ちょっと長すぎる旅ランブログ

百聞は一走に如かず。きっと貴方が好きな大会が見つかります。

第76回富士登山競走(2023/7/28) 一番高い場所で“もう一度”!皆ありがとう!

昨年何が何でもと山頂まで上り切り、もうあれ程の情熱を持って臨めることもないだろうと、ある意味で自分にとっての富士登山競走は完結したように思っていました。ランナー募集期間にもあと1クリックができず、一旦今年は見送ることにしました。

しかし自分の中で“本当にそれでいいのか?”という思いは消えず、“いつか必ずもう一度は完走しなくてはいけない”と考えるようになりました。そして山頂コースのみ二次募集が行われたことから、決意を固めてエントリーしました。来年自分がどうなっているかなんて、全く分からないのですから。

fujimountainrace.city.fujiyoshida.yamanashi.jp

この大会に出ると決めたからには、失礼の無いようにできるだけの準備をするしかありません。毎回思いますが、“本当に自分のようなものが出てよいのだろうか”というくらい真剣な大会で、出場される皆様の情熱も実力も並大抵のものではないのです。私も何としても完走するべく、「やるしかない」と口癖のように言いながら準備を重ねました。

一年ぶりに戻って来た富士登山競走は、前日の空気から当日の応援、そして漲る熱気と連帯感、いずれもここでしか体感できないものに満ちた大会だと実感しました。“エイエイオー!”で気合を入れ、周囲のランナーさんともハイタッチをして、“もう一度頂上で会いましょう!”と走り出します。

そしてその先も何度も“もう一度”と願いを込め、“必ずできる!”と念じ続けました。そして皆様の大きな力を借りて無事に4時間10分31秒で山頂まで到達することができ、安堵も喜びも寂しさも混じった様々な感情に包まれました。ここにもう一度立つことができたのは、ひとえに皆様のお陰です。

今年も大会を支えて下さった富士吉田の皆様、笑顔で道を譲って下さった登山客の皆様、一緒に上って下さった皆様、本当にありがとうございました。この大会に挑むことのできる人生は幸せなものでした。この場を借りて重ねてお礼を申し上げます。

続きのページは練習を含めた準備や当日のこと、更に観光まで可能な限り詳しく書きましたので、特に(トレイル年間0本、富士山の試走も0回での)完走狙いの方には参考になるかもしれません。全部読むには長過ぎるので、気になる部分だけご覧いただければ。大会に関わって下さった方に少しでも響く部分があれば嬉しいです。

昨年初めて上り切った時の思いは一生忘れません。

savarun.hatenablog.com

追記ふるさと納税は今年もやはり炭酸水(なんと35本)にしました。富士山で水が飲めることがどれほどありがたいことか、文字通り身に染みて理解していますので。

これで当分暮らしに困りません。

↓のバナーをクリックしていただけると、他の方の視認率が上がるっぽいです。どなたが押されたかすら私にはわかりませんので、軽い気持ちで是非。コメント等いただけると更に喜びます。

にほんブログ村 その他スポーツブログ マラソンへ
にほんブログ村

富士登山競走に向けた練習・準備

おそらくここが一番気になるところだと思いますので、詳しく書きます。富士登山競走に向けて文字通りの「特訓」をやった方ならわかっていただけると思うのですが、上り練習は、“怪我をしそうな感じがないため、なまじ連日追い込めてしまう(そして追い込まないと罪悪感すら覚える)”結果、オーバーワークになりがちな傾向があると思います。

私も、富士登山競走の準備期間はマラソン練習+上り練習のようになってしまい苦戦しました。基本的に走るのは朝ですが、トレッドミルや非常階段は終業後ですので、負荷が純増になってしまい、かつ夜に心拍数が上がることと夕食の時間が遅くなることで睡眠の質も落ちます。7月ともなると会社にいてもふと、“今日はトレッドミルを本当にこなせるのだろうか”とか“疲労が溜まってきた中で階段を上るのは本当によいのだろうか”とか不安になったりしました。富士登山競走は当日の苦しみも勿論ですが、そこに至るまでの準備期間が辛いと昨年学習済みなのに懲りないものです。それだけの魔力を秘めた大会なのだと思います。

勿論本当の力は長年に渡りトレイルの経験を積み重ねるのが一番ですし、山で速いランナーさんには全く太刀打ちできないのですが、私のように年間のトレイルが0本という平地の人でも山頂コースを完走できるという実例として参考になればと思います。

なお、昨年も書きましたが、みやすのんき先生の『サブスリー漫画家 激走 山へ!』は本当におすすめです。練習から完走ギリギリのタイムスケジュールまで、必要な情報が凝縮されています。是非。

スケジューリング

7/28までに上りの力、特に早歩きの力を強化する必要があることから、レースは詰め込まないようにしました。出場するにしてもかなり力を抑え、その後の練習が空き過ぎないように心掛けます。合言葉は“全ては富士登山競走のために”です。

美浜・五木ひろしふるさとマラソン(10km)、黒部名水マラソン、飛騨高山ウルトラ100km、函館マラソンに出場しましたが、いずれもシューズのフィッテングやロードの走力を落とし過ぎないための距離走、上りの練習といった具合で、とにかくダメージを残さずに継続して練習を積める状態を維持することを目指しました。

函館マラソンは例年の7月開催であれば間に合わないのですが、今年は6月にずれてくれたので、迷った末にギリギリ間に合うと判断してエントリーしました。この時期はトレッドミルに飽きてきていましたので、旅行を入れないとやっていられないという部分もありました。

savarun.hatenablog.com

savarun.hatenablog.com

トレッドミル(GW明け以降7/24(月)まで19回)

定番ですが、やってみると結構大変です。いわゆる鏑木トレミは傾斜15%で8km/hを2時間という話も聞きますが、私には(そしておそらくほとんどの人にとっても)絶対に無理です。成す術なく転げ落ちます。鏑木毅さんの偉大さは異次元だと思い知るところです。

GW明けからコロナが5類に移行して堂々とジムに行けるようになったため、週1から3で利用しました。傾斜15%で6km/hの歩きがメインです。最初は汗、退屈感と独特の動きのため20分くらいでも苦労しましたが、数回かけて給水なしで60分歩き続けられるようになり、体調に合わせて途中から0.1km/hずつビルドアップしたりしました。

注意したのはリズムです。心拍数は150bpmくらいですので、ロードの有酸素ジョグよりきついです。少しでも心の負担を軽くするため「健康ウォーキング」と称していました。

7km/hで走ることもあり、こちらは更に心拍数が上がり憂鬱です。最初は25分で断念して凹みましたが、その後5分ずつ延ばして40分を余裕を持って終われるようになりました。40分の平均心拍数は158bpmでしたので楽ではありませんが、疲労がより少ない状態で給水も工夫すればあと10分は確実にいけるという手応えはありました。“60分が山頂コース完走の目安”という説もありますが、そこまでできなくても大丈夫です(私はできません)。時計が気になると長く感じるので、かなり前の方で走りました。ロードの上りと違って腕振りはあまり活用できないと割り切ります。実際、バーに当たることもありませんでした。振り返ってみるとトレッドミルの効用は多岐に渡り、

  • 歩きのための筋力強化
  • 一定のリズムで歩く意識づけ
  • 退屈感への耐性強化
  • 発汗への耐性強化

と本番での歩きそのもの以外にも有用でした。

シューズは新しいものがそれしかなかったという理由でエボライドスピードを使いました。機能的にオーバースペックな点と若干重い点がトレッドミルには合っていない気もしますが、トレッドミルでも怪我のリスクはあるので、新品シューズを投入した方がよいです(走行距離わずか330kmでアウトソールが消滅したミズノのデュエルを洗ってトレッドミルの歩きに使用したところ、ふくらはぎ上部を痛めかけました)。

職場の階段上り(6月末以降7/23(日)までで7回)

鏑木毅さんが群馬県庁時代に非常階段の上り下りを繰り返しておられたことは有名ですが、富士登山競走は上りのみですので、非常階段を上ってエレベーターで下りることを繰り返しました。終業後にトイレで着替えてスタートです。目的は身体の使い方の確認と筋トレですので、一段飛ばしで歩きます

24階×4本から始めて×6本を問題なくこなせるようになりました。上っている時間は6本でも合計30分弱ですし、全体で60分かからずにこなせるので、比較的気楽に取り組めました。腸腰筋を意識して上から脚を回せると、身体が持ち上がり易く、かつリズムもよくなりました。呼吸はステップに合わせると楽です。非常階段はターンが多いのですが、そこも上手く回れるようになりました。最終的には28分を切りました。そして合計888フロアを上ったようです(末広がり)。

エレベーターに乗る関係上、色々な部署の方に目撃されて最初は恥ずかしかったのですが、次第にどうでもよくなり、それよりも“やるしかない”という気持ちでいっぱいでした。休日にこれだけのために会社に出向いたことすらあります。実感として、次の効果が感じられました。

  • リズムよく階段を上るコツの習得
  • 視線を高く保つことによる重心移動の感覚の習得
  • 筋力強化によるダメージの軽減

なお、職場では完全にネタとして“避難経路の確認を行うことは従業員の責務”とか言っていましたが、有事の際に上りの局面などありません。シューズは何でもよさそうですのでナイキフリーにしました。

ロードの上り@金沢(6月半ば以降7/17(月祝)までで6回)

在宅勤務が激減したため、金沢に帰省できるのも実質週末に限られるようになってしまいました。仕方が無いので月に二回くらいは帰り、野田山(→1.2km↑100m程)をメインに上りの練習を入れました。

貴重な機会なので6本を二日続けて行います。坂の下の方は割と緩やかですが中の茶屋くらいまでのイメージです。後半の激坂は本番より急なので、精神面も鍛えられます。気温と疲労度で時間は大きく変わりますが、かなりゆっくり走って9分30秒程、雨の日の6本目に頑張って7分40秒程でした。

新盆の時期は車が増えるので、代わりに平栗側の坂(→1.2km↑80m程)を使ったり、卯辰山(→1.4km↑100m程)6本にしたりと変化もつけました。熱中症警戒アラートが出ていましたが、日陰メインで水道も多用したことで一応無事にこなせました。準備期間前にも、内川ダムや平栗いこいの里といった奥地まで走ったり、少ない本数でも野田山をこなしたりしていました。

7月の三連休は三日合計で1,900m上ったことになっていました(ガーミンさん調べ)。それ自体は大した獲得標高ではありませんが、どんなに暑くとも連日当たり前のように上りを繰り返すことで何かが強化された感覚はありました。例えば一日で1,900m上って満足感を得た一方で、練習全体で8時間かかり消耗し切って翌二日はまともに走れない、といったパターンより、私にとってはずっとよかったと思います。

ロードの上りはやはりロードが一番いい練習になります。腕振りの位置、大きさ、地面からの反発もトレッドミルとは全然違います。ロードの走りを体得できるメリットがある一方、下りのせいでどうしても練習時間が長くなってしまうのと、下りは飛ばしても抑え過ぎてもダメージを負うのは避けがたいというデメリットもあります。フォーム以外の精神面でも、次のような効果がありました。

  • つづら折りが続く場面で遅くてもとにかく動き続けるイメージは大石茶屋跡から馬返しまでの踏ん張り所でものをいう
  • 日陰がどれくらい暑いのかのイメージが身体で掴めるため、五合目までの気温に対する不安感が押さえられる

シューズはasicsのハイパースピード、エボライド2、エンペラージャパン3、Nikeズームフライ3などを使用しました。

平地のランニング

あまりに歩きと上りの練習ばかりだとマラソンシーズンに身体を戻すのが大変なので、最低限のランニングは継続しました。

平日朝は可能であれば有酸素ジョグを入れましたが、7月も近くなる頃には、回復が間に合わなければトレッドミルを優先することとしました。有酸素ジョグは140bpm前後で、ほとんどタイムは気にせず感覚で走ります。概ねキロ5分10秒から30秒辺りが多かったと思います。

6月まではシューズのフィッテングを兼ねて5kmを20分弱の閾値走もやりましたが、7月になると暑くなって気持ちが持たないこともあり、2分オン1分オフ(キロ4分くらい)×5~10という疲れを溜めずに動きを確認するメニューも入れました。

週末に大会がなく、金沢にも行かない時は大阪でロングジョグにしました。ペースは遅いのですが、朝起きられないと暑いので、止まってでも水分は摂るように心掛けました。それでもかなり身体に悪い練習になってしまったように感じます。

シューズは asicsエボライド、ハイパースピード2、ミズノエンペラージャパン、エンペラー2、ニューバランスHanzo R、Nikeズームフライ4といったところです。

懸垂

上半身も使わないと確実に衰えるので、申し訳程度に週一から二回程度やっておきました。別にきれいにできなくてもよいので、腕と背中に刺激を与えることを目的としました。懸垂ができる高鉄棒って結構少ないんですよね。

去年やったけど今年やらなかったこと

  • プランク等の体幹レーニング:在宅勤務時の昼休みには手頃なのでやっていましたが、在宅勤務が激減したことが災いしてやらなくなりました。トップ選手なら必須なのかもしれませんが、どちらかと言うと歩く際に使う筋肉を意識することの方が重要な気がします。
  • インターミッテント走:30km走ったのと同等の有酸素能力の向上が得られると期待して昨年は犀川で何度かやりましたが、今年は舗装路でスピードを出すのが怖かったこと、それよりもできるだけ毎日歩きや階段を入れる方が大事なこと、有酸素能力を伸ばしたいなら真正面から長めのジョグをするべきと考えたことからカットしました。
  • 本気のスプリント:リディアード的には毎週やれということですが、昨年直前に石を踏んで捻挫しかけたこと、地味な階段トレーニングをサボる言い訳にしそうなこと、おそらく優先度は高くないことから見送りました。

リカバリ

ラソンの練習以上に限られた時間で継続して特殊訓練を積み重ねる必要がありますので、練習が終わったら即リカバリーです。プロテインプロテインバーは勿論、最後の方は贅沢にアミノ酸も飲んでいました。1本100円くらいですので、それくらいは出します。

静的ストレッチも普通のランニングだけならほとんどやらないのですが、トレッドミルにしても階段にしても普段使わない筋肉が動員されること、特に階段は筋トレ要素が強いことから、疲労度に応じて寝る前に大殿筋やハムストリングス、ヒラメ筋や腓腹筋などを伸ばしたりしました。

夜も眠れないと辛いので、7月の途中からは遠慮せずにエアコンも使いました。当たり前ですが、夜中の覚醒も減り、毎朝フレッシュな状態で起きられました。

幸い食欲は夏になっても特に落ちないので、肉、魚に乳製品と野菜を存分に食べます。多分ですが、糖質は取った瞬間は快楽が得られるものの、夏バテの呼び水になる気がします。水分補給はかなり小まめに行いました。

最終週の練習は次の通りです。
土曜:平地有酸素ジョグ86分(16km程)
日曜:2分オン1分オフ×10、階段24階×6本
月曜:スロージョグ+懸垂、トレッドミル60分(6km/h)
火曜:アップテンポ1km(3:42)
水曜:スロージョグ39分(キロ8くらい)
木曜:オフ。移動。

当たり前ですがコロナは5類に移行したところで危険なことに変わりはありませんので、飲み会など断固拒否ですし、食事も一人です(元々昼食は食べないので軋轢は生じません)。職場で何かをもらったのか6月には痰が絡んだり咳が出たりする日もあったにはあったのですが、発熱や眩暈で練習ができないといったことはなく、無事に日々を過ごすことができました。

あと、ジムに行く度に体組成測定を行ってみました(計測大好き)が、2か月半で特に顕著な変化は見られませんでした。筋肉量が若干増えたと思いたいところですが、誤差の範囲のような気がします。毎回安定しているのは推定骨量くらいでした(3.2kg)。体脂肪率も5.5%~8.5%と結構幅がありますが、6%台が多いです。体重は66kg前後です(身長182cmでBMIは20前後)。昨年より2kgは軽いので、これだけでもかなり有利です。

装備

シューズ:asics ターサーRP3(28.0cm)

基本的に、馬返し以降の歩きで負担にならないよう軽いシューズを選びます。馬返しまでも上り一辺倒で着地衝撃はそこまで強くなく、距離も長くないので、結論として薄底で反発の強いものを探し求めることになります。富士登山競走は下りでアウトソールが大きなダメージを受け、一発で使えなくなるため迷いましたが、“これだけ練習しておきながら、シューズをケチって不安を残しました”では嫌ですので、新品のターサーRP3に託すことにしました。私のように完走ギリギリのランナーは、新品シューズを奢ることも含めて全てやるしかないのです。来年があるかなんてわかりませんし。9,000円程で入手できましたので、完走の喜びのためなら安いものです。

流石はターサーという完成度でした。また買おうと思います。

本番までにフィッテングを兼ねて3回履きましたが、非常に軽く、フィット感、程よい反発も含めて文句のつけようがありません。最近上手くいっている実績上27.5cmが欲しかったのですが、28.0cmでも問題ありませんでした。

他にはニューバランスHanzo Rも軽くてよかったのですが、アウトソールの感触がやや柔らかいのと、閾値走で力んで足の甲を痛めかけたことがあったため、本番で不安がよぎってはよくないと考えて見送りました。

ミズノエンペラージャパンもガツガツ地面を削るような硬い感触が大好きなのですが、走行距離が330kmを超えており反発が弱くなっていることから諦めました。エンペラーシリーズがあれば欲しかったのでかなり探したのですが、価格やサイズで条件が折り合わず終いでした。

ウェア

昨年と同じくアンダーアーマーノースリーブ水色、ミズノ360°マルチポケットにユニクロエアリズム、ザムストソックス、ニューハレXテープ二重です。

自分的に必須なのは七合目以降で頼りになる手袋です。去年100均で買ったものがまだ元気なので、今年も頑張ってもらうことにしました。岩場で躊躇わずに手を使えるので欠かせません。

キャップは今年も使わずです。今年は猛暑ということもあり、大半の方がキャップを着用していたと思います。ですが、浅間神社までの15分さえ過ぎれば五合目までは基本日陰で活躍しませんし、六合目から先はヘルメット着用で頭皮は守られますので、やはりあまりメリットはない気がしました。首筋を守るためにインナーサンシェードは持参しました。

センサーは、締め付け感や落とすのではという不安があるので今年もなしです。心拍数はともかくピッチや上下動なんてデータを取っても今後に活かせませんし、電池の無駄だと判断しました。

持ち物

今年はプラコップを用意していただけるのでマイカップは持参しませんでした。マイカップの利点はおかわりの際遠慮しなくてよいということですが、プラコップでもおかわりはタンクから注げば一個の消費で済むので不要と考えました。

道中で急に水分を欲することはあるので、ジェルフラスコは一つ持参しました。スタート時にはアミノ酸と少し濃いめの経口補水液を入れておきました。走っている時に落とさないよう、常に深く入れるように注意します。

補給食はアミノバイタル粉三袋2runのみです。ジェルは昨年使わなかったので今回も用いずです。

現金も小さな袋に入れて500円だけ持っていきましたが、今思えばトイレ代にしかならないので、ドリンク+トイレ代で700円か、カップラーメン用に更に1,000円といった感じで使い道に応じた金額を用意するべきだと思います(今更)。

下山も大変なので、参加賞のポンチョと家で余っていた安物マスクを一つの袋に入れて腰のポケットに納めます。砂礫侵入防止用の靴下ゲイターもビニールに入れて腰のポケットに配置します。レース中は腰のポケットは操作しにくいですし、出し入れがあると落とし物リスクも高まりますので、腰は一切触らないことに決めています。富士山で物を落とすことは過失でも許されませんから緊張します。

五合目に運んでいただける緑の袋には、着替え、タオル、ボディシート(重要)、日焼け止め、現金3,000円、経口補水液プロテインバー二本を入れました。

これくらいならそこまで重たく感じませんでした。

前日(受付)

7時半まで眠り力を溜め込みます。朝食はキャベツと人参の塩麹酒蒸し。人参、小松菜も加えます。卵と納豆で普段と変わりません。旅先であれこれ食べるので、家で張り切って食べてはなりません。

豚肉のビタミンB1にはいつも期待しています。

経路はほとんど迷うことなく、去年と同じです。新大阪→静岡  (ぷらっとこだま 10:54発13:23着)静岡→三島 (ひかり自由席 13:41発13:57着)三島→河口湖(バス 14:20発15:50着)河口湖→富士山(16:19発16:25着)でした。

新大阪では堂島ロールやサンドイッチの誘惑がありましたが、屈することなく観賞のみでよしとします。こだまは始発だからか随分早くからホームに待機してくれており、涼しい車内で休めました。車内のおやつはプロテインバーです。あと、水を小まめに飲みます。

新幹線では朝永振一郎『鏡の中の物理学』を読んでいました。自然科学は心理的なストレスがないので、レース前は頼りになります。小説は辛い感情が頭に残るリスクがあるので避けます。

静岡駅では昨年同様リトルマーメイドに寄って験担ぎをと思ったものの、18日から改修中だったようで買えず、三島駅前でもわさびソフトの類いがなかったため、プロテインバーだけ食べて移動を続けます。三島からのバスは何も考えずに左側にしましたが、西日が暑いですしカーテンを閉めると景色も見えないので、右にするべきでした。ラッキーなことに予定より数分早く河口湖駅に着いてくれたので15:50発の電車に乗れて余裕が生まれました。しかし文豪とは……。

三島といえば山葵です。

ぶ、文豪……。

まずは富士山駅Q-STAの屋上から富士山を眺め、やはり大き過ぎると尻込みします。しかし昨年も届いたのだからと幾分落ち着いて向き合うことができました。

明日はよろしくお願いいたします。

続いて一階でパンを物色します。サンクルーさんのチョコ三昧と、KOPANさんのイチジクとビターチョコの塩パンです。いずれもおいしかったです。明日の下見を兼ねて金鳥居を見上げつついただきました。

セレクトショップですので色々なお店の商品が揃います。

歩くと急な坂のように感じますが、当日は走れます。

そのまま坂を下ると木村屋さんが。どれもおいしそうで迷いましたが、ずんだ生クリーム、小倉餡バター、フリュイを選択。甘さもパン生地もとても好みでした。惣菜パンも気になるところです。

品数豊富で目移りします。

食べ過ぎないようにするのが大変です。

ろくに調べもせずに去年のノリで富士吉田市役所に行ったところ、受付は市民会館ということで出直します。まああの壁画と歴代優勝者のお名前を見られただけでも来た甲斐がありましたし、コースの下見にもなったので全然OKです。

圧が凄すぎて。

明日のスタート直後のコースも確認できました。

市民会館は2019年に来て以来です。当時のように出店が沢山というわけではないものの、またここに来られて満足です。参加賞の中には西裏地区で使える500円券が入っていたので、それを握りしめて人気のいづみやさんへ行きます。17時30分頃で既にかなりのにぎわいぶりでした。翌日山に上る人だらけでしたが。

ゲートの前で記念撮影される方も多数。

何かと気の利いた参加賞達です。

タオルもお洒落です。

このところ豚肉が続いていたものの、やはり縁起を担いでカツが食べたいところなので、ここはヒレカツ定食を選びます。食べてみると、“え?えらくおいしいのですが!?”という(若干失礼な)驚きがありました。こんなにしっかりしたヒレカツが食べられるとは、このお店に来てよかったなと実感します。ここは本当におすすめです。

またお気に入りのお店が増えました。

昨年もソフトクリームを買ったローソンで験担ぎをしてから、今日のお宿、ゲストハウス縁さんに向かいます。何と二階のベランダで到着を待っていて下さり、入ると設備の説明などもそこそこにオレンジを切って下さるというご親切ぶり。更に“明日は送りますよ!”というご厚意までいただき、心強いことこの上ありません。そしてお部屋も広く、富士山が見えるとのことですので明日が楽しみです。荷物を整え、お風呂に入って21時過ぎには消灯です。夜は急に涼しくなるので、エアコンの出番はないと見て窓を開けて寝ました。

富士山もまだその姿を確認できます。

レース

レース前(万全の準備とエイエイオー!)

4:40頃に目覚めました。夜中蚊が気になったり変な夢を見たりもしましたが、概ね眠れましたし眠気もありません。普段レース前に酷評してくれるガーミンさんも心拍数43、Body Battery90(早起きすると数値が正しく出ず、どちらもおかしな数字になるのが通例)と甘々な評価です。できない理由がありません。部屋からもくっきりその姿が見える富士山に向かい、必ず頂上までいくのだと改めて決意を固めます。

山肌がくっきりと見え、山頂まで行こうと覚悟します。

朝食はパン二つと牛乳、卵にチーズ、おまけのプロテインバー一本ということで、フルマラソンと変わりません。トイレはここ数日の感じからして大丈夫そうだったので気にしませんでした。

食べるものも大体固まってきました。

オーナーのご厚意で市役所まであっという間に送り届けていただき、笑顔で完走を誓います。市役所にはもう沢山のランナーが集まっていて、ただならぬ気合に満ちています。勿論心に余裕があって比較的気楽そうにされている方もいますが、全体に緊張感が伝わってきます。まあ自分がそうだからというのも大きいでしょうが。

とってもよきお宿でした。ありがとうございました。

会場では今年もアミノバイタルが配布されており、ありがたくスタート前に補給します。これは明らかに効果がある(レース中の疲労とレース後のダメージの軽減)ので、レース前は必ず飲むようにしています。お水と共に応援のお言葉もいただき、早朝から準備して下さっている富士吉田の皆様には頭が下がる思いです。

それぞれの思いを胸にスタートに集います。

荷物も預かっていただき、スタートの方へ移動します。スタートセレモニーでは名物である消防士の宮下さん、の娘さんの「今日のビールはおいしいらしいですよ」という可愛らしいエールに和んだところでエイエイオーを三本やって皆いよいよと昂ってきました。スタート直前には、司会の方の呼び掛けで周囲のランナーさんとハイタッチして健闘を誓い合い、“やはり富士登山競走はこの連帯感が違う、一緒に頂上に行きたい”と強く感じました。

去年はDブロックで、ここからのスタートでした。

皆様、一緒に頂上へ行きましょう!!よろしくお願いいたします!

レース開始

前半戦:ロード区間(馬返し63:47)

スタート~中の茶屋

Cブロックの後ろの方に陣取ったため、スタートロスはそれなりにありました。ですが、たかだか数十秒だと思いますので気にしません。最初の直線は接触に注意しながら進みます。よく“最初から突っ込む”という話を聞きますが、この渋滞ぶりでスピードを出すことは到底できず、ただ流れに乗るしかありません。

左折してからいよいよ富士山目掛けて上り始めます。ここも流れに乗って行くだけで金鳥居を7分程で、左折まで13分弱で通過できましたので、焦る必要一切なしです。完走ギリギリのタイムスケジュールは、先述のみやすのんき先生の本に準拠しています。

とにかく最後まで上り続けるしかありません。

あろうことか浅間神社では水を取れなかった(混雑時に怖い人と接触したくなかったのと、もう少し奥にもテーブルがあるだろうという読み間違えによる)のですが、怯むことなくジェルフラスコで給水して進みます。スタート前にも沢山飲んでいますし、トレッドミルは基本汗だく無給水ですのでどうということはありません。辺りは木陰ですし、熱中症警戒アラートの中ロードの上りを繰り返した経験も生きたのか、暑さも左程感じませんでした

気にせず走っていると、高架下まで来ました。“全然頑張っていないけど遅いのでは”と時計を押すと26分台で去年より速かったです。給水失敗が吉と出たのかもしれません。三叉路もよく分からないうちに33分台で通過し、応援の方からの「茶屋まで500mですよ!」の声に勇気づけられます。

(途中やたら唾を吐きながら走る人がいようとも、注意したところで逆ギレされるだけですし、こういう人達は自宅の前に見知らぬおっさんが大量にやって来て唾を吐き捨てて行っても何も感じないのでしょうから、考え方の違いだと割り切って無視できるようになりました。)

手元38分と少しで中の茶屋に至り、余裕度的に昨年からの成長を感じました。

中の茶屋~馬返し

概ね3.6kmで340m上るロードの正念場です。中の茶屋から大石茶屋跡までは足元も荒れ、昨年は苦戦した記憶がありますが、今回は特にしんどくなる感じもなく進みました。大石茶屋跡で概ね2/3ですので、“あと1/3で馬返しか”と気楽なくらいでした。
その先は大きく言えば二回程コーナーを過ぎると駐車されている車が見えてきて、“まだもう一折り返しくらいあるのかな”と思っていたところ、あの柵が現れて唐突に終わりました。野田山の上りの繰り返しにより、スピードが落ちても一々動揺しない力が育まれていたようです。

前半戦:トレイル区間(五合目2:01:38、ラップ57:51)

馬返しではレモンと共にたっぷりの水を摂り、きっちりゴミ箱に託してからマットを踏んで再出発です。その先のトレイルの歩きはかなり難しかったです。周りとの距離感というか、ここは前に出てよいものかの判断に難儀します。“行けるかな”と前に出ようとすると道幅が狭くなり出られず、下手をすると怒られますし。まあ自分は山の経験が圧倒的に少なく、わざわざ注意して下さる親切な方の仰ることが正しいのでしょうから、特に何を思うでもなく淡々と歩くのみです。

確か一合目と三合目辺りがやや混雑したような記憶があります。後ろから頑張って抜こうとする方には“どうぞ行って下さい、頑張って”と悉く道を譲り、心身のエネルギーを節約します。昨年の芹澤選手のお話も心に刻んでいます。性格的な部分もあるのでしょうが、私くらいのトレイル対応力であれば、ちょっと前に行ったくらいでは何も起きないので別にいいです。でも“どうせ前に出てもなぁ”と頑張るインセンティブが無かったせいで多少だれたことは否定できません。

トレイルパートではやはり階段トレーニングの経験が生きたようで、呼吸とのリズムを合わせて上れる場面もありましたし、何より筋肉が段差の動きに順応していたのが大きいように感じました。大きな段差は手押しを使い、ハードルや落とし穴ではミスさえしなければよしというスタンスです。

自分の動きで“トレイルが下手だな”と何度も思ったのは、段差を上った後に後ろ足のつま先が引っかかってバランスを崩すシーンの多さでした。後もう少しだけでもスッと引き上げることができればもっとスムーズに進むのでしょうが、やはりこの辺りは経験を積むしかなさそうです。自分の足の動きが身体で分かっていないようです。

(途中おそらくコース外で立小便をしたであろうお年寄りがいたのですが、この爺さんを待ち受けるのは①反則の汚点が残る完走か、②反則までしたのに関門アウトかしかないので、“いずれにしても不幸なものだ、爺さんに幸あれ”と思ったくらいで後は全く気にしませんでした。)

このパートは給水が二合五勺の一度だけだったのですが、何を勘違いしたかもう一回あるだろうと思っているうちに応援の方が鳴らして下さる鈴に励まされて滝沢林道に出て“あ、これこのまま五合目だ”とようやく気付く体たらくでした。このロードも普通に速く走れましたし、カーブを曲がって右折してからの再度のトレイルも普通に歩き、五合目関門の前の坂も“結構角度があるな”と思いつつも走って上れました。

区間タイムは昨年より縮められましたし、まだまだ体力も残っています。参加者増の大渋滞さえなければ届きそうです。

後半戦(山岳パート)

五合目~八合目関門(3:37:31、ラップ1:35:53)

昨年より上手く歩けた赤土エリア

ここからが本当の富士登山になりますので、まずは給水でしっかり回復します。こちらではバナナレモンもいただきました。持参した2Runも2つ飲み、アミノバイタル粉も一つ摂ります。ボランティアスタッフの富士吉田市看護専門学校の学生さんの笑顔が眩しく、声援が嬉しいです。天気もよかったので下界の景色も撮影しておきました。

最高の笑顔で応援していただけました。感謝です。

今日は遠くまで見渡せます。

この先一段上ったところでヘルメットを受取りますので、サンシェードもポケットから取り出して装着します。この先が渋滞ポイントのはずですが、まだ割と普通に流れていて、概ね歩き、数か所で軽く走るという感じでした。

安全指導センターの給水まで問題なく辿りつき、いよいよ赤土の上りです。目の前を見るとやはり“こんな角度はなかなかないな”と思うくらいではあるものの、昨年の経験があったためか、意外と短く感じました。

特に、後ろで手を組むパワーウォークがぴったり嵌まりました。足元が崩れやすいので、どうしても視線は下を向きがちですが、実はそうなると上手く体重が乗せられず、かえって余計に崩れてしまう場面が多かったように思います。後ろで手を組むことで、自然と視線も上に上がり、更に腸腰筋で上から脚を回すように動けて、足元も崩れにくくなりました。地面反力を利用できない場面では腕は重りでしかないので、固定する方が邪魔になりません。

腰に手を当てるフォームもあるのですが、これは横の人に当たったりコースを塞いだりで小心者としては気を遣う上に、手が滑ってしまう点もよくないと感じたため今年は全く用いませんでした。

膝の手押しは、大きな段差なら必須ですし多用しましたが、上り坂で歩くにはややオーバースペックだと思いました。

岩場と山小屋のスーパーマン

気付けば花小屋給水前の岩場まで来ていました。手袋を嵌めるとガンガン手を着けるようになりますので、ここはむしろ脚を温存できると喜ぶエリアです。ただ、この先も岩場のコース取りは難しく、結構ロスが多かったようにも思います。頭を上げられず、視界が狭いのもよくありません。欲を言えばもう少し脚でリズムよくポンポンと上がれればよいのでしょうが、自信もないので上半身の力に頼りながら何とかしました。

ここからは山小屋が次々と登場して気分転換になるのですが、途中でランナーが落としてしまった塩タブレットをわざわざ拾って進まれる方がおられて胸が震えました。誰しも苦しくて不安なこの状況でのこの姿には勇気をいただき、思わずお礼を言いました。このお方のことは覚えておきたいとそのナンバー268の背中を見上げます。府川健一さんという小田原消防署の方で、本当にかっこよかったです。後に山頂で再会を果たし、改めてお礼をお伝えできました。

事前に山小屋の名前を全て覚えることはできなかったものの、大体これくらいの時間で給水ということはインプットしていましたので、あまり不安にならずにコツコツと進むことができました。山小屋前の平坦部分は全然問題なく走れました。自分でも意外なことに、高山病らしき症状は全く出ず、呼吸は常に楽でした。時折意識的に深めの呼吸を入れたのも、水をたっぷり飲んだのもよかったです。こんな高地にまで沢山の水を運んで下さる皆様のお陰で無事に走れるのだと感謝し切りでした。

富士山ホテルの関門へ

岩場に飽きてきた頃にまた赤土の上り坂になりましたが、ここでも腕を後ろに組むことで問題なく上れました。周囲もABブロックの方が大半になり、この方々の流れに乗っていさえすれば完走は間違いないという安心感も芽生えてきました。登山道には一般の登山客の方も沢山おられ、“折角富士山を楽しみに来られたのに、こんなに恐ろしいランナーが下から上ってきて申し訳ないな”と思うものの、「すみません」「ご迷惑をおかけして」「ご協力いただきありがとうございます」などと申し訳程度にお声がけするくらいしかできません。しかし皆様笑顔で応援して下さり、本当にありがたかったです

いつの間にか元祖室に到達し、“これはもうかなり上ってきたな”と認識します。八合目関門が近づき、「関門まであと20何分」という声が聞こえてきます。昨年は3時間43分台でしたので、これは大分余裕があると分かります。ただ、昨年同様、どうもマットを踏むわけでもないようで、どこで関門を通過したのかよく分からず終いでした。多分、「別館」とあるあそこだと思うのですが。

ともあれ、ここから35分程度歩き続けるだけで山頂ですから、ほぼ確実にフィニッシュできると思いました。少し下の道を歩いている方からも、「行けるぞ!」という声が響いてきてこちらも元気づけられます。

九合目~山頂(山頂4:10:31、ラップ33:00)

御来光館で最後の給水、もう残り時間と体力から見て確信があったので、しっかり水を飲んで手堅くいきます。呼吸も相変わらず問題ありませんし、暑さも感じません。前半抑えたことが吉と出たのかもしれません。

九合目の鳥居が近づいてきたので、“せめてここくらいは写真を撮って、(自分を含めて)なかなか富士山に来る機会のない人にもこの景色をお届けしたい”という気持ちが湧いてきたので、手袋を外しスマホを取り出して鳥居に刺さった小銭と、そこからの眺めを撮影しました。視界も良好で、記録できたことはよかったです。歩きながら、眼下の光景を気持ちよく感じていました。ここで3時間56分台です。

日常では絶対に経験できない世界です。

その先に少し岩場がありますが、昨年よりタイムも心も余裕があったため、無駄に焦ることもなく、“まあこういうもんだから”と落ち着いていました。確かに遅くなりますが、最終的に間に合う位置にいることは間違いありません。

見上げると最後の鳥居がはっきりと確認でき、周りのランナーさんからも喜びの声が上がります。私の中でも、ここに至るまでの道で支えて下さった富士吉田の皆様、笑顔で道を譲って下さった国内外の登山客の皆様、一緒に上って下さったランナーの皆様への感謝の気持ちが溢れ、「皆ありがとう」と声に出しながらその鳥居に向かいます。
鳥居を潜ってからは笑顔でダッシュしました。昨年とは対照的です。マットの上を駆け抜け、隣の方とガッチリ握手しました。そして会心の笑顔の後には、一番空に近いこの場所まで約束通りにもう一度来られたことを思い、少し涙が出ました。

完走後

山頂でのランナーさんの優しさ

給水をたっぷりいただき、空の向こうをぼんやり見渡し、少し余韻に浸ってからフィニッシュエリアの方へ行きました。昨年はよく分かっておらずここの写真を撮れなかったため、今年はしっかり残しておこうというところです。

本当に上ってきたのだとようやく実感する瞬間です。

もうあと少しです!間に合いますので頑張って下さい!

向こう側ではより映える写真が撮れるため、列ができていました。

独りで写真を撮っていると、隣に立っておられたAブロックの男性ランナーさんに「写真撮りましょうか?」とお声がけいただいたので、是非にとお願いしたところ、随分沢山撮っていただきました。こちらもお撮りせねばと伺ったところ、今回はスマホも何も持たずに走られたとのことでお返しができませんでした。何とかご連絡先をと思ったのですが、生憎私がLINEもFacebookもインスタも悉くアカウントすらない(今時!)というキワモノだったためそれも叶わずでした。しかしこのニッチなブログの存在はお伝えしましたし、もしこんなところに目が留まることがあれば、ご一報いただけますとツイッターのDMならお送りできると思います。まあ私との2ショットというあまり嬉しくない代物ですが……。

本当の最高点である剣ヶ峰をバックに記念撮影する方も多く、ここではお互いに健闘を称え合いながらスマホで撮影し合います。こうして初対面の方ともお話しできるのも富士登山競走の一体感ならではです。“今回で10回目の完走なので卒業しようかな”という猛者もおられ、ただただ敬服するばかりです。

なかなかあちらまで行けるチャンスもありませんが。
五合目までの下り

昨年も書きましたが、富士登山競走は、“本当のゴールはバス乗り場”という説もあるくらい、下りが長くて辛いのです。しかも最終のバスが14時という、なかなか厳しめの設定です。カップラーメンは絶対においしいのですが、小心者の私としては、食べながら余韻に浸っているとバスを逃しかねないとの不安に勝てず早めに退散することにします。参加賞でいただいたポンチョと、靴下ゲイター、安物マスクを装着して下山開始です。

カップラーメン1,000円の価値はあります。

もう少し浸っていたいのですがやむをえません。

ダサくとも効果はあります。

ガーミンさんの高度計もそれらしい表示です。

昨年は前夜に雨が降って砂ぼこりが抑えられましたし、足元が崩れたりする場面も少なかったように思いますが、今年は舞い上がる砂塵の中を滑りながら下るというなかなかハードなものだったように思います。トレイルの下りは長らくやっていないので、上手く走れるはずもなく、浮き石を踏んでスリップして転倒することも何度かありました。幸い派手な転倒はなく、手や尻餅をつくくらいで流血はなかったのですが。

自分がとりわけ下手なのかなと思って周りを見ると、自分からすれば月とすっぽんくらいの力の差があるはずのAブロックの方すら下りにくそうにしておられたので、多分今年は難しかったのでしょう。

写真だけ見るときれいですが、とにかく辛いです。

特に六合目に辿り着くまでが修行なのですが、途中やってられなくなったので、気分転換も兼ねて七合目でトイレに寄りました協力金200円を納めて三方よしです(三方?)。

この坂道を上れる車両のすごさよ。

一時間程でこの景色になり、一安心です。

何はともあれ7km強の道のりを71分程(一般の登山客も多く、ご迷惑をおかけしないために歩く場面もあり)で荷物置き場に至ったので一安心です。ここでもアミノバイタルゴールドを配っておられますので、ありがたくいただき、自衛隊の皆様の給水にもきっちりお礼を言えました。

本当のアフター

レース後

五合目、道の駅富士吉田、富士山駅

手荷物に入れておいた3,000円を手に五合目レストハウスでお土産を物色し、溶岩黒饅頭を選びました。チョコ系は溶けますし、見た目のインパクトを狙うと選択肢は結構絞られます。今年は昨年ほど喉が渇いていなかったので飲料は買わずです。

お土産は見た目が全てです。

帰りのバスはかなり並ぶかと覚悟していましたが、せいぜい10分程待っただけで乗れて全く問題ありませんでした。バスの中は静かに、色々なことを考える時間でした。

多くの方の支えにより生きて戻ることができます。

今年も40分程で道の駅富士吉田に着き、荷物を受け取ってシューズのチェックなどを行います。ターサーRP3のアウトソールは見るも無残に大破しています。下りの砂礫恐るべしです。踵は以外と無事でしたが。

ここまでのダメージを受けるとは……。

靴下ゲイターは安全ピンのお陰でずれず、足首からの砂の侵入はかなりの程度抑えてくれました。しかし当然ながら底部は消滅していました。よくやってくれたと思います。それでもそれなりには砂が入っていてうっかり脱いだ時にこぼれたので(懸命に拭き取りました)、最初からビニール袋に足を突っ込んで脱げばよかったなと反省しました。
ザムストソックスは洗っても砂が取れないと判断し、ここで別れを告げました。元々親指の穴も空いていたくらいで、長いことお世話になりました。

一定の効果はあり、立ち止まる程の砂の侵入はありませんでした。

着替えと持ち物の整理を終えると、お待ちかねの打ち上げタイムです。勿論今年も牛乳を買います。更に気になったほうとう饅頭シャインマスカットの富士山くずキャンディーも。ほうとう饅頭は半分ネタかと思っていたところ、南瓜も入って予想外においしく、見くびってすみませんでしたと心の中で謝りました。くずキャンディーはひんやりしていて甘さがまたたまらないです。

ほうとう万頭はラス一でした。

この時間になると閉会式も終わっていましたが、まだキッチンカーは残っていて下さったので、カーポリーナさんお手軽ロールピザを選んだところ、照り焼きチキンのみならずチーズと生地が大変おいしくて身も心も大喜びです。

もしかするとテレビで見たことがあるかもしれません。

お水も少しいただきました。

会場から富士山駅まで送り届けていただき、特に予定もないので地元のベーカリーに行くぞとアマノベーカリーさんまで歩きました。随分お手頃価格だけどいいのかなと思いつつ、ベーコンチーズ(定番ながらチーズもしっかり入っていて嬉しい)と餡バターデニッシュ(間違いなくお値段以上においしい)を選びました。“お陰様で山頂まで行けました”とお礼をお伝えできたのもよかったです。

沢山買えてしまう良心的なお店です。

朝皆で駆け抜けて行った金鳥居とその先の上りを見届け、本当に走ったのだろうかと不思議な気分になりつつ駅に戻ります。駅前で声をかけられるままに甘い桃のソフトクリームを食べてから河口湖へと移動します。

一日終わったのだな、と。
河口湖駅

今日のお宿は富士山リゾートホテルさん。駅から1.6kmと少々距離があるものの、きれいな設備に大浴場もあっての4,700円はただ同然です。平日万歳。

私なぞには勿体ないくらいのお部屋です。

夕食は肉を欲したのでポワルさんへ。こちらは凝ったデザインのお店でありながら馴染み易い洋食レストランといった感じで、その雰囲気には何だか懐かしさを感じました。色々食べたい気分に任せてメニューの最初に登場するよくばりプレートの1番にしました。ハンバーグ、唐揚げ、ポテト、サラダ、ミニドリアと食いしん坊万歳な布陣です。お肉も食べ応えがあり満足しましたが、普段全く食べないドリアがよかったです。“ホワイトソースとはおいしいものだな、これと米を組み合わせた人は偉いな”、と。

お店の方も明るくてとてもよかったです。

宿に戻り洗濯と乾燥を済ませ、翌日の準備を済ませて消灯です。この一年のことを思い出し、果たせたこととそうでなかったことがグルグル巡っているうちに眠りに落ちていました。

翌日

河口湖の逆さ富士

気づけば6時、快適過ぎて寝坊しました。昨年は興奮と疲労でろくに眠れなかったのですが、今年は熟睡できました。心拍数が49と少し高く、Body Batteryもろくに回復していませんが、レース翌日にしてはましですし、何より8時間近く眠れた事実は揺るぎません。

手早く着替えて起床10分後には観光スロージョグへと出掛けます。案の定腿前は下りでダメージを受けて普段にない筋肉痛に見舞われました。歩くのに支障はないのですが、正座はちょっと勘弁してほしいという具合です。他方、昨年筋肉痛に苦しんだ臀部はほとんど辛さを感じず、頑丈になったものだと思います。上半身はあれだけ使った割には背中に少し疲労があるくらいです。ふくらはぎも伸ばすと外側に疲労感がありますが、そこまで酷使しなくて済んだのでしょう。

涼しくて人の少ない朝は観光ジョグには最適なので、2019年と同様、湖畔を巡ることにします。キロ8分くらいですので時間的にあまり遠くには行けず、河口湖の西の方をちょろっと回るだけですが、富士山は一日の中でもどんどん姿を変えるので、可能な限り見届けておきたいところです。

ホテルからも駅からも、見間違えようのないくらい鮮明に見えます。

朝はまだ涼しいです。

ゆっくりと巡ります。

遊歩道の木陰の中をゆっくり進み、逆さ富士と向き合います。日差しが強すぎると見えにくいですし、太陽の向きもありますので、やっぱりこの時間に来られてよかったなと思いました。

こんな素敵な経験をさせていただけるとは。

河口湖大橋を渡り、バッティングセンターが健在であることを確かめ、船津浜から帰ってきました。朝は牛乳とプロテインバー二本のみとやる気なしですが、むしろこの後も沢山食べるぞという気合いの表れともいえます。

大人の娯楽といえばバッティングセンターですね。
河口湖再び

大浴場で朝風呂を決めて髭も剃り、屋上展望室から富士山を仰ぎ見て出発です。河口湖駅の側にある着物屋さんのコインロッカーを利用しました。荷物一つなので300円ロッカーでも余裕です。ご親切に両替もして下さり、あらゆる面で助かりました。

どこからどう見ても富士山です。

今回は富士山パノラマロープウェイに乗って絶景を楽しもうと計画していました。9:30からということで9:45頃に到着したのですが、既に坂の下まで列ができていました。まあロープウェイとはこういうものです。大体40分弱で乗れました。

観光地ですのでこれくらい当たり前です。

太宰治の『カチカチ山』はこの天上山が舞台と言われていますが、改めて話をおさらいしてみるとあまりに酷い話で、昔話の残酷さに震え上がるところです。でも多分太宰が描きたかったのは、何度でも懲りずに、それと分かりながらもあえて騙される哀れな男の寂しさだと思います。(追記:改めて『お伽草紙』を読んだところ、それどころではなく、見下げた相手に対してはとことん冷酷な仕打ちに出る人間の描写でした。なお、原典の酷さは太宰も嘆いているのですが、それを現代風に解釈した結果、また別の形で救いようのない話になってしまっています。『瘤取り』『浦島さん』『舌切雀』のいずれも、戦時下でも作品を紡ぎ続けた太宰の才気が迸るものでした。16年ぶりくらいに再読できてよかったです。)

それにしても酷い話です。

可愛い顔をしていますが、狸も酷いしウサギも酷いです。

ゴンドラはものの3分もかからず山頂へ。展望デッキまで行くと目の前に昨日上った富士山が聳えます。“昨日はあっちから下界を眺めていたのだ”と、あの眺めとその時の気持ちを思い出していました。あんなに高い山にちっぽけな人間が一気に上るのかと信じ難い気もしましたが、人生にそういう時があることは幸せなことだとも思いました。

やはりここに来てよかったです。天気も最高でした。

ブランコは恐ろしくて挑戦できません。

下に戻ってすぐ、予習時に目星をつけていた河口湖チーズケーキガーデンさんへと向かいます。こちらで完熟チーズケーキを注文したところ、“昨日は富士山に上られたんですか?”と尋ねられ、その旨お答えすると労って下さった上にカマンベールチーズどら焼きもおまけして下さり恐縮です。チーズケーキはクリームチーズが甘過ぎず私好みで、この夏の日の湖畔でいただくとは何と贅沢なと感謝しながらゆっくり噛み締めました。

素敵過ぎる週末でしょう。

続いて遊覧船「天晴」(あっぱれ)へと乗り込み、河口湖を周遊します。甲斐武田軍の水軍がモチーフで「武田菱」や「赤備え」が売りです。日差し100%でとにかく暑いのですが、風と景色を感じるために屋外のデッキに座って朝は行けなかった河口湖大橋の向こうまでばっちり見て来ました。遊覧船もロープウェイと同じく、観光地では鉄板で、乗って外したことはないですね。水上からの眺めは陸からとは大きく異なるので、新鮮な気分になります。ちなみにこちらの乗船料金は富士急行のバス等のチケット提示で2割引になりますが、ロープウェイとのセットなら1,600円ですのでその方がお得です。

湖上からの雄大な眺めに見入ります。

まだ時間があったので少し歩いて、朝のジョグ時にチェックしていたパン・ダニエルさんへ。お店はとてもお洒落でこれまた目も眩まん程うまそうなパンが勢揃いでした。散々迷ってパケのビーフカレーパンカカオショコラ(ビター)を買い求めました。辛すぎずお上品な味わいのカレーパンもさることながら、カカオショコラはチョコ好きなら確実に喜ぶカカオの香りと味が溢れる逸品で、また食べたいとその場で思いました。

ベーカリー巡りは本当に楽しいものです。

山梨の郷土料理といえばほうとうですが、実は食べたことがなかったので、河口湖駅前のほうとう不動さんに赴きます。立地が立地だけに大繁盛なのですが、お店の方の対応がとても明るく丁寧でよかったです。看板商品の不動ほうとうは、うどんやきしめんとはまた違った麺の食感で、味噌仕立ての味と相まってなかなかおいしかったです。野菜もなめこ、人参、白菜、玉ねぎ等種類が豊富(中でも白菜はたっぷり)で、伝統料理らしく栄養価も高いものだと感心しました。

白菜が印象的でした。栄養は大事です。

とても暑かったので、ほうとうを食べると汗をかきます。

駅前の富士山麓電気鉄道の車両展示も見て、お土産を物色してから15:00河口湖発の三島行きに乗り込みます。三島駅では(庶民には)高級なわさび三島コロッケカレーパンを買い、これで楽しい旅行はおしまいです。16:55発のこだま(自由席11,770円)に乗り、窓の外にまだ大きく見える富士山に心の中でお礼を言って日常へと戻ります。

「毛」ではありません。

丁度山葵も切らしていましたので。

ありがとう富士山。またいつの日にか。

ぷらっとクーポンで購入。今日のビールはうまいのかな。

最後に

去年“一度だけでもいいから”と必死に願って完走したものの、“まだやり残したことがある”と再度挑戦させていただくこととなりました。そして“もう一度”を叶えることができました。この機会を与えて下さった皆様に心より感謝しています。

今回上り切ったことで、自分の中でようやく本当の意味で完走したといえると思います。もし次に参加させていただく機会があれば、それはまた別の思いを持ってのものとなるはずです。自分の人生にドラマのような意味付けを与えるのは好きではないのですが、たまにはそういうこともあってもいいですよね。

この先どう生きていけるかは分からないのですが、いずれにせよ私にとって富士登山競走が特別な大会であり続けることは確かです。支えて下さった皆様に改めてお礼を申し上げます。

ここまでご覧いただきありがとうございます。次の道マラまでにどこまで心身を戻せるか読めませんが、北の国でお会いしましょう。

にほんブログ村 その他スポーツブログ マラソンへ
にほんブログ村