という意識づけの妨げになるとすら考えました。
本気のスプリント
リディアードに盾突くつもりはありませんが、怪我のリスクは高いですし、やった感目当てになり本来の目的を見失いかねないので省きました。
去年やったけど今年やらなかったこと
静的ストレッチ
今年は昨年程疲れが溜まっていないように感じたので、特にやりませんでした。他の季節も全くやらないのですが、特段問題ないのかなと思っています。
リカバリー
練習が終わったら即リカバリーを開始しなくては、次の練習までに回復できません。プロテインやプロテインバーは定番です。ロードの上りではセット間に小まめに水を飲み、終了後はアミノ酸も摂取しました。金沢では銭湯もフル活用し、交替浴もして深部体温も下げるように努めました。大阪やジムでも、水シャワーでガンガンに身体を冷やしました。
夜に安定した睡眠を確保するべく、7月の途中からは遠慮せずにエアコンも使いました。温湿度計を導入し室温27℃程で同条件にすることで、毎日の睡眠も安定しました。冷房に慣れておくことで宿でも上手く眠れるようになりますので、これも練習の一環です。
水分はかなり多めに摂っています。7月にもなると毎日スーパーで牛乳1リットルと水2リットルは買っていますし、会社でもマイカップで水を飲んでいます。水分は食事から摂ることも大切なので、朝晩はしっかり食べました。勿論たんぱく質とビタミンを意識しています。
牛乳はプロテインを溶かしたり、ヨーグルトときな粉を溶いたりする際にも使うので、割とすぐになくなります。熱中症対策にも効果があるそうですし(ただし何故アルブミンの生成に牛乳がよいのかは正直よくわかりません。プロテインでもよいのでは)、私の場合は必要な糖質も牛乳で確保している部分が大きいです。
血糖値を急激に上げると食欲の減退につながるので、甘い飲み物は回避します。そういえばスポーツドリンクも全く飲みません。
コースの予習
関西からは気軽に試走に行ける場所ではありませんので、今年も試走はなしです。後にも書いていますが、“今年の本番が来年の試走”になります。一度行くだけで莫大な経験値が得られることから、可能な環境にある人は是非試走をお勧めします。
自分の過去記事を見てもほとんど写真もなく頼りにならないのですが、公式ページから辿れる観光ガイドのページを見ておくだけでも大分記憶が戻ります。
装備
シューズ:asics ソーティーマジックRP6(27.5cm)
馬返し以降の歩きで負担にならないよう軽いシューズを選びます。今年は昨年のターサーRP3より更に薄いソーティーにしました。上りのみで着地衝撃は強くないので、薄くて軽いものでもそうダメージはありません。
走行距離は55km程で、デュオソールは若干減っているものの、反発は強くて新品に近いです。富士登山競走は下りでアウトソールが大きなダメージを受け、一発で使えなくなりますが、ケチっている場合ではありません。完走して大きな喜びに包まれたいので、できることは全てやるのみです。
ウェア
昨年と同じくアンダーアーマーノースリーブ水色、ミズノ360°マルチポケット(丈が短いのでくっつかず走り易い)にユニクロエアリズム、ザムストソックス、ニューハレXテープ二重です。
手袋は七合目以降で必須です。岩場で躊躇わずに手を使えるので欠かせません。2年前に100均で買ったものは非常に頑丈で、今回も助けてくれました。
キャップは今年も使いませんでした。昨年より暑さがましだったというのもありますが、北口本宮冨士浅間神社までの15分さえ過ぎれば五合目までは基本日陰ですので、日差しに襲われる心配はありません。六合目から先はヘルメット着用で頭皮は守られますので、首筋を守るインナーサンシェードと組み合わせればOKです。
今年もセンサーは使いませんでした。心拍ベルトは圧迫感があるので、高山では不安要素になりそうな気がします。ピッチや上下動は今後の役に立つことはないので、不要と判断しています。
持ち物
ジェルフラスコを一つ持参し、エイド間の気分転換に用いました。スタート時にはアミノ酸と濃いめの経口補水液を入れておきました。走っている時に落とさないよう、常に深く入れるようにチェックします。
補給食はアミノバイタル粉三袋と2runのみです。ジェルは嵩張るので持参せずです。エイドの水、果物とパンで足ります。
千円札と小銭300円を小さな袋に入れて持っていきました。山頂のトイレ代と、あわよくば何か食べようという算段です。
例年であれば下山用に参加賞のポンチョを持っていくのですが、今年は配布されなかったのでなしでした。それでも全く困らなかったので、来年以降も要らなさそうです。安物マスクも持っていきましたが、昨年より砂塵がましだったこともあって、左程役に立ちませんでした。まあ備えあれば憂いなしということで。
砂礫侵入防止用の靴下ゲイターもビニールに入れて腰のポケットに配置します。道中で物を落として富士山を汚してはなりませんので、山頂まで使わないものは腰に入れて触らないようにしたり、複数のポケットのうち右側は登頂後の栄養補給、左のここは開けた袋、前はスマホ、ジェルフラスク、と細かく位置を決めておきます。
五合目に運んでいただける緑の袋には、着替え、タオル、ボディシート(重要)、日焼け止め、現金5,000円(流石にカードや財布を路上に置くのは怖い気がするので現金で)、経口補水液、プロテイン、プロテインバー一本を入れました。
前日
大阪から富士吉田へ
水曜夜は諸々で遅くなったため、起床は8:10頃となりました。完全に寝坊で時間もなかったのですが、そこは家事能力の見せ所ですので、豚ひれ肉と人参、しめじを焼いて、簡単なサラダ、納豆、ヨーグルトと一緒に食べました。疲労回復にはビタミンB1です。そしてクリーニングも日曜に受け取れるように託してから出発です。
今回は9:48新大阪発→11:57三島着のひかり(11,630円)で移動です。ぷらっとこだまはクーポンの使い道に困る(ビールは飲まないし、かと言ってずっと安い炭酸水を選ぶのもしゃくという貧乏性ぶり)ため、このところ利用しなくなりました。初動が早く、富士山の見える左側窓際の席を取ることができたのもよかったです。新幹線で仕事を片付けつつ移動します。
富士川から先では、天気がよければ富士山が聳えている姿が見えます。今年は雲がかかっていましたが、その存在は覆い隠すべくもありませんので、いよいよだという期待と絶対しんどいという憂鬱さが入り交じります。逃げたいとか不安だという気持ちはありませんでした。“できるけど、しんどい”という確定事項があるばかりです。
“三島では一瞬の隙を突いてパン活だ”と張り切ってみたものの、目当てのソラシドさんはあえなく臨時休業。徒歩5分くらいなので、今後チャンスがあれば狙ってみたいところです。
バスは12:20三島駅南口発→13:50河口湖駅着の便です(往復割引で片道2,300円)。今年は昨年の経験を踏まえて右側の席にしましたが、この時間ならどちらでも日差しの強さにそこまでの差はないように感じました。ただ、河口湖駅に到着する直前に、例の目隠しが設置されたローソンと富士山のコラボを撮影できますので、やはり右側がよいと思います。
河口湖駅でも近所の富士山食パンさんが木曜定休日という一撃をくらいましたが、駅で富士山メロンパンを購入できましたので問題ありません。このメロンパンはふわふわでおいしいのですが、雪の部分がかなり舞い散るので、風通しのいい場所で食べて正解でした。
移動中読書は、近藤一博先生『疲労とはなにか』(ブルーバックス)でした。そもそも「疲労」とは何か、「疲労感」との違いから分かりやすく解説されていて参考になります。「疲労感」だけごまかしてもよいことにはならず、結局は上手く疲労とつき合っていくしかなさそうですが、まだしばらくは食事や運動など自分なりにできる工夫をしながら生きていきたいと思います。
富士吉田到着後
前日受付(富士北麓公園)
河口湖駅から富士山駅まで移動し、富士山駅から受付会場へは14:30発のバスで移動しました。補助席でしたがそう待たずに乗れたのでよかったです。こんなこと言ったらしばかれるのかもしれませんが、前日受付は正直不便になりましたね。バスの車内でかかっている音楽(うるさい)をオフにするだけでも多少ましになる気はしますが。
前日受付会場でよかったことと言えば、富士山をバックに記念撮影していただけたことと、かしのみさんのアップルパイがおいしかったことの二点に尽きます。スタッフさんもお店の方もありがとうございました。
富士吉田で明日への準備
富士山駅に戻り、例年通りQ-STA屋上の富士山展望所から富士山を眺めます。“明日はあの道を走って山に入り、あの辺りを走るのだ”と想像していました。こうして見るとあんな巨大な山に本当に上れるのかと怯んでしまいますが、過去二年続けて完走していますので、不思議な気持ちになります。とにかく明日はやるしかありません。
宿からの時間の目安を知っておくべく、富士吉田市役所まで歩いておきました。コース序盤も確認できますし、歴代優勝者のプレートも気持ちを高めてくれます。
パン活
- 木村屋さん
優しいご主人が“明日は頑張って下さい”と応援して下さったので、“昨年もお世話になりました”とお伝えして、同じカレンツ・ノアとずんだ生クリームを購入しました。大き過ぎず、ついつい食べ過ぎてしまう味で、とても気に入っています。縁起もよいですし、レース当日の朝食としてもレギュラー化しつつあります。
- Bakeryina(ベイカリーナ)さん
これまで知らなかったのですが、歩いていて出くわしたので入店しました。調べてみると2023年オープンだったようです。可愛いパンも多く迷いましたが、チョコレートアイスパンを選びました。見た目が面白いと思ったのが理由ですが、チョコのかかったパン生地も柔らかく、中にはたっぷりのクリームという甘党歓喜のパンです。カヌレやクイニーアマンも気になりますし、また来なくてはと思います。
- サンクルーさん
Q-STAの一階で半熟卵入りキーマカレーパンとチョコ三昧を買いました。毎回同じものを買っている気もしますが、卵とカレーの相性も、チョコクリームとチョコのコラボも魅力的ですので避けようがありません。
夕食
昨年と同じくいづみやさんにしました。今年は奮発して上トンカツ定食です。厚みがありながらほどけるように消えていくお肉が、香ばしい衣を纏っています。言うまでもなく大変おいしかったです。丁寧に作っていただき、明日への活力になります。
お宿
Hostel1889さんにしました。金鳥居のすぐ傍という絶好のロケーションで9,025円はお値打ちです。本当に寝るだけの場所で、男性トイレは1階にしかないため、一々階段を下りなくてはならないことや、1階のバーが22時までは結構な音量で音楽を流していることはあれですが、耳栓も置いてありますし、エアコンの音で大体打ち消されるので、実は問題なく眠れると分かりました。
木村屋さんのカレンツ・ノアを少しと、セルバで買った牛乳、チーズを食べ、アミノ酸を飲んで準備を整えてから9:30頃に消灯しました。
レース当日
レース前
9:30消灯5:00起床です。0時過ぎにトイレに起きた以外は問題なく眠れ、安静時心拍数44、Body Batteryも92と十分です。朝食は木村屋さんで買ったフリュイ、牛乳、チーズ、ゆで卵にプロテインバー一本でした。
装備も整えていきます。ナンバーカードや持ち物は全て前日中に準備してあるので、身に着けておかしいことがないかの確認と、テーピング、ワセリン、日焼け止めくらいですが。
トイレも多少の成果を挙げ、5:50頃に出発です。快晴で富士山も山頂までバッチリ見えます。5合目打ち切りは悲し過ぎるので、どんなにしんどかろうと山頂に挑めることが何よりです。
ここで会場に向かう前に、富士山駅のコインロッカーに立ち寄りました。終了後に散歩することも考えると、どうせ後でロッカーに入れることになりますので、宿以外では絶対に使わないPCや充電器、本や衣類を預けておきました。朝一だと400円の小ロッカーも空いており、何の不便もありませんでした。
すぐ後で上ってくる坂を下り、富士吉田市役所へと向かいます。朝から交通整理や看板の設置などにご協力いただいている方が沢山おられ、ご挨拶しながら進みます。富士吉田市役所には6:21には到着し、6:30の荷物預けにも普通に間に合いました。
会場では例年通りアミノバイタルの試供品を配布していましたので、早速摂取してスタートに備えます。今年はポンチョがないのか係の方に聞いてみたところ、ないとのことだったので、“荷物も増えずに済むし、まあええか”と前向きに捉えます。先に書いておくと、山頂は特に寒くもなく、寒さに強い自分にとっては一切困ったことはありませんでした。
6:30までは交通規制がかかっていないため道路には出られないのですが、6:30になった瞬間に皆さん並ぶのか、今年もCブロックの後ろの方でした。試しに右の方に陣取ってみたところ、上手く日陰に入れてラッキーでした。でも少しでも前に行きたいのであれば、今や遅しと6:28頃から待機しておいた方がよさそうです。後はAやBブロックに振られるように頑張るかですかね。
開会式のご挨拶は、富士登山競走だからか、熱いものが多かったように感じました(富士登山鉄道はどうもよろしくなさそうだなと思ったり)。例年登壇されていたお子さんが一人抜け、二人抜け、とうとうソロになってしまった宮下さんのお話に笑い(外出を控えるよう言われる気温で走ることのおかしさなど)、2001年から山頂コースを完走されていることに敬意を抱き、「今日のビールはうまいぞ~!」からのエイエイオーで盛り上がります。
その後の演出が余計で、司会の人が"今日まで頑張ってきた自分はサイコーにカッコいいぜー"みたいなことを言っていましたが、個人的にはテンションが下がるのでやめていただきたかったです(使いまわしも無数にあるマラソン大会なら目を瞑りますが)。誰かに言われなくても我々は鍛え方が違いますし、カッコいいかどうかなんて山頂コースの面々は全く気にしていません。結果が全てです。挙句、勝手に“今日の皆の気分にぴったりのBGMはこれだ~”みたいなことまでして下さって、本当に勘弁していただきたかったです。人の声だけで、静かに走りたいのです。芹澤選手のようなレジェンドの熱い言葉で奮い立ったり、地元ラジオ局の名物女性パーソナリティさんの司会で優しく送り出していただくのが一番なのですが。
レース
前半① スタート~馬返し(ラップ62:28)
今日に限ってはグロスタイムが全てですので、7:00になった瞬間に時計を押しました。おそらくマットを踏むまでに20数秒かかっていたと思いますが、ネットタイムがどうであれグロスで完走できなければ全く意味がないのが富士登山競走なのです。
月江寺入口の交差点まではフラットな直線ですが、混雑しているのでどうやっても飛ばせません。接触にだけ気を付けつつ落ち着いて進みます。立ち上がりも問題なく回転が出ており、体調は通常通りだと感じました。
左折していよいよ上り開始です。中曽根の交差点は広い道路、そこから金鳥居までもそれなりの上りです。楽ではありませんが、混雑している分無駄に飛ばすこともできず、”これなら60分以上余裕で走り続けられる”と感じるくらいのペースに落ち着きます。
金鳥居で時計を見ると7分30秒くらい。目安7分ですので少し遅いのですが、ネットなら昨年と同じくらいだろうと深く考えないことにします。上宿の交差点までの道でも両サイドに応援の方が沢山おられ、子供たちも声援を送ってくれます。写真を撮る余裕はなかったのですが、笑顔で応えつつ進みます。
上宿交差点で12:50。少し盛り返してきました。最後の平地(早くも最後)を走り、14:32で北口本宮冨士浅間神社のマットを踏みます。ここからは森の中ですので、暑さは心配ありません。昨年は給水に失敗しましたので、今年は止まって確実に取りました。
舗装路に出てからは道幅も広いので、割と走り易い感じです。時たま落ちてくる人をかわしつつ進んでいきます。次のチェックポイントである高架もすぐに見えて来て、25:55で通過です。大体27分の予定でしたので、上出来です。
次は三差路でラップを取るのですが、毎度どこが三差路なのか分からず、標識を少し過ぎた場所で31:30でした。少し行くと、今年も“茶屋まで500m!”と応援して下さる男性がいて、いつも通りだと安心します。
中ノ茶屋も見えてきました。38:10で到着ですので十分です。入口では水が流れて来てシューズが水没しないよう気を付けなくてはなりませんが、これは先に来たランナーの被り水の結果ですので、怯んではなりません。私もここでは頭に水をかけていただきました。勿論、シューズにかからないように、脚は大きく開きます。お水とレモンをいただいて、馬返しまでの正念場へと向かいます。
路面は多少荒れているとはいえ、あくまでも舗装路ですので、大きな穴に落ちなければ大丈夫です。ソーティでも痛くはありませんでした。道幅も狭いので、無理に追い抜いても疲れると判断し、概ね流れに乗って進むことにします。旧大石茶屋跡で53:13。フェンスが見えて来た最初の方ではなく、そこから250m程行った立札のある場所だと思います。中の茶屋出発後、最初の1kmは(中の茶屋での停止を入れても)まだ6:39/kmでしたが、この辺りではキロ7分程になっています。
旧大石茶屋跡で(中ノ茶屋から)残り1/3くらいのはずですが、1.2kmで150m上るので、結構きついです。特に残り400mを切ってから、かなり急になり、坂の最後の方は野田山終盤かと思うくらいの重みと呼吸の苦しさを感じました。”車が何台も左に止まっているのに、なかなか終わらない”と焦りも感じましたが、時間的にはあと数分もないはずという確信が支えになりました。腰を入れつつ、腕は大振りせずに反発をもらう意識で進みます。
山が相当強い人ならともかく、山では一切見せ場なしの私のような者にとっては、歩くとか減速するという選択肢はありません。何とか粘って例の柵を通過し、給水とレモンで一息つきます。しっかり休んでからマットを踏んで62:28で馬返しを通過しました。昨年より1:19早いことに勇気づけられます。
前半② 馬返し~五合目関門(五合目関門1:58:10、ラップ55:42)
ここからが苦手意識のあるトレイルパートということもあり、入りから消極的です。馬返し前の最後の上りで息が上がりつつあったこともあり、元気に走っていこうという気持ちになれません。
とりあえずこのパートは周囲に合わせてついていくことができれば十分と考えました。昨年と同じくらいでも60分はかかりませんし、焦らなくてよいのです。他の方が走っている時には後ろの方の邪魔をしてはいけないので、極力走り、ハードルや落とし穴も無理せずクリアしていきます。
昨年は大きな段差や足元の石に後ろ足の爪先が引っ掛かる場面が多かったことから、そこを減らすだけでもタイムが改善するはずと考えました。具体的には、階段を留めている杭のある位置を気にしつつ脚を引き上げたり、大きな石はできるだけ認識した上で跨ぐようにしました。ハードルも必ずしも丸太部分にこだわらず、歩幅に合った着地点を選びました。
苦手なパートということもあり、ラップがほとんど取れていないのが惜しいですが、おそらく1:22:00で二合目五勺の交差点、1時間25分台で三合目の給水に到達しています。ここでも水とレモンをしっかりいただきました。
この先は長く感じますが、1時間55分程で滝沢林道に到達するはずと信じてただ淡々とついていくのみです。一か所右手に鎖がある場所を過ぎ、大きめの段差を手押しで乗り越えていくと、鈴で応援して下さる方がおられ、段々終わりが近づいて来ると認識します。足元の岩も大分溶岩らしくなってきたなと考える余裕もありました。
小屋の前や橋など平坦な部分は走り、急な坂は後ろ手のパワーウォークも入れて歩きます。時折ジェルフラスクの経口補水液・アミノ酸も飲んで気分転換も図ります。ここは我慢です。
滝沢林道が近づくと明らかに応援の方が多くなりますので、元気づけられます。ついにあの柵を抜けると1:54:43。ここから5分で行けるはずなので、初の五合目2時間切りもありそうです。というわけで舗装路はしっかり走り、再びトレイルに入ってもそれまでの流れで進み、再度舗装路へ出てスピードを落とさずに上りました。沢山の方の応援に鼓舞され、また、右手の景色も見ながら、1:58:10でマットを踏みました。“これは来年Bブロックに入れてもらえるのかしら”という微かな下心も抱きながら。
後半① 五合目~八合目関門(通過3:28:41、ラップ1:30:31)
- 五合目給水所でしっかり補給
五合目は応援が多いですし、ランナーもトレイルを抜けた安心感でテンションが上がっています。私も喜んで水、レモンに加えてパンもいただき、この先への自信をつけます。今年も多くのスタッフさんが笑顔でエイドを支えて下さり、嬉しい限りです。
ありがとうございますとお礼を言って再出発。一段上の里見平星観荘でヘルメットを受け取ります。サンシェードもここで装着し、首筋を日光から守ります。この先の道は概ね下のトレイルと変わらず、周囲と合わせて走れるところは軽く走り、歩く時は歩くというだけです。安全指導センターの給水までの時間も短いため、特に苦手意識はありません。五合目で摂取し忘れた2run二粒をこの辺りで食べています。
- 赤土エリア
安全指導センターでは一気に視界が開けて、この先目指すべき道がはっきりと見えます。個人的にはここからが富士登山競走本番だと思っています。先ほども書きましたが、試走などできない身にとっては、毎回“今年の本番が来年の試走”ですので、昨年までのわずかばかりの経験をフル活用して上るしかありません。アミノバイタル粉を摂取して先へと向かいます。
赤土と石が混じった道は歩きにくいのですが、ここは後ろ手のパワーウォークで腰を入れて地道に進むのが一番手堅いです。腰に手を当てるスタイルだと後ろから来た人を邪魔してしまうため、小心者の私は選択しませんでした。
トレッドミルに比べてピッチも出ませんが、それでも下手にもがくよりも進んでいるので大丈夫だと言い聞かせます。思えばトレッドミルは景色も位置も変わりませんし、本番の方がまだましかもしれません。大きな段差は手押しですが、概ね外側を迂回して回避したと思います。
- 岩場
花小屋前から岩場が出現することは分かっていますので、近づくタイミングで手袋を装着します。今年は上り始めに間に合いました。例年、脚の力に自信がないため、ついつい四つん這いになりがちですが、そうすると視野が狭くなってルートも上手く選べないので、今年は割と強気に脚の筋肉を使って身体を引き上げていきました。
こうするとしんどくはあるものの、確かに大分速く上れると分かりました。他のレースであれば、“次の練習に差し支えるから”として力を抑えますが、今日はその発想はなしにして、“持っている力を惜しみなく使う”ことにしました。それと共に、これでも最後まで持つ可能性が高いということも分かりましたので、セーブするつもりはありません。階段トレーニングにより脚の筋力が強化されていると実感できたので、かなりの手応えがありました。
また、これも非常に大きな要素なのですが、今年から登山客数の制限がなされているお陰で、明らかに人が少なかったです。そんな中でも国籍問わず道を譲って下さる方が沢山おられますので、“ありがとうございます”“力になります”とお礼を言って先に行かせていただきました。ご家族で来られている方も多く、小さいお子さんに応援していただけることも何度もありました。
各山小屋の間は岩場になっていますが、落ち着いて見ると階段として整備されている所は恐れる必要はありませんので、普通の段差として扱えば足ります。山小屋前では応援もしていただけますので、細かく走って自分の余力を確認します。本当は写真でも撮りたかったのですが、山小屋を通過するとすぐに岩場になるため、手袋を外したりする時間がなく、見送りました。
岩場の間でも給水が命綱です。3時間1分台なので、時間的に八合目太子館だと思います。各給水所間がどれくらいかかるかは、時間でイメージしておくとよいと思います。
- 岩場の後
蓬莱館の後は岩場がなくなり、再び赤土エリアになります。角度が急なこと、疲れてきていることに加え、石が大きくて足元が崩れ易いことが追い打ちをかけます。なかなか進まず焦りそうになりますが、ここもとにかく腕を後ろに組んで腰を入れ、視線を高く保つことを継続します。“踏ん張った方が進むのでは”という誘惑に負けて余計な動きを入れると、途端に進まなくなるはずです。自分のこれまでの練習を信じ切ることができるかが鍵です。
斜度と足場の都合上、ふくらはぎの筋肉も普段ではないくらい伸ばされ、小さな筋肉も含めて力を使っているのが分かります。不安がよぎりそうなところですが、ここも岩場と同様、“今日はやる”と決めていたので、迷わず歩みを進めました。もう一時間もないので、持つに決まっています。私は普段はふざけていますが、時には強気になることがあります。
元祖室の看板もはっきり見ていて、今回は精神的にも余裕がありました。いい具合に雲がかかっていて、直射日光が至近距離(いつもよりはちょっと近い距離)から突き刺さることもほとんどありませんでした。それでも終了後は肩の後ろだけ、日焼けが強めでした。日焼け止めはかなりガッツリ塗っていたのですが。
八合目関門が近づくと、“もう一段上が関門です!”と教えていただけました。右折した後に確かにマットを視認でき、ようやくどこが八合目関門だったのかを知りました。3:28:41で通過し、“自己ベストは間違いないが、4時間少し超えるくらいだな”と思いました。とにかく残り30数分ですので、もうフルマラソンでもお馴染みの時間感覚です。
後半②八合目関門~山頂(3:58:10、ラップ29:29)
少し行くと御来光館で最後の給水。富士山という険し過ぎる山で、ここまでにも沢山のお水をいただけたことに改めて感謝します。高山病は、水を飲めばかからないというものではありませんが、脱水状態になると確実に危険度が増します。水を飲むことは、十分条件ではなくとも必要条件であるのは確かだと思います。
終わりは近いと言い聞かせながら進むと、上に九合目の鳥居がはっきり見えます。いよいよラストが近づいてきたと勇気が湧き、しんどさを上回る場面です。鳥居前で手袋を外し、歩きながら小銭のささった柱を撮っておきます。去年より余裕があることを確かめながら。ここで3時間46分程です。
鳥居をくぐって右折してから眼下の景色と、下から続いて来るランナーの姿を心に刻みます。ゆっくり浸っている程の力はありませんが、山頂目前のこの景色は、間違いなく、興奮し切った身体の感覚と共に、心と身体でそのままに覚えておきたいものでした。
この後には最後の岩場が残っています。例年なら渋滞するのですが、早く来たこととオーバーツーリズム対策もあって、全然空いていると感じました。無理に抜くまでのことはなく、前後の方に迷惑をかけずにただついていけばよいと判断します。力はまだありますので、腕を使う時は腕を使う、脚で一気に上げる時はそうする、というように一つ一つの動作の狙いを明確にしました。
あともう少しで終わると思った頃に、上から、“4時間まであと3分ですよ!4時間切ったら名誉ですよ!”という女性の声が聞こえて来ます。“曲がったら最後の鳥居ですよ!”とも。これは残り距離的に間に合うと分かったので、右折後も素早く歩いて段差を超え、敷かれた板を渡り、鳥居の下を通ります。左折すると山頂のマット、“本気を出すべき時に本気を出せた!”という喜びと共に、ガッツポーズをしながら笑顔で駆け抜けました。途中何度も頭に浮かんだ、この二年間の、自分だけの思いも抱えながら。
アフター
山頂にて
喜びそのままに給水所に直行し、水をたっぷりいただきました。アミノバイタルとアミノプロテインも摂取して座り、遠くの空と地上の方を見るともなく見ていました。今日もここまで来られたこと、それも思い描いていたように強くなれたことの喜びを感じる至福の時でした。周りのランナーさんとも健闘を称え合います。同じ道で苦しみ抜いてここまで来たからこその連帯感があります。
満足感に浸っていると、何とあの月間ランナーズの記者の方に話しかけていただきました。初めはトレッドミルや非常階段など普通の話をしていたのですが、段々止まらなくなって"半年でフル12本、100km2本とかもいい練習に……。"といったことまで口にして、“そんな人初めて会いました”などと面白がっていただけました。こういう話はなかなか聞いていただけないので、記事に一言載るかにかかわらず、嬉しい経験になりました。まあ過去二年に引き続いて、富士登山競走特集号は記念に買いますので。
今年もフィニッシュ地点を見ておこうと少し戻り、喜びと共に駆け抜けたあの場所と、次々に上って来るランナーさんを見守ります。ふと隣を見ると、昨年ゴミを拾いながら上っておられた小田原消防署の府川健一さんがおられました。期するところがあったようで、感極まった様子でしたので、本当によかったです。尊敬する方と記念撮影もしていただき、本当に特別な思い出ができました。
下山(喜ぶにはまだ早い)
毎年書いていますが、富士登山競走の本当のゴールはバス乗り場です。14時の最終便までにここに辿り着く必要があります。
今年は山頂でトイレに寄っておきました。協力金は300円です。設備が想像以上にしっかりしていますので、昨年途中で寄った山小屋よりよかったです。ここで無駄な水分を出しておけば、五合目からのバスも心穏やかに乗れるというものです。なお、今年は千円札と300円を持って来ましたが、色々と感極まっているうちに食べ物を買うという発想が割り込む余地はないまま下山を開始してしまいました。
剣ヶ峰の写真を撮り、靴下ゲイターと安物マスクを装着して出発です。前述の通りポンチョはありませんが、全然寒さを感じなかったため、何の心配もありませんでした。
下山は気持ちが切れていることもあってなかなか進んでいる感じもせず辛いのですが、高度計を表示しておくと、着実に進んでいるのだという実感が湧きます。2,300m台が近づくことを励みにできます。
下り始めは霧が出ていて普通に怖かったりしますし、どちらかというと高度が高い箇所の方が走りにくく、転倒リスクは高かったと思います。注意したのは大きな石を踏まないようにすることです。乗ってしまうと捻挫したり、ズルっと滑って転倒する可能性が高いです。よく見ながら進みましたが、それでも何度かは乗ってしまい、二度尻餅をつきました。
幸い靴下ゲイターが力を発揮してくれたのと、思った程砂も滑りやすくなかったことから、それ程の危険を感じることなく、緩やかに下ることができました。それでも時に硬い石を踏んだ時は、踵を打撲したかと思うような痛みが走りました。
時折休んで上を見てみると、“よくもまああんな所まで”という気になります。高山植物が増えて来て、馬に出会うまでが54分くらいでした。この先上りが出現してげんなりしますが、余力があったので走りました。上ってくる登山客の方を怖がらせないように注意しながら下り、最後の上りは普通に歩いた結果、72分程で荷物返却所に到達しました。
本当のアフター
五合目
配布していたアミノバイタルゴールドをいただき、早速リカバリーに努めます。自衛隊の方が水を沢山注いで下さり、3杯も飲んでしまいました。荷物を受け取って少し歩いたところで、ボディシートで顔と身体を拭いてさっぱりします。上だけはTシャツに着替えました(タオルは持ってきたものの、下は紳士として自粛)。プロテインとプロテインバーも摂取して、一通りの回復は済ませました。ようやく五合目でのアフター開始です。
今回は現金も5,000円へと増額しており、最初から食べる気満々です。富士山限定ということで調べておいたこけももソフトを選択し、富士山の味に感謝します。観光客の方も多くてにぎやかです。
マドレーヌチーズバーガーという魅惑のスイーツも堪能します。期待通りの贅沢なお味でした。お土産の富士山サブレも購入し、帰りのバスに乗り込みます。待ち時間もほとんどなく乗車できてありがたい限りです。
一年の中で、この下りのバスの時間程、何もしないで、ぼんやりとこれまでのことを思い出したりすることだけに使える時間はないかもしれません。強くなれたという手応えと、まだやれるという気持ちと、これまでにあったこととこの先もうないことが、浮かんでは消えていきます。人間は本来の必要性を遥かに超えて忙しくしている気がしますが、時にはこういう時間がなくてはなりません。
富士北麓公園
会場に到着し、荷物を受け取りますが、日差しも強くてとても暑いです。今年は昨年の教訓を踏まえ、シューズもソックスも全てビニール袋の中に足を突っ込んだ状態で脱ぎましたので、砂をこぼしてしまうこともなくてよかったです。
手作り靴下ゲイターは、安全ピンを片側4か所付けた効果もあってあまりずれず、靴の中への砂礫の侵入を相当防いでくれました。下山途中にシューズを脱いで砂を出すという作業は一度もせずに済み、大成功です。勿論底は消滅していますが、足首やシュータン部分から入る砂が減るだけで全然違います。
注目のソーティマジックRP6さんですが、思ったよりは削れていませんでした。“ソーティだったら穴が空くのでは”という心配をよそに、よく踏ん張ってくれました。丁度二年前にエンペラージャパン3があまり減らなかったのと同じくらいの砂の状態だったからかもしれません。そうはいっても、アウトソールはバッチリ削れていますし、まさかスピード練習に使うわけにもいきませんので、今後の起用法は考えなくてはなりません。また上り特訓用ですかね。
参加賞の金券を利用して、ふじやまビールと塩からあげで打ち上げを行いました。今日のビールは最高にうまいですね。普段お酒を飲むことはないのですが、フルマラソンのサブ3と富士登山競走のサブ4の時くらいは喜びに浸ればよいと思っています。
食べ物はピザなどが売り切れていましたし、選択肢も限られることから、どう考えても道の駅富士吉田の方が楽しいですね。変なノリの表彰式にも出くわさずに済みますし。ただ、一般のお客さんからすると富士登山競走参加者は邪魔ですし、荷物を返すことだけを考えるとこの競技場の方がやり易いのでしょうから、仕方ないかもしれません。
富士吉田散策
富士吉田に泊まればよさそうなものですが、“どうしても富士山を離れた位置から、できれば河口湖を間に挟んで落ち着いて眺めたい”という気持ちと、帰りの交通の便を考えると河口湖に泊まる選択をしてしまいます。しかし温泉やパン活、夕食は富士吉田で楽しむこともできるのではと気づいたため、もう少し富士吉田を見て回ることにしました。
朝駆けあがった坂道をゆっくり歩いて上るのも、下ってみるのも新鮮です。見たことのない景色が続いています。
昨年レース後にお邪魔したアマノベーカリーさんも臨時休業。今回この展開が多い気が……。
- 富士山溶岩の湯泉水さん
日帰り入浴が800円で、富士山駅から歩ける距離です。大きな道路は信号が少ないので、上宿の交差点で渡っておくのがよさそうです。
溶岩で客を葬り去るといった物騒なことはなく、浴槽が富士山の岩でできていたりするのですが、水風呂もあって入念な交替浴ができます。露天風呂もありますし、夕方になると急に涼しくなる空気に身を委ねるのも気持ちいいです。16:30頃はやや混んでいましたが、その後は割と余裕を持って入れました。次回以降もお世話になりたいと思います。
- 木村屋さん
完走のお礼をお伝えするべく再訪です。覚えていて下さり、喜んでいただけました。見るからにおいしそうなBLTサンドとショコラダマンドを買ったところ、お祝いということでコーヒー食パン(チョコ入り)をプレゼントしていただきました。
奥様まで完走を労って下さり、ついでに?富士登山競走参加者の写真をインスタに投稿しておられるという話になり、こんなおじさんでよろしければと記念撮影に応じました。お店のイメージダウンにならなければよいのですが。こうして走り終わった後にも色々お話しできるのは嬉しいことです。また来年もよろしくお願いいたします。
- 夕食
二年ぶりにやぶさんへ。“そういやお店は広かったな”と記憶を更新します。昨日もカツだったし昼に唐揚げも食べたからと焼肉定食にしました。そしてそのボリュームにも、“そうだったそうだった”と目を細めます。どんどん食べられる味付けにキャベツもたっぷり。滋味に富むしじみのお味噌汁も染みますし、やはりこの三種類のフルーツが光りますね。スイカで夏を感じさせていただきました。
お宿
ビジネスホテル河口湖さんです。河口湖駅から徒歩10分程、富士急ハイランドの方へと歩きます。途中にセブンがあるので、買い物にも便利です。
この便利な立地で部屋も広く、6,555円はかなりの割安感があります。ただ、年季の入った建物だけあって今時エレベーターがないバリア仕様なので、階段が苦手な人には厳しいかもしれません。コインランドリーは洗剤もあるので、持参不要です。
翌日
朝の逆さ富士
普段にない疲れ方をしているせいであまり眠れませんでしたが、5:50には目覚めましたので、そのまま観光を開始することにします。昨年と同様、河口湖をスロージョグで巡りながら逆さ富士を見に行く時間です。
やはり腿前の筋肉痛はかなり強いですね。下山の際に酷使される、普段使わない(更に富士登山競走に向けた特訓でも完全にスコープ外に追いやった)筋肉ですので、当然の結果として受け入れます。ふくらはぎもフルマラソンではない強さの張りがあります。臀部はそこまででもないですが、それでもやはり普段よりは重たいですし、背中と上腕二頭筋も結構疲れています。腿裏は案外平気な感じです。
こんな状態でナイキフリーですので、とにかくピッチが出ません。170spmも出ないというのはフルマラソンでは考えにくいことですが、斜度も限度を超えるとピッチは低くなりますし、歩きの練習を繰り返せば遅い動きが染みつきます。更に精神的にも燃え尽きているところがありますので、速く動けるはずがありません。道マラは道マラで持っていけるところまでは持っていくつもりですが。
ともあれ昨日あれだけ頑張ったので、しばらくはのんびりしてもよいのです。キロ8:20でも気にせず、朝の美しい河口湖にその姿を映す富士山をゆっくりと眺めてきました。昼になると光が強過ぎて反射しないので、朝の短い時間だけの姿です。
河口湖大橋からの富士山は、船が残していった波がこんなに細かく直線的に見えるものかと思いました。何だか珍しいものを見られた気がします。
そのまま帰るのも惜しいので、西にある八木崎公園にも初めて行ってみました。緑がきれいで、河口湖の六角堂も見られます。勿論振り返ると富士山が見守っています。ラベンダーも沢山植えられていましたし、春は桜がきれいに咲くようです。
折角ですので、パン・ダニエルさんの開店時間(8時)まで歩いたりスロージョグしたりで河口湖の景観を楽しみ、優雅に時間を潰しました。お店は変わらずきれいで、おいしそうなパンが次々と焼きあがってきます。季節のキッシュとシナモンロールをいただきました。キッシュはミニトマトにハム、玉ねぎもしっかり入っていて、生地も卵も美味しいです。シナモンロールもシナモンとバターがふんだんに使われていて贅沢ですね。写真を見るだけで味を思い出せます。
若干慌ただしくはありましたが、シャワーを浴び、髭を剃り、身なりを整えて出発です。荷物を預かっていただき、船津入口9:07発のバス(甲府行き)に乗ります。ついさっき走ったばかりの川口湖畔をぐるりと回って20分程で河口湖美術館前へ。強烈な日差しですが、少しの間木陰のベンチで座ってぼんやりしていました。意外にも何名かの方がジョギングをされていましたが、私には無理な暑さでした。近くに艇庫があり、高校生がボートの練習をしていました。船台から飛び込むのはたまりませんよね。
河口湖美術館
当然撮影禁止ですが、広過ぎない館内で休みながらゆったりと鑑賞しました。絵心も書や彫刻に対する眼識も何も持ち合わせていませんが、気にしないことにしています。日常生活ではあり得ない静けさだけでも心地よいです。書の中にも、“静かにいられることが宝である”といった言葉があったと思います。
日展の企画もあり、富士山の絵が多かったのですが、私がよく知っている富士山は、雪を被った姿を遠くから見たものではなく、そもそも雪がない上に近すぎて岩と土しか見えないといったものですので、全然違うなあと思っていました。一枚だけ、『五合目』という、見たことのある光景がずっしり眼前に展開されている作品があり、“分かるけど嬉しくない。見ているだけで疲れる”という感情に襲われました。勿論、早春の富士山や湖の奥に佇む富士山、月と雪で霊山の色が更に力を増す富士山など、それぞれの姿も心に残りました。
山梨といえば、ほうとう!
近くに音楽と森の美術館があったので、“30分くらい寄ってみるか”と思って近づいたところ、2,100円という入場料に怯んで撤退を決めました。3時間くらいいるならともかく、ちょっと入って出るには流石に高いです。個人的には静かな場所が好みなので、音メインというのも少し違うかなとも思いました。
それはそれとして、近くの甲州ほうとう完熟屋さんが11時開店と丁度よい時間です。農場直営で野菜もおいしいとのことですので、天ぷらも食べられるとり肉ほうとうセットにしました。これが味噌でしっかりとした味付けで食欲が湧きますし、南瓜も白菜も人参も山菜もしっかり入っていて食べ応えがあり、大正解でした。鶏モモ肉もよく合います。期待の天ぷらも、素材の良さが光ります。富士登山競走のことも労っていただけて、とても楽しい昼食になりました。
灼熱の河口湖散策からのチーズケーキ
さて、外は日差しが強過ぎて目を開けていられないくらいですが、次のバスが来るのは一時間後です。待っていても体力を消耗するだけですし、思い切って歩いてみることにしました。湖畔は何の恨みか日陰がなく、晴れると暴力的な暑さになるものですが、日傘を差して何とか歩きました。
涼しさを感じる場面も一切ありませんが、御坂道から見た河口湖の西側の景色はきれいでした。今朝とはまた違う真昼の富士山も、夏真っ盛りの青空と雲が山の向こうに広がっている様子もよかったです。
何としても船津浜に行きたいと思ったのは、昨年に続いて河口湖チーズケーキガーデンさんに行きたかったからです。今年もわかり易いTシャツ(「3776」と書いてある、外国人観光客以外あまり着ないであろうデザイン)を着ていたお陰で、お店のお母さま方に気づいていただけ、楽しくお話しできました。去年も褒めて下さった方かもしれません。ご親戚やお客さんの中にも、昨日挑戦された方がおられたとのことで、やはり多くの人を惹きつけてやまない大会だなと実感します。
おすすめしていただいた一番人気の完熟チーズケーキを選び、外の席でいただきました。一年ぶりでもやはりこの上品な味はたまりませんね。クリームチーズもタルト生地もあらゆる要素が絶妙に絡み合っています。今年も湖畔で素敵な時間を過ごさせていただきました。
富士山パノラマロープウェイ
昨年は建物の外までの行列で長時間待ちましたが、今年は館内に収まっていたため、これはチャンスだとチケットを買い求めました。少し後だと外国人の団体さんが来られたのか列が長くなっていましたので、グッドタイミングでした。
乗車時間はわずか3分程、あっという間にロープウェイは頂上に達し、一段上がると富士山と向き合えます。更にたぬき団子などの売店の屋上まで上ると、より遮るもののない富士山の姿を拝めます。“本当に昨日あの上まで上ったのか”と、昨年と同じように、向こうからの眺めを思い出していました。昨日は本当にありがとうございました。また会える日を楽しみにしています。
昨年はそのまますぐに帰ったのですが、今年は少し奥まで上ってみました。天上山はよく整備されたトレイルになっていて、本当にほんの少しだけ、トレイルランニングもやってみたいかもという気持ちが生じかけました。小御嶽神社までは数分程度で、特に視界が開けるわけではありませんでしたが、これまで知らなかった道をわずかながら進んでみることは、それ自体楽しいことです。
河口湖駅・三島を経て締め括り
夏の山梨にありがちなことですが、さっきから雷が鳴っていていつ土砂降りになるか分かったものではありません。ここで観光は打ち止めにして、荷物をピックアップして河口湖駅に向かいます。
最後まで観光に未練があるので、山梨シャインマスカットシュークリームを買い、おいしくいただきます。バスの移動中雨が降って来て、山梨らしい天気だなと思っているうちに、疲れも感じたのでしばらく眠りました。
三島駅では、みしまコロッケぱんと高級な山葵を買って締めくくりました。コロッケ自体の味とボリュームもよいですし、パンもなかなかおいしかったです。16:55三島発→19:51新大阪着のこだま(グリーン、10,650円)でゆっくり帰ります。
最後に富士山を見られるよう、右側の席を取っておきました。飛行機や新幹線でその姿を見る度に、“次も頑張らねば”と思わされる、あまりにも大きな独立峰ですが、今日だけはそういうプレッシャーから解放されて、何とも言えない穏やかな気持ちで見つめ、富士山に見送られて日常へと帰りました。今年も上らせていただき、本当にありがとうございました。
最後に
大会を受け継ぎ、支えて下さった皆様のお陰で、今年も一番空に近い場所まで到達することができました。私がこれまで生きてきた時間は、山頂の空の先に、きっと続いていると思います。
準備期間も上っている間も終わってからもとにかくしんどいのですが、どうしてもまた挑みたくなるのが富士登山競走です。ここでしか感じられない喜びがある、文字通り最高の大会です。
「この山には過酷に挑む価値がある」。願わくは来年も、過酷に挑むことのできる自分でいられますように。この大会に出会える人生を与えて下さった皆様に改めて感謝の気持ちをお伝えしたいです。
ここまでご覧いただきありがとうございました。