ちょっと長すぎる旅ランブログ

百聞は一走に如かず。きっと貴方が好きな大会が見つかります。

第73回別府大分毎日マラソン大会(2025/2/2) 私が別大に出る理由―2時間55分切りの自己ベストと新たな自分―

今年も最高の舞台を整えて下さった別府・大分の皆様のお陰で全力を出し切れ、2時間55分を切れました。終盤は本当にきつくはありましたが、ここで走らせていただける幸せを噛み締めながらの、あっという間の夢の旅路でした。5度目の参加でも毎回“別大は特別だ”と深く思いますし、一生持っていける思い出も生まれます。”フラットでタイムが狙える大会だから”出たいのではなく、“別大だから”出たいのです。

www.betsudai.com

夢中で走っているので、コースは覚えているようで覚えていない部分も多いのですが、そこまでの状態になれるのが別大です。ただ一心に走ることでしか至れない境地があり、その境地を経ることなしには知ることのできない感情と喜びがあります。

36kmを過ぎて気持ちの緩みと甘えが出てしまってからは本当にきつかったのですが、沿道の“頑張れ!”“あと少し!いける!”“粘れ!”といった力のこもった声援に励まされ、“とにかく1秒でも落とさないように”という一心で粘り切り、グロス2:54:50でフィニッシュできました。いつもと違い終盤で上げられない展開は心理的にも厳しかったですが、どんなに理想から遠かろうと、42.195kmで力を使い切れるようにと言い聞かせました。(172bpm※手首計測で途中200オーバーの明らかな誤計測ありなので信頼性なし, 192spm, ストライド1.25m, 上下動比4.5%, 上下動5.9cm, 左右接地時間バランス47.3%:52.7%, 接地時間218ms, META SPEED EDGE+)

今年も室伏広治さんの『ゾーンの入り方』を読み直し、私にとってタイムは目標ではありますが、目的ではないということを改めて思い出すことができました。怖いものはありませんので、“ただここで全力を出し切ったといえるかだけが問題だ”と自然体で臨めたのも大きかったです。

いつもブログでお世話になっている(でも一年に一度しか会わない)スイミーさん( id:suimie-suimie )も大幅自己ベスト更新で、お互いの健闘を称え合うと共に喜び合うことができました。私にとっては、ここまで揃ってこそ最高の別大になりますし、それが実現できる場でもあるのです。

観光も、パン活、西野食堂さん、グリルみつばさんなどでおいしいものもいただき、走るための準備と心身の回復の大きな柱となりました。鉄輪むし湯さんでのリカバリーはマラソン翌日には超おすすめですし、玉子と肉まんも地獄蒸しでできたてをいただけたり、楽しく旅を締め括れました。応援して下さる皆様の優しさを感じることも多く、また嬉しくなりました。

こうして自分の中にずっと残る熱や思い出、喜びがあるからこそ、これまで走って来ましたし、これからも走っていけるのだと思います。昨日の自分を超える嬉しさを知り、薄れゆく筋肉痛にすら寂しさを感じ、いつもより少しだけ人に優しくなれる自分に会えます。だからこれからも、同じ思いで走らせていただきたいと思います。上手くいくこともあればそうではないこともあると思いますが、それでも全力で挑ませていただきたいと願っています。

別府・大分の皆様、今年も最高の場を作り上げていただきありがとうございました!来年もよろしくお願いいたします!

昨年は100本目のフルマラソン完走をここ別大で達成しました。最高の思い出がつながっていきます。

savarun.hatenablog.com

今年も川内優輝選手に目標を誓い、応援していただけました。いぶすきの走りからして、自己ベストは出せる自信がありました。

savarun.hatenablog.com

富士登山競走も真剣に挑んでいます。毎回全力・必死ですが、上り切った先にある喜びの大きさは計り知れません。

savarun.hatenablog.com

続きのページには、コースの写真(翌日や昨年レース後に撮ったもの)や準備観光のことも含めて細かく書いていますので、いくらか参考になるかと思います。少なくとも、来年の自分にとっては大いに役立つ内容を盛り込んでいます。

コメント、スター、↓のバナークリック、SNSなど、何でもいいので読者の存在をお知らせいただけると、時には私が真剣に走ります。意外とガチ走りの記事にもニーズがあるかもしれません。

次回予告は、“47都道府県フル完走は小倉の地で!”です。走り始めた頃は、ここまで続くとは思ってもみませんでした。いつものテイストで走ります。

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前日

伊丹から大分へ

6時40分頃に起床しました。時間もあったので、普通に朝食を取ることができました。巣ごもりキャベツ、納豆、チーズ、ヨーグルトと普通の食事です。

遠征中は野菜不足になりがちなので、食べておきました。

前日夜は豚肩ロース、白菜、人参、葱、しめじ、ほうれん草を酒蒸しにして、金沢の今川酢さんのゆずポン酢でおいしくいただきました。石垣島で買ったシークワーサー胡椒もアクセントになります。この一週間の夕食は鍋が大半でした。ビタミンB1を求めて豚肉中心のメニューです。

身体も温まり栄養も豊富な鍋が一番です。

能登穴水町からふるさと納税返礼品でいただいた、お菓子工房Hanonさんの洋菓子セットは、職場でも配って大好評でした。ささやかながらできることを続けていきたいと思います。

白い巳のかわいいメレンゲ。縁起もよいです。

伊丹09:15発→大分10:15着のJALで楽々移動です。伊丹だと自宅を出てから1時間後には保安検査も終了して搭乗口に到着できますので、関空との間には雲泥の差があります。今回はプロペラ機ではなく、搭乗もスムーズでした。

来年もこの便がいいですね。

お値段も往復セイバーで20,534円とかなりいい感じです。8月中には購入していますね。空港からのバス代が相当かかる(かつての往復券も廃止)ことを考えても、交通費は程々に抑えられたと言えましょう。

大分空港に着くと別大のパネルがあり、今年もやって来たなという実感が湧きます。往復チケットが無くなり高騰した乗車券(しつこい)を握りしめ、運よく出発直前だった別府駅行きのバスに乗ります。

ラソン以前にまずは温泉が登場します。

この日を待ち望んでいる全国のランナーへ。

燃料費の高騰許すまじ。

バスは渋滞もあり60分以上かかりましたが、途中コースを確認できるのでよしとしましょう。折角なので別府駅まで乗り、11時40分頃には駅前に降り立つことができました。

一年ぶりにやって来ました。昨年も雨でした。

ピカピカのおじさんのハイフライフローも健在です。

移動中読書は、今年も室伏広治さん『ゾーンの入り方』です。ともすれば“どうすれば集中力がつくのか”といった技術的なことを期待しがちですが、もっと根本的な考え方に充ちた一冊です。当面の目標と本当に実現したい目的との違い、大切なことは全力を出し切れたかであって結果ではないこと、悪い結果が出たらこれが今の自分なのだと大きく頷いて明日からまたやり直せばよいこと等、常に胸に持っておきたい教えを確かめられます。

小川洋子さんの短編集『約束された移動』も途中まで読みました。何とも寂しい気持ちになるのですが、それは“自分がこんな思いを持って生きている時間がどれくらいあったのだろうか”というもので、うまく説明できません。そういう時間を羨ましくは思えないのですが、生きている実感は私の生き方よりありそうに感じます。人はそうして後戻りのできない人生を進んでいくだけなのです。

前日受付と別府での準備

ビーコンプラ

先に宿で荷物の大半を預かっていただいてから、パン活をしつつ会場まで歩きました。別府駅からならそこまで遠いわけではありません。上りが多かったり、信号がない道に入ると遠回りになったりしますが。

惣菜屋さんやペットショップもあり、昭和感全開です。

だるま食堂さんは、13時頃で既に閉まっていました。昭和の味をと思ったのですが、残念です。日月お休みですので、可能であれば来年行ってみたいと思います。

またお世話になれればと思います。お元気でいてください。

13時20分頃に着くと、特に列になっているわけでもなくスムーズに受付を済ませることができました。来るのが早過ぎると無駄に待つことになります。会場の食事スペースも探せば座れるレベルでしたので、これくらいの時間を狙うとよいのかもしれません。スタッフさんも力強く参加賞を手渡して下さり、別大らしさを感じます。

記念撮影をされている方も多く、皆の憧れの場なのだと実感します。

あんまり早く行ってもやることがありません。

人出も一段落しており、丁度よいタイミングでした。

参加賞として金券が配布されるのもおなじみです。何を食べるか迷いましたが、おかずが欲しかったので唐揚げチャーシューおにぎりにしました。パンチの利いた味で元気が出ました。

毎回結構迷いますよね。だんご汁も魅力的です。

ミズノの試し履きは、いぶすきで経験済みだからというのもありましたが、靴下が濡れているためご迷惑だろうとスルーします。記念グッズは、毎年完売の別大プリントクッキーはよいとして、またしてもうっかり過去の記念Tシャツ(セール品)を買ってしまいました。まだ来ていないTシャツが家にあんなにあるというのに……。

最近公式クリアランスでとても古いモデルを買いましたが。

毎年大盛況です。

荷物を増やすのが生きがいみたいなところもあります。
グローバルタワー展望台

雨で遠くまで見えないのは分かり切っていますが、ここまで来たからには行くしかありません。「150m/分」の表示を見て、一瞬、“すごく速い”と思いかけたのですが、キロ6分半より遅いことに気づき、早とちりを反省しました。

数字に弱いもので……。

4階は露天ですので傘を差す必要があります。ガラスも水滴が多く、遠くの方は全然見えません。しかしここに立って何がしたいかというと、景色を見ることだけでなく、イメージトレーニング、むしろ昨年の記憶の確認がメインなのです。しばらく目を閉じていくつかの山場を思い出し、競技場まで思い出せたので、上った甲斐はありました。

頭上からは冷たい雨が降り注ぎます。

面白いくらい見えていませんが、記憶が戻れば大成功です。

3階のガラスは水滴も少ないので、割と遠くまで見えました。

雨が強かったため、帰りは別府駅行きのバスに乗りました。少々待ちましたが、おそらく大分駅行きよりは回転も早いでしょうし、十分です。

マルミヤストアさんで耶馬渓牛乳とチーズを買ってチェックインし、明日の持ち物や装備の支度をしました。

花丸笑顔のマルミヤストアさんです。
パン活
  • 友永パン屋さん

当然行列が形成されていますが、昨年の経験上この程度なら大したことないとわかっていますので、20分弱で買い求めることができました。

これくらいなら並ぶ価値があります。

待っている間も楽しいものです。

この棚以外の内装、籠などからも、お店の長い歴史を感じられます。

名物のあんぱんは、つぶあんこしあんの両方を選びました。温かく柔らかなパン生地にこの滑らかな餡とは最高です。ワンちゃんは、柔らかいパンの宿命で形が変わることは必至なのですが、犬はこういう顔をすることもあるのでかえってリアルです。こんなに温かなカスタードクリームパンは初めて食べたかもしれません。

生地も餡も本当においしいです。

こしあんも不思議なくらい甘くありません。あったかい。

いぬよ……。

黒豆パンが焼き立てだったのに、注文票になかったため逃してしまいました。
  • オニパンカフェさん

昨年作っていただいたポイントカードを握りしめて行ってきました。12時の開店から間もないため、まだパンの種類も豊富です。

営業時間も短く、完売の可能性も高いです。

クランベリーチーズは、やはり相性抜群で相当うまいのですが、生地が違うのかしら。アップルシナモンはフルーツは勿論サクサクのパイ生地もまたおいしかったです。白黒棒のあんことクリームチーズの相性には、昨年に引き続き感心します。

パン活は至福の時です。どれもうまいです。

なお、今年は3日がお休みだったため、スタンプは一つしかゲットできず、正会員への昇格は来年に持ち越しとなりました。

全国チェーンですが、相性もよくゲン担ぎ的にいただいています。15時過ぎでもかなり売れており、観光客的には人気なのかもしれません。危うく翌朝用の塩くるみパンを逃すところでした。黒糖くるみ揚げパンは、しっかり走れた昨年と同じく、おいしくいただきました。

危なく勝負メシを逃すところでした。

おきなわ100kmと石垣島ラソンでも黒糖を沢山いただきました。

IL bakeryさんは残念ながら昨年4月で閉店とのこと……。でも二階ではカフェが営まれている様子でしたので、もしかすると一部の洋菓子は味わえるのかもしれません。

おいしいパンで二度のサブスリーをアシストしていただきました。
夕食

昨年もお世話になった西野食堂さんにしました。何と店内は改装されており大幅に席数が増えていました。これならお客さんも沢山捌けるかと思いきや、店長のワンオペは変わっていなかったので、次々に訪れるお客さんを“めっちゃ時間かかりますよ”、“一人でやってるから無理だね、おっきいとこ行って”などと追い返す展開は健在でした。でも記憶より遥かににこやかでした。

常連さんは開店直後を狙うようでした。第1ウェーブがなかなか捌けません。

私も18時前に入店こそできたものの、食べ始めるまでに50分以上かかりました。読書も捗りましたし、特に急いでもいないのでこれでよいのです。豚肉を欲したため今年はトンカツ定食をチョイスし、揚げたてのカツをおいしくいただきました。やはり昨年のおいしい思い出は確かなものでした。

本当のできたてが味わえます。東洋一です。
海門寺温泉さん

別大のプログラムの最後のページには、一部の市営温泉の無料券がついていますので、こちらを使いました。19時過ぎには一旦混雑のピークを過ぎていたらしく、夕食をゆっくり食べたことが吉と出ました。ボディソープとタオルは持参しています。

立地が立地だけに混む可能性は高そうです。

この温泉はシャワーがあるので、身体を洗うのが楽です。ぬるめのお湯でしっかりリラックスし、雨で冷えた足先も温まりました。熱い方の湯舟は、確かに熱いのですが、金沢最強のあわづ湯さんの熱湯風呂(個人の見解です)に比べればかわいいもんでした。常連と思われるおっちゃんに、“あんたあんま速そうじゃないな!”とか言われて距離感が面白かったです。

この入浴券を使わずには終われません。
お宿

アークイン松美さんです。上手いこと二泊で取れた上に10,500円という破格ぶり。本当に助かります。冷蔵庫もフル活用できるので、ご当地牛乳も買い放題です。部屋も広くて快適な上、別府北浜からもすぐで立地も素晴らしいです。

夜も意外と静かで大満足でした。

もう十分ですので、耶馬渓牛乳や水を飲んで打ち止めです。今日も沢山食べました。21時に遠くから聞こえてくる滝廉太郎『荒城の月』の音色に心がざわっとしたところでシャワーを浴び、22時40分頃に消灯です。アミノ酸を飲むのは失念しました。

夜のやよい天狗も拝んでおきます。

レース当日

レース前

7時半起床です。夜中にトイレに起きたりもしましたが、基本的にはよく眠れました。心拍数46bpmは最近にしては高めですが、許容範囲です。Body Batteryは86止まりでしたが9時間近く横になっていましたしテーパリングもやっていますので問題なしです。

朝食は昨年と同じメニュー。クルミ塩パン、ゆで卵、チーズ、プロテインバー一本です。腹持ちを考えてカステラを後に回すのも同じです。

連泊なので、耶馬渓牛乳も1lのパックを買えます。

食後もゆっくりでき、お腹も目覚めてくれてシャワーも浴びられました。ドリンクを調合し、装備も全て整えてから出発です。椅子があった方がテーピングも貼り易く、ソックスも丁寧に履けますので。

別府北浜までは歩いてすぐなので、8:52くらいに宿を出ました。地下道を通って9時発のバスも余裕でした。バスは沢山待機して下さり、座席がいっぱいになったら出発するため、少し待てば確実に座れます。

市民ランナーとは思えないくらいの好待遇です。

別府北浜から会場のうみたまごまでは、バスなら10分もかかりません。ここで“割と近いんだな”というイメージを持てると、レースの時にも心の支えになります。歩道橋が一つあり、その先少し行けばもう水色の橋が見えてくることも確認しておきます。

できることは全てやっておくとよいでしょう。

会場に着くのは早過ぎるのですが、折角なのでカテゴリー1、2の選手のウォーミングアップエリアを見たり、遠くの海を眺めたりします。風も気にならず、日差しもない。昨年と同様の絶好のコンディションです。

おさる館に入れるのは選ばれし選手のみです。

まだカテゴリー1、2の選手のバスは来ていませんので。

丁度いい曇り具合に期待が高まります。

歩道橋を渡り、更衣室へと向かいます。これから行く道を右手に眺め、後半戦の始まりも思い浮かべながら歩いていきます。

こんなに贅沢なコースを走らせていただけるなんて、すごいことです。

カテゴリー3の更衣室はまだ空いていて、ストーブの傍に座ることができました。大きくは9時と10時に振り分けられているので、自分たちの便の波が一段落してからざっくり1時間くらいは人が大きく増えることはありません。周囲の空気を読みつつ、小さくなって時々寝転がったりもしていました。

雨が降ると漏水や浸水があるのは当然なので、今回もソックスが濡れてしまいました。しかし些末なことなので気にしてはいけません。もう少し注意して、拭き取るようにした方がよかったのは確かですが。

参加賞のカイロも使って足裏や指を温めるようにしたのも昨年の教訓によるものです。カイロなんて小学生以来使っていないと思いますが、その分、懐かしさもありました。なお、寒さ対策に持ってきた大阪マラソン2023ブランケットは宿に置き忘れてしまいましたが、そこまで寒くはなかったので問題なしです。

待ち時間が長い時はあった方がよいです。

基本的に目を閉じて光の刺激が少なくなるようにじっとしていました。その間にこれまでの人生でできなかったことが思い浮かんでくるのも毎年のことです。途中まで聞こえてくる負けないでやロッキーのテーマの演奏に励まされ、大会の歴史のアナウンスはいつも通りだなと和みます。10:50頃に別所のかすていら(本店直売でシールすらなし)をゆっくりと食べ、金沢のことを思います。

先週わざわざ本店まで仕入れに行きました。

駄目押しのアミノ酸を摂取してから、服を脱いでリュックに詰め、シューズを履いてテントの外に出ます。荷物預けは一番端でしたが、自衛隊の皆様がスムーズに預かって下さります。

荷物袋は大きいので、大抵のものは収まると思います。

段々と周囲の緊張感も高まってきましたが、笑顔も多かったです。

富士登山競走もですが、自衛隊の皆様のご協力がある大会はすごいです。

少し引き返して扉なしの解放感満点の男性小トイレに並び、一切の不安を取り除きます。毎年書いていますが、このトイレの回転の速さは目を見張るもので、長蛇の列があってもものの数分で順番が回ってきます。何と恵まれた環境なのでしょう。並んでいる間に肩甲骨周りを動かしたりもできるので、ありがたい限りです。

プレラインナップまで少し時間があったので、動的ストレッチを一通り念入りにやっておきました。ジョグでのアップはほとんどできなかったのですが、ここで全身の筋肉を目覚めさせておいたのはよかったと思います。小走りで足裏の感覚を確かめられたこともプラスになりました。

並んでみると、前にあまり人がいません。“カテゴリー2に近いところにいるのだ”と少し気持ちが張りました。シューズの紐をもう一段しっかりと締め直し、万全の状態にします。11:50に交通規制がかかってから、今年は皆走ることもなくゆったりと歩いてスタート地点に向かいました。係のおっちゃんが優しく言い聞かせたのがよかったのかもしれません。

スタート地点ではただ真っすぐに前を見て、自分が本当に実現したいことについて思いを巡らせていました。沿道からの熱気は既に高まっており、周囲も気合がみなぎっていましたが、“今日はできることをやるだけだ”と思っていますので、心は静かでした。そして、号砲の時を迎えました。

【当日までの準備】

練習

1月はいぶすき菜の花マラソンで調子を見つつ、連戦となる石垣島ラソンでは暑さ対策もしておくというプランでいきました。石垣島ラソンの後は特に緩めず、金曜に10kmを走って概ね仕上げ、土日はフルより遥かに短い距離の有酸素ジョグに留めました。

普段はテーパリングなしでフルに挑みますが、今回は全力で走るので、直前一週間はペースも意図的に遅くし、時間も短くしました。左臀部の疲れがあったものの、脚は完全に疲労が抜けていて、いつでも速く長く走れそうです。脚攣りのトリガーになりかねない1kmの刺激入れもやめました。

日:石垣島ラソン(3時間9分台、マジックスピード3)

月:観光スロージョグ70分(10.1km、ナイキフリー)
火:有酸素ジョグ31分(Zone1, 5.3km,112bpm,184spm,エボライド)
水:有酸素ジョグ60分(Zone3, 12.2km,128bpm,190spm,ライトレーサー4)
木:有酸素ジョグ60分(Zone3, 12.4km,130bpm,193spm, ターサーRP3)
金:閾値走10km(39:34, ソーティマジックLT2)
土:有酸素ジョグ125分(Zone2,3, 24.6km, 121bpm,190spm,中断あり。デュエルソニック3)
日:有酸素ジョグ114分(Zone3, 23km,126bpm,190spm,ライトレーサー5)

月:有酸素ジョグ33分(Zone1, 5.4km,109bpm,188spm,エボライド)
火:有酸素ジョグ45分(Zone1, 8km,113bpm,189spm,ライトレーサー4)
水:レースペーススタート走1km×3(4:18秒, 3:58, 3:59, META SPEED EDGE+)
木:有酸素ジョグ52分(Zone1, 9.1km,111bpm,179spm※センサー異常,Hanzo R)
金:有酸素ジョグ43分(Zone1, 7.2km,111bpm,186spm,エボライド)

土:オフ

今年はみやすのんき先生待望の新刊で刺激を受け、11月以降フルがない週は平日朝に10kmを入れるようにしたのですが、これはよかったと思います。特に調整もせず、単独走で朝から10kmを問題なく40分切って走れるようになったことは自信になりました。ソーティマジックLT2がものすごく走り易いシューズということを差し引いても、昨年より明らかに楽に安定して走れるようになったのは大きいです。

時間の取れる週末に何度かやったレースペースインターバル12~13本(レスト90秒)も、新しい練習で前向きに取り組めました。フルマラソンを含むロング走、平日のZone3のジョグも併せて、練習で手応えを掴んで本番に臨むことができたのはよかったです。

ガーミンさんはピーキング、VO2Max64、予想タイム2:48:40と大甘です。この一週間はずっとピーキングでしたので、普段の負荷のかけ方からすると、これくらい一気に落とすのがよいということなのでしょう。予想タイムは昨年よりよくなっているという一点のみ参考にしましたが、数字はネタです。

去年よりはいいかな、という目安にはなりました。
体調管理

食事は金曜までほぼ普段通りで、テーパリングによるカーボローディングで基本は足りると考えました。恐怖から食べ過ぎてしまうこともなく、体重も66.0kg前後で安定していました。これまでは冷たい水を飲むことが多かったのですが、会社の給茶機でも水とお湯を混ぜて常温に近づけて、身体を冷やし過ぎないようにしてみました。

風邪など引くわけにはいきませんので、当然ながら飲み会などは一切入れません。至近距離での会議も極力避けるようにして、衛生面も注意します。

心身が落ち着いていたからか、連日お腹も好調で、夜もしっかり眠れました。

装備

シューズは昨年自己ベストをマークした時と同じMETA SPEED EDGE+です。別大、金沢と来てまだフル三本目ですので、本来の力を発揮してくれると考えました。

今の自分には一番合っているシューズです。

ウェアはNIKEタンクトップ(背中が開いていて肩が動かしやすい)、2XUライトスピード(筋肉のブレを抑え、着圧で疲労も軽減してくれる)、ミズノ360°マルチポケットパンツ(タイツだけでもよいはずですが、ジェルフラスコを使いやすいよう、収納力を重視しました)、ザムストソックス、ニューハレ踵二重です。キャップ(ナイキ白)は、スタート時は完璧な曇天だったものの終盤晴れるかもしれないと考え、今年は着用しました。

色々試した結果、やはりこのメンバーが一番だと感じました。

雨も止んでおり、気温が低いわけではないため、アームウォーマーは勿論のこと手袋もなしです。心拍ベルトは今年も使用しませんでした。圧迫感がないではないので、別大と富士登山競走という本気中の本気レースの時は使いません。ランニングダイナミクスポッドは気にならないので装着します。

持ち物はジェルフラスコ二つのみ。青にはマグオン二つ、アミノ酸経口補水液(1/4袋くらい)、黄緑にはコーダカフェイン入り二つと経口補水液というレシピです。特に飲みにくいこともなく、気付け薬にはなってくれました。

ジェルの開封は時にミスしますし、ゴミも出ないのでこのスタイルでいきます。

今回は初めてPOWER Maximize Repairという貼る栄養補給を試してみました。おなじみ金沢のステップスポーツさんで勧められて買ったものです。首筋に貼るだけで吸収できるなんて半信半疑ですし、一度使ったくらいでは効果のほどは未知数ですが、お守りにはなりました。

レース

序盤~前半
  • 序盤(今年も静かな立ち上がり)

今年も右の方からスタートしました。最初は多少進みにくい気もしますが、そこは別大ですので、あっという間に周りが速度を上げていき、流れもスムーズになります。最初は別府の方へと進みますが、すぐにゆめタウンも見えてきて別府に到着です。ガーミンさんのラップは4:16, 4:04, 4:05と出ていたようですが、距離表示ごとにざっと見た記憶ではもっと遅く、“今日はあまり速く走れないのかも”と思ったりもしました。

高崎山が迫っており、威厳すら感じます。

早々に別府市街の姿が現れます。

目立つ色の看板も多いです。とにかく落ち着いて入ることです。

ともあれ、別府への道は景色的にも物理的にも下っているため、スピードに乗り易いとは思います。序盤で気を付けるべきは、飛ばし過ぎないことです。終盤の足攣りの原因は最初の5kmの入りに原因があることが多いらしいので、ここは速くなり過ぎないようにします。見慣れた別府タワーとトキハには安心感がありますし、両サイドからは沢山の方から応援の声が飛び、力を分けて下さります。途中には太鼓の演奏もあり、往路復路共に励みになりました。

二階堂焼酎の広告も大きいです。

ゆめタウンもすぐに到着します。

別府タワー辺りでもまだ周囲のペースはかなり速かったと思います。

6kmの給水は混むので、最初からパスしました。2.5kmごとに給水がありますし、この気温なら数回取れなくても全く問題ありません。昨年は足裏が冷えており、温まるまでに10km近くを要したのですが、カイロとマッサージがよかったのか、この頃には既に足裏の硬さは解消していました。

別府交通センターの向かいくらいでしょうか。

お昼過ぎは北寄りの風が吹いていたので、折り返してからは楽になるはずです。このくらいの距離だとまだ皆元気なので、基本的には集団が風から守ってくれます。

7kmで手元29分弱だったと思います。ネットで2時間55分を切るには、29分を6回積み重ねて最後195mに1分残せれば万全です。ジェルフラスコ青で甘みを感じて気分転換をします。

別府大学駅で7kmくらいだと思います。
  • 前半(亀川の折り返しからは順風)

8.5kmの給水は確実に取りたいところですが、今年も折り返してきたトップ集団の姿に気を取られて見落としそうになりました。上人ヶ浜交差点では注意しなくてはなりませんね。何とか気づいて水をいただき、思い通りの展開になってきました。ここから1.5kmも行かないくらいで折り返しだと思うと落ち着きます。

上人ヶ浜公園の先で先頭集団とすれ違うことが多いです。

靴流通センターの辺りが上人ヶ浜交差点です。

亀川バイパス新川橋は、高低図を見ると往路も復路も上っていることになっていますが、今回走った感覚的には、往路は下り、復路が上りだと思います。ですので、行きはどうということはありませんでした。亀川漁港前で折り返し、10kmは手元41:40。“昨年は42:00だったので、少し速いくらいで終わるのかな”と思っていました。復路の上りは、気負わずに、できるだけ傾斜の緩やかなラインを通るようにしました。

走りでもバスでも、ほとんど上りとは感じませんでした。

むしろ大きく下っていくはずです。

ここで折り返すと風向きが変わります。

11kmの給水では後ろの方のテーブルでコップを取ったもののゴミ箱に間に合わず、腰のポケットに突っ込んで次で捨てました。いつも書いていますが、私はゴミ箱以外に意図的に捨てることが我慢ならないので、人にどうこう言うことはできなくとも、自分だけは守ることにしています。その辺に叩きつけるように捨ててタイムがよかったとしても、それは私が欲しいものとは程遠いことだけは確かです。

上人ヶ浜のスタバとトヨペットです。

ここからしばらくは順風ですので、力まないようにだけ気を付けて進んでいきます。“ここが餅ヶ浜かな”と考える余裕くらいはあったものの、ランドマークについて細かく考えることもないまま、ただ流れに乗って進んでいきます。別府交通センターから別府タワーまでは少しあると覚えておくことにします。自分の走りに集中していると、景色も記憶に残っていなかったりしますので、振り返りは大切です。

とんカツ亭は目立ちます。

14kmで手元58分20秒弱だったと思います。最初よりラップが落ちているようですが、毎年この展開ですので気にしません。

中盤
  • 中盤①(美しい海と中間点)

15kmではまだ別府タワーではないということを思い出しつつ、別府北浜を通過し、“ここから大体4kmくらいでうみたまごだ、案外近いぞ”と記憶を確認しておきます。

ラクテンチ看板は、走っているとわからないかもです。

ゆめタウンは大きな目印になります。

歩道橋は二つ、なかよしと浜脇です。

高崎山の方へ向かう道は、入口は少し上っていますが、別にそのまま山へ入って行くわけではないので、恐れることはありません。自分の身体だけに集中して走っているとほとんど景色は思い出せないものですが、“左手の海だけはきれいだから見ておこう”と目を遣っていました。

上っていく感がありますが、錯覚ですので身構えなくて大丈夫です。

他は覚えていなくても、この海が見える場所だけは忘れません。

歩道橋を一つ通って山に沿って進むと、もうスタート地点が見えてきます。あそこまで行けば20kmと思えば気が楽です。見えてしまえば近づくのも早く、この区間は短く感じられます。20kmで1時間23分ちょいだったはずです。21kmは1時間27分台前半で、この7kmは上がっていると分かりました。

歩道橋が見えてきます。

スピードも出ているので、ここまですぐですし、この次も短いです。

歩道橋を過ぎればもううみたまごが見えてきます。

あの橋は絶好の目標になります。

前半戦はおそらくそう長くは感じないでしょう。

中間点は手元1:27:32で、後半少し上げればネットで2時間55分を切れると分かります。しかしどれくらい持つのかはまだ読めません。グロスでは1:27:52だったようですが、コース上に時計はないので、スタートロスが20秒だったことを知ったのも終わった後です。とにかくネットで切らないことには始まらないので、そちらに集中します。

  • 中盤②(バンクの傾斜に惑わされず、先を見据える)

中間点を過ぎると、バンクの傾斜はよりきつくなります。風の都合、周囲のランナーの消耗具合も考慮しつつ、できるだけ負担の少ないコース取りを探ることが大事です。前に列が伸びていても、後ろから見ると人が少なくて走り易そうなラインが見えることもあります。

写真でも明らかに分かるくらいの傾斜です。

先に伸びている道のりも、走っているとすぐに過ぎていきます。

細かいうねりですが、地味に効いてきます。

トイレがあるので、22.5km付近だと思います。

風向きは時折変わるものの、基本順風でしたので、そこまで躊躇う必要もありません。出るべき時は自分で進路を選んで走りました。“残り90分もないので、普段の週末ジョグより全然短い”、“今年はハーフタイツがあるので昨年より楽なはず”、“マジックスピード3であのくらいのタイムだったので、EDGE+なら絶対にもっといける”などと言い聞かせつつ。

たのうららの標識は覚えています。

薄底のエンペラージャパンで足裏が擦れて痛かった思い出もあります。

たのうららでは、応援の横断幕も掲げていただいていました。

この時間は25km辺りの西大分駅の下りを待ち望みながら走ります。遠くの工場の煙がはっきり見えてくると、大分市街地が近づいてくる実感があります。西大分の下りでは大きな看板があるのですが、何の看板なのかイマイチわからず、“きっとお酒に違いない”くらいの気持ちで走っていました。“本当に集中していれば、苦しいことすら感じないくらいに夢中になるのだろう”と思う時間でもありました。

所々に目立つ工作物があります。

多少バンクも落ち着いてきたようにも見えます。

白木にも横断歩道橋があります。

白木のバス停付近で24kmくらいでしょうか。

工業地帯の煙が大きく見えるようになります。

この辺りまで来れば西大分もあと少しです。

ようやく西大分です。玉泉院、西の関の看板があったようです。

いよいよ大分市街地に入り、次は28kmのコーナー(新川交差点)を目指して進むのですが、この先が意外と長く感じました。何となく神戸マラソン序盤のような気分で進むうちに軽く左に折れ、OPAMの渡り廊下を通過するのは記憶通りです。左折してからは短いと昨年書いていましたので、確かにその通りだと思いつつも、ここは逆風が吹くという話通り、少し風を感じる時間でした。

大分住宅情報センターも目立つといえば目立ちます。

ここは見落としようがないので、気持ちもまた入れ直せます。

27kmを過ぎて左折してからは短いです。見せ場でもあります。

28kmで手元1時間55分台だったはずです。ここでかなり挽回しており、今日の調子からして残り1時間はかからないはずなので、ネットでの自己ベストはほぼ確実だと思いました。

曲がりながら28kmです。ここでまだ余裕があればいけます。
後半~終盤
  • 後半(大分川を渡り折り返しまで)

ここから大分川を渡る弁天大橋まではそう長くないと昨年も書いていましたので、その記憶に励まされつつ怯まず進みます。橋の手前で29km、確かに上りで少し苦しくはなりますが、いぶすきに比べれば平地のようなものです。橋の上ではそこまで風を感じなかったと思います。ここも昨年の記憶と重なり、落ち着いて走れました。

この1kmはそう長く感じません。

橋もすぐに見えてきます。

上りに入るところで29kmです。

少々の風であれば怯んでいる場合ではありません。気持ちが勝ちます。

海の方を眺める余裕はないではありませんでしたが、前を見ます。

橋の下りはスピードも出るため、自信も感じられます。

下って勢いがついているところで30kmを通過。手元2:03:55と昨年の2:06:00より2分5秒速いです。これはいけると思いました。そして少し行った所で花火が上がり、トップの選手が2時間6分台前半でフィニッシュしたことを認識します。今年も、“こんないいタイムが出るなんて、気象条件がすごくいいんだ。自分もいけるぞ”という気持ちになりました。

ガーミンさんのラップの音を聞き、何の気なしに今どれくらいで走っているのだろうと見ると、4:00だったので、順風のお陰でかなりスピードが出ていることを知りました。小出監督の“30km過ぎで一番速く走るマラソン”という言葉は、確かにそうなのですが、トップ選手はそこから30数分で終わるので、自分も残り30数分でピークを持ってくるイメージでした。今日はピークが早かったので、この先苦しくなるだろうと思いつつ、その時はその時で出し切ればよいと腹を括ります。自己ベストを目指す時は強気の走りが必要なのです。

昨年の教訓から、ここでは足を取られないよう、路面は細かく見ていました。脚が動かなくなったランナーをかわしつつ、給水も上手くこなします。もっと落ちているかと思いつつも、4:05/kmといった表示が出るので、自信になりました。細かな計算などできませんが、残り10kmもないのですから、“普段の10km走より遅いペースで走る分にはそこまできつくならないはずだ”と言い聞かせます。レースペースインターバルの効果も感じていました。

小さなフェイントの橋を過ぎて本当の橋(三海橋)を渡る辺りで、少し苦しくなります。しかし何とかしのいで下りに入り、少し行ってから第2折り返しを回ります。手元2:24:18。普段の感覚で行けば30分台でいけるはずですが、31分近くかかったらアウトということで、期待と緊張が入り交じります。

  • 終盤(最後の粘りと新しい自分)

次のラップも、ガーミンさんは4:06/kmだったので、このままキープできれば間に合いそうです。しかし油断も生じたのか、“4:10/kmくらいまで落ちても大丈夫では”という考えも浮かびます。二つ目の小さな橋で上りながら給水を取りましたが、かなり苦しくなってきた感じもありました。

どうにか左折してラスト5kmの表示を見ました。最終的にどうなるかは分かりませんが、体感を信じて、せめて4:10/kmを維持したいと考えるようになりました。ラップタイムは見ないで、距離表示ごとに残り時間との計算をしたくなりましたが、上手くいきません。周りから大きく遅れないようにして、ただ何かを信じて走るのみです。それが何なのかはその時も後になってもわかりませんが。

ラスト2kmでスパートをかけられる自分でありたいところですが、それは叶わず、明らかにいつもより遅いと分かります。しかしここまで来たからには今の自分にできることをやるしかありません。かなりギリギリの勝負になると認識していたので、もう38.5kmの給水はパスすることに決めました。1秒を狙う選択をします。

最後の方は“ネットで55分切りは絶対に確保しよう”という危機感は前へ進む意欲を生みつつ、“ネットさえ切ればグロスは駄目でもいいよね”という甘言も何度も迫り、その度に“自分は何を目指しているのだろう、本当にそれでいいのか”、“自己ベストを出せたからと笑っても、本心では満足できないのではないか”と回らない頭で考えるともなく考えていました。その中でも、これまで生きてきた中で確かに思い出すこともありました。

平和市民公園の歩道橋下を通り、ラスト2kmで、グロスもギリギリいけるかもしれないと思いつつ、上げる勇気が出ないもどかしさと苦しさの中で何とか粘ります。落ちている気がしてもそこまで絶望的ではないことはよくある話ですので、とにかく諦めずに前を目指すしかありません。

つるやゴルフの看板が大分川の目印だと昨年の記事で確認していたので、あれが見えた時にはかなり力が戻りました。41kmの給水なんて全く見向きもしません。しかし川沿いの道へと右折する時に力が入り、一瞬足裏が攣りそうになり、焦りました。この瞬間は、“経験!”という言葉が迸りました。別に何かを変えられるわけではないのですが、“これまでに散々走って来たのだから、こんな終わり方はない”という、一言にすれば気合ということだと思います。

つるやゴルフが近くに見えることだけが心の支えです。

右折は本当に要注意です。

あと1kmしかないので、何とか踏ん張りたい場所です。

どうにかこらえて残り1kmに入り、“4:30/kmまで落ちることはあり得ないので、ギリ間に合う。とにかくあの緑のフェンスを過ぎるまで粘ろう”と言い聞かせて、爆発だけしないように進みます。これまでのように余力を残してスパートということもできず、ただ耐えに耐える自分もいるのだと知ることは、希望を与えてもくれました。

いっぱいいっぱいですが、競技場は近づいています。

この緑のフェンスを思って粘りました。

ここに辿り着いて時計を見る瞬間には、勝負は決まっています。

もう必死ですが希望に充ちた時間でもあります。

競技場に入る時、時計は2時間53分くらいだったかと思います。“どうやらグロスも間に合いそうだ”と思ったことだけは覚えています。ここからは息を吹き返し、最後の瞬間を待ち望みながらトラックを走ることができました。かなり苦しいのですが、でもやっぱり楽しいのです。

残り200mで2:54:00になるかならないかだったので、グロスでも目標の55分切りを確信します。ようやく笑顔になって最後の直線を駆け抜け、2時間54分台の表示を目にしながら、充たされた思いでフィニッシュしました。

そこは全力を出さなくては見えない世界でしょうし、私が走る目的は、こういう瞬間に感じられるものにこそあるのだと思います。私は、今もこうして走れています。

アフター

レース後

会場

先にフィニッシュしておられることは確信していますので、スイミーさんの姿を探したところ、あちらから見つけていただけました。聞けば2時間51分台とのことで、がっちり握手してお互いに喜びを分かち合いました。その背中は近づくどころか遠ざかるばかりですが、これからも目標にしたいと思います。

サブ3ギリギリのランナーさんに声援を送り、タオルとドリンクをいただいて会場を後にします。更衣室の体育館では、安堵と充実感の混じった独特の空気があり、この日を目指して頑張って来たそれぞれの思いが空気中に滲み出ているように感じました。

META SPEED EDGE+さんは今回も大きく削れるようなことはなく、最後までしっかり助けてくれました。やはり今回全てを託してよかったです。爪や指も異常なしですし、足裏も含めて怪我はありませんでした。ありがとうございました。

耐久性もかなりあるように思います。

体育館の中では飲食しないように気をつけつつ、その前後でアミノバイタル粉、アミノプロテインプロテインプロテインバー2本と水たっぷりを摂取し、一刻も早いリカバリーに努めます。今日はいつもより負担が大きかったので、等閑にしてはなりません。

すぐにバスに乗る選択肢もあったのですが、やはり余韻にも浸りたかったので、競技場の方に戻り、スタンドを歩き、走っている時とは少し違った角度から、穏やかな気持ちでトラックを見渡しました。完走されて充実感でいっぱいのランナーさんと写真を撮り合ったりして、また一つ記念になりました。

一年に一度しか見られない景色ですので。別大といえばやはり青ですね。

ついさっき必死に走ったとは思えない程の、穏やかな気持ちと空でした。

別府北浜行きのバスは、並び始めてから乗車まで20分はかかったと思います。動き出しも渋滞するためトイレが持つか心配しましたが、結局17時過ぎにホテルに着くまで全く気になることもありませんでした。人間の身体は謎が多いです。初めて乗った別府北浜までのバスは、必死に走った中盤戦の道のりを静かに思い出せると共に、来年にもつながる記憶になりますので、大分駅行きのバスより収穫が多いと感じました。

横6列くらいに広がるので、意外と縦は詰まります。

余韻に浸る幸せな時間です。

夕日も優しく、穏やかな気持ちで歩きました。

フロントの方に笑顔で結果を報告し、シャワーを浴びて荷物の整理をすると共に耶馬渓牛乳、チーズ、プロテインバーで回復を継続します。応援して下さったサブ4ランナーの上司(応援naviまで見ていて下さったそうで恐縮です)にもメールで報告し、一段落です。

打ち上げ

スイミーさんにわざわざ別府まで来ていただいて乾杯です。私がこうして誰かとビールで乾杯するのは一年ぶり、つまり昨年の別大以来です。大分名物いっぱいの定食と鶏炭火焼などは本当においしかったですし、色々とお話しできて最高でした。また別大にいい思い出ができました。

不老泉さん

折角なのでもう一っ風呂浴びることにして、駅チカのお風呂に行ってみることにしました。中はかなりきれいで快適ですが、蛇口からは水しか出ないので身体を洗うのに少々苦労しました(何度もお湯を汲みにいく必要があるため)。お湯はかなり熱く感じ、長時間は浸かっていられませんでしたが、やはり思い切りフルマラソンを走った後の温泉は最高ですね。至福の時を過ごしました。

少なからぬダメージを受けている筋肉をほぐせて最高です。

帰りにコインランドリーグロリア秋葉通店さんに寄りました。洗濯300円、乾燥機100円(12分)で便利です。ホテルにもコインランドリーはあるのですが、混んでいると待ち時間が生じますし、乾燥機はこちらの方が強力そうでしたので利用しました。

旅先では乾燥機のパワフル度合いが運命を左右します。

花丸笑顔のマルミヤストア田舎巻を買い、西南西の方角を向いて静かにいただきました。牛蒡が入っているのがよいですね。勿論ご当地牛乳も買い足しました。

恵方巻を食べた子供時代を思い出しました。

みどり牛乳は鉄板ですね。ご当地牛乳万歳。

記憶が熱を失わないうちにと思い出せる限り書き出していると1時半頃に。消灯後も一日の出来事や考えたこと、景色や話したことなどがとめどなく浮かび、なかなか眠れませんでした。でもそれも、寝なくてはと焦るべきものではなく、これ以上ない程充実した一日を過ごせたことの証なのですから、嬉しいことだと受け止めました。いつしか心地よい眠気がそっと訪れ、静かに眠りへと落ちていきました。

翌日

余韻と予習のスロージョグ

6時半には目が覚めました。睡眠時間が短い割にはグッと眠れたのか、心拍数も普段並で、Body Batteryも60くらいは回復していました。まあいい加減なものです。みどり牛乳を飲んでから観光スロージョグに出発です。“田ノ浦ビーチまで行くとよい”という天の声に従い、キロ8くらいから走り始めます(コースの写真は上の方に載せました)。

いつものフルに比べるとかなり全身が重く、腿前のダメージもありますし、腹筋も筋肉痛ですが、思ったよりはリズムよく動けました。怪我をした様子もなく、鋭い痛みもありません。とはいえ身体の中はすっからかんですので、速く走ることなどはできません。

まだ早い時間ですが、やはりジョグをしている方が結構いました。

北浜公園からの朝日もきれいでした。

別府温泉の歴史を語るモニュメントも点在しています。

うみたまごまで3km、田ノ浦ビーチまで4km”と思っていたのですが、実際は海沿いに入るまでに1kmあるので、普通に往復すれば10kmでした。

昨年はこの駐車場に浸水多発の更衣室が設置されていました。

結局気づけば7km来てしまったので、このまま西大分まで行って電車で戻ろうかと考えたものの、別府湾を見ておきたいと思ったので、折り返しました。寄り道しながら帰ったのでトータル105分、15kmになりました。7分/kmは思ったより速かったです。

遠くに別府の気配を感じます。

恋人の聖地らしいです。北口榛花選手並みの勢いで鐘を鳴らしたいですね。

こんな浅い所で飛び込む人はおらんやろ。

座礁しているわけではなく、滑り台を備えた遊具です。

西の方にはどこまでも美しい青が。

牛乳パックを開き、ペットボトルのラベルをはがして中を洗い、お礼のメモを残して出発です。実際にどれくらい意味があるのかは分かりませんが、私は細かい性格なので、割とこういうマイルールを実行します。

別府駅周辺観光
  • 友永パン屋さん(再訪)

土曜だけでは物足りなかったため、バターフランスレーズンパンクリームパンを追加しました。列も長くないので10分程度で入店できました。雨もないので待ち時間も楽です。改めて食べると、いずれもパンの味は主張が強いわけではなく、お餅を食べているかのように温かさとしっとりした食感が広がっていきます。

誰しも何度も来てしまいます。

本当においしいパンはお餅のようなものだと知りました。
  • グリルみつばさん

昨年に引き続きお邪魔しました。11:13頃にお店の前に行ったところ、流石に一番乗りでした。一人なら大抵入れますが、複数名なら予約をお勧めします。

これだけ早く来れば流石に大丈夫です。

今年もみつばランチにしました。トンカツも白身魚のフライも、ナイフの入り具合、うまみ、柔らかさなど、いずれもこれまでと同じく洗練されたものでした。深呼吸しながら食べ、じっくり味わいました。

よいものを、ゆっくりといただく時間が大好きです。

今年も自己ベストを更新してみつばランチを味わえたお礼をお伝えしました。また来年も同じように幸福感に充ちたお昼をいただきたいと思います。ごちそうさまでした。

鉄輪観光

気になっていたラクテンチは休館日ということで、近くまで行きつつもゆっくり歩けていなかった鉄輪観光にチャレンジします。別府駅西口から12:40発のバスに乗り、20分くらいで鉄輪のバス停に到着です。

地獄蒸し体験は待ち時間60分と大人気でした。

何もそこから出さなくても。

りんごパイは残念ながら売り切れでした。

組合員向けの温泉もあります。
  • 鉄輪むし湯

薬草(石菖)を敷いた小さな温室で寝転がり、香り高い蒸気を胸いっぱい吸い込み、地熱で汗をかいて身体の老廃物を出すという何とも魅力的な楽園です。サウナより温度は低く、湿度はずっと高い環境下で、8分間(+2分も可)ただひたすら身を横たえます。薬草の香りが心地よいですし、蒸気で蒸され、汗もじわじわと出てきます。背中が温められるのがとことん気持ちよく、一人しかいない時間は大の字で何も考えずに“ザ・湯治”を満喫していました。マラソン後には特におすすめです。

ここはまた是非とも行きたいですね。超おすすめです。

入浴料は700円、貴重品ロッカーは100円です。Tシャツ短パンでもよいらしいですが、汗をかいた衣類を持ち歩くのも重いので、浴衣レンタル220円を利用するとよいでしょう。

Tシャツまで販売されています。

歴史の展示も一々面白いです。
  •  一遍湯かけ上人

鎌倉時代に鉄輪温泉をつくったとされる時宗一遍上人。蒸気が噴き出す文字通りの地獄を何とか制御可能な程度にまで鎮め、最後まで手を焼いた熱源も湯治所とすることで打開するという執念と機智の物語です。身体の治癒を願う箇所にかけ湯をするとご利益があるとのことで、腰と臀部の回復を願っておきました。

800年程昔から多くの方が湯治をされていたのですね。
  • 大谷公園

足湯ならぬ足岩盤浴がある公園で、蒸気がものすごい勢いで立ち上っています。仏教の教えを求めて遥かチベットの地への冒険を繰り返した偉業を称える石碑があります。しかし浄土真宗本願寺派大谷派ではなく)というちょっとわかりにくい関係だったりします。

立ち入り禁止と言われるまでもなく、誰だって危険だとわかります。

何かと見所の多い鉄輪エリアです。
  • ことぶきやさん

地域密着のスーパーということで入ってみました。お店のおばちゃんが一人でお米を準備されていたり、割と頻繁にビールなどの飲料を求めて訪れるお客さんの対応をしたりと、もう本当に昔ながらのスーパーです。同じ全日食チェーン、金沢のひまわりチェーンと似た空気なので、親近感も湧きます。

この地域密着ぶりは情緒に溢れています。

折角なので地獄蒸し玉子豚まんをお願いしたところ、わざわざ店の外にあるせいろで作って下さりました。急ぎませんので、待っている時間も楽しいものでした。地獄蒸しの玉子も肉まんも、できたてほやほやですので、とてもおいしかったです。

わざわざお店の外まで蒸しに行って下さりますので。

黄身も白身も完璧な固まり具合でした。

お店の中で、笑顔でいただきました。一層おいしく感じます。

“元気なうちに好きなことをやっておいた方がいいよ”というような話もして下さり、来年に限らずまたお互い元気でお会いできるよう、笑顔でお礼をお伝えしました。

みゆき通りを上っていくと地獄めぐりに合流するということを知り、ようやく地理がつかめてきました。句碑の丘を歩き、折角なので湯けむり展望台を目指します。

ワニの巣窟ですから本物の地獄です。

あちこちで高温の湯気が噴き出し、そして調理に活用されています。

蔵王温泉を思い出したりもします。

俳句を詠み合う文化は何かいいですね。

途中、貴船城という看板があったので、“いわゆるパラダイスかもしれない”と失礼なことを思いつつ激坂を上り、屋外のバルコニーに出ます。

そこに至るまでにも見晴らしのよい場所がありました。

結構な急坂です。

何とも言いにくいオーラを放っています。

狩野派の貴重な屏風もありました。

ここからの眺めは得も言われぬ素晴らしさで、昨日走って行った高崎山の方までよく見え、“よくこんなに恵まれた環境で走らせていただけたものだな”と改めて強く思いました。

よく走れたものだと思いますし、よく走らせていただけたものだと感謝します。

逆光ですが、温泉街の湯気もよく見えました。
  • 湯けむり展望台

貴船城から少し行った所で、ようやく到着しました。これまでは海の方ばかり見ていましたが、今度は日本一の温泉地別府の山から上る数々の湯けむりを眺めることになります。鉄輪温泉は近く、明礬温泉は上の方にあるのですが、これだけ沢山の湯気が当たり前のように立ち上っている様子は初めて見ましたし、これでこそ地域の姿を見るということだと思いました。土地を歩いて、少し離れた所からも見る。贅沢な旅です。

山側をゆっくりと見られるのも新鮮です。つい海ばかり見てしまいますので。

山火事一歩手前では。

ここまで来たので別府大学前から別府に戻ろうと思ったところ、そもそも結構遠かった上に16:20の次は17:00というローカル線の洗礼も受け、寒空の下結構な時間待つ展開になりました。まあ折角だからと別大国道の方まで行ってコースの写真を撮れたので、災い転じて福となすといえましょう。

予想より遠く、下りも急でした。温泉地らしい地形です。

まあ指宿枕崎線よりは頻繁でしたからOKです。

別府駅に戻ってからアークイン松美さんで荷物を受け取ると共に、“来年の予約はいつからですか?”と聞いたところ、“今日でも大丈夫ですよ”とのことだったので、1/31と2/1の二泊禁煙でお願いしてきました。金銭面の話も何もなかったのですが、まあ大丈夫でしょう。来年もよろしくお願いいたします。

時間がないながらもトキハの一階でお土産を買い足し、更にいつも通り4階のリブロで書籍を買うという儀式を経て、17:30別府北浜発のバスに乗ります。思った程混んではおらず、問題なく乗れたのでよかったです。

今年も本当にありがとうございました。またお会いしましょう。

きなこもくろめも炭火焼も。

書店さんを応援するのです。

空港では、今年も別大の歴史を紹介するパネルを見て、この大会に参加させていただけることに改めて感謝しました。気持ちも充たされていたからか何かを食べることもなく、大分19:25発→伊丹20:30着の便で元気に帰りました。また来年も笑顔でお会いしましょう。

自分が走った記憶も、そっとこの流れに加わっているのです。自分の中だけで。

最後に

走っている間は夢中ですし、終わった後も本当に走ったのだろうかという不思議な気持ちになっていますが、それも含めてフルマラソンというものだと思います。魔法というと少し違うかもしれませんが、できることを全力でやるのだと、静かな、しかし別の機会では得難い熱を持って挑めるのが別大なのです。

私の場合、“支えてくれている方への恩返しに”といったドラマもなければ、タイムがよかろうとお金になるわけでも褒められるわけでもありません。その分失うものもありませんので、気負わずに走れている部分もあります。ただ、“できることができた”という手応えを求めて生きているのかもしれません。

ラソンを走ると決めた多くの人が心の奥底で望んでいるものは、達成感であったり、成長の手応えだったり、本当の信頼だったりすると思うのですが、それらは全力でぶつかってこそ初めて少し近づけるものだと感じています。そしてそれを可能にしてくれるのが、別大という世界に一つの大会だと確信しています。

普段あまり真剣に走らない私ですが、一年に一度はこうしてできるだけのことをして無我夢中になれる時間を持てるのですから、本当に幸せなことです。自分が今も幸せでいることは、しっかり伝わっていると願います。

今年も最高の時間を与えて下さった別府・大分の皆様に重ねてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

ここまでご覧いただきありがとうございます。

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