とにかく充実するにも程があるエイドが圧巻です。これでもかというくらい愛のこもった福井福井福井のフードフードフードが振る舞われ、走り終わる頃にはすっかり福井のことが大好きになっていること間違いなしです。東尋坊、丸岡城、平泉寺といった観光名所も、九頭竜川の美しい流れも必見です。
交通ルール厳守で信号待ちもしょっちゅうですし、何よりもフードと景色を楽しむ大会ですので、競技性を求めるものとは志向が違います(キロ7~9分台もざらです)。だからこそ気長に、普段忘れがちな走りが楽しめるのです。日陰はやや少なめですが、高低差もあまり無いため、ウルトラ初心者でも完走可能だと思います。黒部名水マラソン(フル)から中五日でも大丈夫でした。
私としては、五年前脚を引きずりゴールしたあの日から必ずもう一度出なくてはと思っていましたし、かつ今どうしても母親に強くなった姿を見せたいという事情もあり、今回思い切り楽しみながら走れて本当によかったです。ゼッケンのメッセージには思いを込め、完走後に届けることもできました(タイムは10時間50分程。エイド完食。平均心拍数138bpm、平均上下動6.2cm、左右接地時間バランス49.6:50.4でした。平均ピッチは173spmでしたが、止まらない区間は190程です。シューズはasicsのエボライドです。85本目にして初のasicsシューズでした。)。
今日のことは生涯忘れることはないでしょう。大会に関わって下さった皆様に心よりお礼を申し上げます。ありがとうございました!
五年前のウルトラデビューの記事もあります。ほろ苦どころか大怪我(長頸靭帯損傷で全治四ヶ月)でしたが、あの時もスタッフの皆様に応援していただき、何とか完走だけはできました。
全エイドやコースの様子は次のページにあります。長いですが、ご覧いただけると嬉しいです。一言いただけると更に喜びます。
前日
ウルトラはゆっくりなので、基本的には普通に過ごします。黒部名水マラソンの後は超スロージョグのみで、月曜以降60分、50分、43分、60分、31分だけでした。食事も割と好きなように食べました。朝と昼にドンクの食パンをいただき、翌朝に備えてフォーラスのビゴでもお買い物です。
リッチにしらさぎで金沢から芦原温泉まで移動します(普通だと待ち時間が長いので)。芦原温泉駅は新幹線延伸で立派なホームができていました。そして早速恐竜王国福井の洗礼を受けます。
駅からは京福バスです。片道950円もします(しかも57分かかります)が、受付会場の三国観光ホテル直行ですのでやはりこれでしょう。翌日も乗るのであれば1200円のフリー乗車券があるらしく、一日潰れるウルトラさえなければ買いです。前半は左に座れば田畑が、右に座れば日本海が見えます(雄島は左の方が見易いです)。運転手さんが観光案内をして下さり、青い所は深いからではなく流れが速いからだとか、越前松島水族館にはクリオネがいるといったことなどを教わります。語り口もユーモアがあり、間違っても東尋坊から飛び込んだり突き飛ばしたりはしないでおこうと思います。バスを選んでよかったです。
前日受付はスムーズで、ゼッケンと共に塩とノンアルコールビールを受け取ります。宿はサンセットビーチの大平庵さん。よきお部屋です。久しぶりの外泊(かつちゃんとした旅館)なので緊張します。屋上からはサンセットビーチを見ることができます。
夕食ははまさかさんにて鉄火丼にしました。自分は海老があまり得意ではないのと、マグロがよさそうな気がしたので、海鮮丼ではなくこちらで。18時前なので席にも余裕がありました。これだけ食べに来てもいい、もう帰ろうかと思うくらい満足できる鮪とごはんでした。ごちそうさまです。
余談ですが、思えば水曜夜からぶり、ぶり、鯖、鮭と魚続きで肉を欲したため、ファミマでチーズチキンを追加しました。
サンセットビーチで波の音を聞きながら、想像以上にすとんと沈む夕日を見届けて明日の無事を祈ります。宿のお風呂で身体をほぐし、準備をしてから就寝です。少しでも眠るべく個室でも耳栓は使用しました。
当日
レース前
21:30頃消灯3:10頃起床です。当然ながら寝坊にビビって夜中何度も起きましたが、遅刻はせずに済んだので一安心です。律儀な方はスタート○時間前には食べ終わるようにするのですが、自分はウルトラは直前でもいい派なので、あえてギリギリに食べます。自分としたことが折角前日にコンビニに行きながら(牛乳とチーズを買ったことに満足して)卵を買い忘れ、遠征のブランクを思い知ります。ビゴのパンはおいしかったので十分幸せです。
持ち物はアミノバイタルプロ3本、傾向補水液のジェルフラスク1つ、クエン酸コンク(この酸っぱさがすごく支えになった)、塩熱サプリ7つ、日焼け止め(今大会は中間点での荷物輸送がないため)です。フルマラソンのようにスパートをかけるでもなし、ジェルは不要と判断しました。装備は脚の筋肉の保護と日焼け対策としてミズノのバイオギアを着用します。ウルトラは如何に全身(内外問わず)のダメージを抑えるかの勝負だと思っているので、軽さや涼しさよりも防具を優先します。疲労軽減と捻挫防止のためニューハレ二重で足首も守ります。アームスリーブは日焼けさえ阻止できればよいので、スポーツデポの安いやつです。キャップは必須で、日差しがきつい場合に備えてサンシェードも携帯します。ネッククーラーは最高気温26℃なら不要と判断しました。ウルトラでの身体の変化を測るべく、心拍センサーとランニングダイナミクスポッドも装着します。
なお、この辺の準備は前日のうちにしておくので、朝はものすごくスムーズに着替えが済むのですが、ものすごく直前までだらだらするので結局ギリギリです。
注目のシューズはasicsのエボライド(初代モデル)です。一度合わせただけで、ほぼ新品です。ズームフライ3と迷いましたが、ウルトラを考えるとどこかで試す必要がありましたし、何より冬場の練習で(前に買ったエボライドが)かなり馴染んでいたのと、最近のフォーム的にとにかくウルトラでも最後まで脚を回し続けることをやってみたいと考えたので、このシューズに賭けることにしました。意外なことにフル以上85本目にして初のasicsです。これまではミズノ79本、ナイキ5本だと思います。
なお、他の方のシューズを見ると、いかにもウルトラといったゴツいシューズが多めだった印象ですが、個人的には以前愛用していたミズノのアミュレットのように世の中的にはサブ3.5向けとされているものが好みです。asicsではエボライド(初代)はほとんど見かけず、エボライド2か3はちらほら見た感じです。ライトレーサーの方もおられました。NIKEとミズノは少なかったような。分かった中では、ニューバランスHanzo u(重い以外に目立つ特徴がない)とアディゼロRC2(とにかく薄い)は自分なら100kmでは履かないと思います。
閑話休題。夜明け前のサンセットビーチから送迎バスで送っていただけます。4:10発で5時スタートなので余裕があります。
今年はコロナの影響で更衣室がないとは認識していましたが、荷物預りもないとは思っていなかったためあちゃーと思いましたが、すぐに切り替えて日本の皆様の善意を信じてその辺に置いておくという判断をしました。まあ盗られたら自己責任です。心配していただいた方、ありがとうございます。
MCさんや福井の有名なアナウンサーの男性に明るく盛り上げていただき、風船(自然分解されて地球に優しい)を受け取り、軽い動的ストレッチをしてスタートを待ちます。アーリースタート組に続き4:50スタート組を見送ります。
レース
序盤~前半(東尋坊から丸岡城、勝山へ)
5:00に「愛してるよ~!」の声と共に風船を空へと放ちスタートです。まずは少し下っていきなりだらだらと上ります。五年前はこれで最後まで持つのだろうかといきなり不安になりました。住宅地を抜ける中で結構下りもあります。信号待ちで先週の黒部にも出た男性と少し言葉を交わしました。最後まで頑張りましょう。
最初のエイドでジュースをいただき、段々始まって来た実感が湧いてきます。まだ朝日も低く、この時間しか見られないきれいな風景にワクワクします。とりあえず体重移動に徹してエボライドでハイピッチを刻みます。実は二日前の夜中に何の前触れもなくふくらはぎがつってしまい、触るとまだ痛みがあったため、とにかく上げないようにはしました。絶景も勿論素敵ですが、個人的には街中を延々と走る非日常も新鮮で好きだったりします。踏切前のエイドでお米プリンをしっかりいただきます。とても甘くておいしいです。
信号厳守なのであちこちで止まりますが、更にJRの踏切が結構長いです(ここで渋滞します)。マラニックとはそういうものなので、端からタイムはあまり気にしないことにしています。焦る気持ちは分かりますが、信号を一つ無視したところで次の信号で捕まりますし、何よりも運営して下さっている皆様に多大なご迷惑がかかり大会継続に影響しますので、交通ルールは厳守一択です。
地下道をくぐるとすぐに丸岡城です。軽く階段を上ると勇猛な武者と着物の美人さんが応援して下さります。お願いすれば一緒に記念撮影もしていただけます。階段を下ると温かい素麺とメロンが待ち構えています。毎回おいしいです。ちなみにこの先トイレが少ないと皆分かっていますので、ここのトイレは行列ができる公衆便所になっています。私は流石に待てないと判断して見送りました。40キロのエイドまでは持つと判断しました。
丸岡城を後にすると少し上りますが、すぐに右に折れて緑の中を進みます。ちなみにこの辺りは肉のことで頭がいっぱいです。憧れの肉はまだかと。淡々と進み、誰しもが待ち焦がれる肉エイドに到着し、ここぞとばかりに肉を頬張ります。食べやすい厚さと爽やかなキュウリで活力を得ます。脂部分をそのまま飲み込むとその後の吸収に影響がありそうなので、しばし噛みながら進みます。
ここで九頭竜川と出会い、後で向こう岸から渡ることになる鳴鹿橋にご挨拶です。
少し進むと「給水まで300m」の表示に励まされ、浄法寺エイドに到着です。ここの木の葉寿司も勿論おいしいのですが、ぬか漬けが驚きのうまさでした。きっとご家庭に伝わる秘伝の糠床なのでしょう。大喜びでいただき、お礼を言います。確かここでアミノバイタルプロを一つ摂取しています。ここにはかぶり水も用意していただき、頭をすっきりさせることができました。
嬉しいことにこのすぐ先の下り坂の途中に私設エイドがあり、コーラをいただけます。ウルトラは特にコーラが嬉しいです。更にアミノ酸もいただき、後半の支えになりました。水田と九頭竜川が美しい時間が続きます。
中盤(パワースポット平泉寺と九頭竜川)
さて、大体3分の1くらい来た辺りですが、ここで沿道の女性から「もうすぐゴールだよ」と応援の言葉をいただき、「いえ、まだ70kmくらいあります」と笑いながら返す等、和やかな空気の中進んでいきます。もしかすると平泉寺までの片道だと思われたのかもしれません。まあ普通そうですよね。
鮎街道なる道を進み、ごく短いトレイルに入ります。五年前はこの辺りで雨が降っていました。ここを抜けると勝山ぼっかけエイドです。山葵を溶くと一層美味です。ここで袖に着けていただける完走お守りは勇気の源になりますし、前回出場時のものも大切に取ってあります。いつもありがとうございます。
次の上森川神社エイドはゼッケンナンバーから名前まで呼んでいただき、感謝の気持ちが強くなります。スペースがあることもあって応援の方が多いです。まずはトイレ休憩ですが、一基のみですので場合によっては待つことになります。芋田楽はもっちりおいしく、裏に回ると串の姿も撮影できます(「裏に串があるよ!」と教えていただきました)。サイダー水もおいしく、かぶり水をして回復です。
この辺りでまだ9時過ぎですが、快晴になってしまい、信号待ちの時間で一度サンシェードを装備しました。まだ半分あるのになと不安が頭をよぎります。丁度コンビニで2リットルの水を調達された男性ランナーさんに水をかけていただき、元気が出ます。ありがとうございます。
村岡公民館エイドでは水菜おにぎりとうりの粕漬けです。これもよく噛んで味わいます。水菜はそもそも好物ですので。給水も小まめにしておきます。
トンネルを抜けて少し行くと、何となく恐竜っぽい機運が高まってきます。越前大仏の横を通り、よく分からない城(勝山城博物館っぽいです。ユートピア加賀的なものを想像してしまいすみませんでした。)の横を折れて平泉寺の参道に入ります。
参道は木陰が涼しく助かります。五年前の記憶ではものすごい坂だったのですが、途中の一部以外は大したことはありませんでした。法螺貝に後押しされながらてくてくと歩きます。この時間を利用して日焼け止めをがっつり塗り直します。クエン酸コンクも溶かしたり、歩きならではのりくつな(※金沢弁で賢いの意)時間の使い方です。ウルトラは長いのです。
折り返しのコーンをぐるっと回り、お待ちかねの平泉寺カレーうどんです。紫蘇ジュースも蜂蜜が入っているのか、甘さがまたよかったです。かぶり水もガンガンかぶり、回復します。かぶり水のコツは、シューズを濡らさないために脚を大きく開くことと、スマホの防水に注意することです。
この時点で5時間10分弱でしたので、10時間20分も厳しそうだ、そうなると15:40発のバスに乗れないなと考えていました。さはさりなん、ここからは下りですので気楽です。すれ違いで上ってくるランナーさんとエールを交換する時間です。ウルトラはフル以上に励まし合えるイベントだと思います。
そのまま下りながら、水田と空に五年前を思い出し、木陰のあるウォーキングコースを進みます。この辺りでは、自分より速い人には置き去りにされ遅い人は置き去りにするため単独走が長く続きます(ウルトラあるあるです)。信号や上りの特殊区間、エイドの休憩を除けば大体キロ5分40秒を切るくらいでピッチも190程で安定していましたので、大丈夫そうだと分かります。心拍数も150bpmより低く(データを見ると、前半は上りでちょいちょい上昇していますが、後半は終始低かったです。)、とにかく筋損傷と暑さにさえ対処できれば無事に完走できる目処が立ちます。
橋を渡ると勝山駅エイドで上庄さといも煮です。やはり福井といえばさといもですね。この先はえちぜん鉄道勝山線のすぐ隣を走り、タイミングが合えば電車の姿も拝めます。
次の発坂駅エイドでは飲む点滴たる甘酒をいただき、何だか回復した気になります。コーラもたまりません。確かこの辺りでアミノバイタルプロ2本目を投入しました。
先週の黒部川もきれいでしたが、九頭竜川もまたいい姿でした。フルよりゆっくりですので落ち着いて眺められます。ウルトラらしい時間です。一番暑い時間に差し掛かりますが、この頃はそこそこ曇ってくれたのとやや強めの向かい風が救いでした。この頃はこれまでの人生をぼんやりと振り返っていたのですが、丁度母親も応援メールを送ってくれており(走っている間は気づきませんでしたが)、何というか不思議なものを感じました。
ただ、少々ぼんやりしていたのか、この辺りで一度左足を捻挫しかけてしまい、先に不安の種を抱えてしまいます。当たり前ですが道路には凹みがあるので疲れてくると特に要注意です。今回はこの一度だけで済みましたが。
小舟渡エイドではお赤飯のおにぎりとオレンジを用意していただき、大変おいしくいただきました。後で考えると焼き鯖寿司が予定されていたのですが、公式フェイスブックによると数日前に水道の都合で移動されていたのですね。エイドの内容が変更になるのはどの大会でも当たり前のことですので全く気にしません。お赤飯のもち米には力が湧きました。
道中、ゴミを拾いながら走っておられるランナーさんがおられ、尊敬の念を抱きつつ、お礼を言います。ただ走っているだけの自分とは違いますし、これからもお元気で活躍されてほしいです。
民家の間を通るとニンニクラーメンエイドです。この暑いのにニンニクラーメン?と思うかもしれませんが、意外と当たり前のようにおいしくいただけるものです。うまいものはどんな状況でもうまいのでは。なお、ここで二度目のトイレ休憩としたのですが、建物の中でとてもきれいなトイレだったため、自分も随分と丁寧に使用しました。公園の男性用小便器のような気軽さ(的が大きいので)を求める方には別の場所をお勧めします。
エネオスの手前で右折して少し進むと花谷エイド。ごま豆腐ぜんざいにたくあん煮です。永平寺といえばごま豆腐ですし、丁度居合わせた女性ランナーも大喜びでした。たくあん煮は福井の郷土料理で、期待通りいい味が染みています。もう残りの道のりも少なくなったので、途中でいただいたアミノ酸を投入します。クエン酸コンクは細かく分けてマメに補給しました。あの酸っぱさが灼熱の白山白川郷100kmと同様に助けてくれました。
土手を下り、前回苦戦した龍の鱗通りに突入です。ここは普通には走れないのですが、五年間で成長したので、スロージョグならあまり危険を感じずに進めました。走り方の変化を感じます。階段を上りお寺の横から抜け(この辺りで小林繁?の記念碑的なものがあります)、鳴鹿橋を渡って九頭竜川ともお別れです。往路でも通った道で、ようやく帰ってきたのだという気持ちになります。
後半~終盤(市街地を抜けて東尋坊へ)
この先は基本的に街中を走り、日当たりも照り返しも抜群なのですが、75kmの小エイドではCoolishがいただけ、これが相当重宝しました。握って走ることで手のひらの血管を冷却することができ、暑さ対策には持ってこいなのです。しかもちびちび飲めるとは最高です。
間では鳴鹿駐在所での応援もあり、小籠包・焼売が振る舞われる油為頭集会所エイドにたどり着きます。できたてで熱々の小籠包は特においしいので、これは逃すわけにはいきません。烏龍茶もバナナもありがたいです。わざわざチャイナドレスまで着ていただき、盛り上げて下さります。
次のエイドまでは3,3kmなので、20分くらいのつもりで進んだのですが、なかなかたどり着きません。信号待ちでは日陰で止まったり、信号のタイミングに合わせてフォームを崩さない歩きを入れたりします。もう80kmなので、これまでやってきたことのたった1/4を繰り返せば終われると言い聞かせます。周囲のおそらく52kmの方の大半は歩いておられますし、楽しみ方は様々です。
この辺りで大通りを渡った際に一度道を間違えかけます。親切なランナーさんに教えていただき、すぐに復帰できました。どうやらぼんやりしてきたようだと自覚します。そしてようやくたこ焼きエイドです。阪神の応援ユニフォームを着た皆様が励ましてくれます。ここに来て大阪を感じられるとは嬉しいものです。
ごく短い地下道を通りJRを抜けた先は車も多く、気を遣いますが、次の手打ちおろしそばを心の支えに進みます。ジャズの演奏に明るく迎えていただきながらエイドにピットインし、大根おろしが爽やかなお蕎麦をいただきます。汁も飲み干しました。
次は線路の手前で右折と案内していただいたものの、行けども行けども線路が見えずまさか道を間違えたかと思う辺りでようやく曲がるべき場所にきます。ここからはまたあまり景色も変わらず、周囲も歩いている中をただコツコツ進むばかりです。気持ち的にもなかなか辛いエリアです。
しかしここに来て豪華スイーツエイドに巡り会えました。チーズケーキ、ガトーショコラ、イチゴ豆乳プリンに水羊羹をいただき、どれもおいしくて感激します。コーヒーは目覚ましに飲みました。残りも短く、トイレも行かなくて済むだろうと判断します。
この先もたれてきて、キロ6分も見るようになります。首周りにも疲れを感じます。遅い割には真顔です。それでももう後10km程度で終われるのだと言い聞かせます。あの左手のワコールの建物も往路で通ったはずです。15:40のバスは無理でも、16:20のバスには乗らねばなりません。何とか93.8kmエイドに至り、ブドウとメロンで勇気をいただきます。ここで最後のアミノバイタルプロを投入します。次のエイドまで6.4kmなので、念には念を入れてクエン酸コンクも濃いめに作り、2km毎には飲めるようにします。
この先はもうだらだらといきそうなものですが、何故か身体がまだ動く感触があったので、少しペースが上がります。ここまでは1kmのアラートが鳴る度にガーミンを見て、「ああ長い信号があったから7分超えているな」とか思っていたのですが、ここからはペース表示に切り替え、動いている時間にはそこそこちゃんと走れているのだと認識できたのも大きいと思います。95kmくらいにしてようやく気付きました。キロ6は普通に切っているのでまだやれるじゃないかと自信も戻ります。
体幹のコアユニットの跳ね返りと脚の回転を意識して、早く終われと念じながらようやく川を渡って三国神社まで戻ってきました。いよいよ終わりそうです。一刻も早くこの暑さから逃れたい気持ちを他所に信号ではガンガン止まりつつ、100kmの表示を確認し、最終エイドに到着です。ここでお手伝いのお子さんから杏仁豆腐をいただき、水分も補給してラスト3km弱へと踏み出します。
愛の試練坂は、試練に耐えるつもりも更々ないので潔く歩き、五年前は沈み行く夕日を臥薪嘗胆の思いで撮影したなと記憶が甦ります。東尋坊の姿も確認でき、ようやく終わるのだとペースも上がります。夜明け前に駆け出した坂を勢いよく上りすわスパートかという最後の最後に信号でたっぷり止まりましたが、お陰で東尋坊入口や今日一日何度も見てきた案内表示の最後の一枚を収めることができたのでむしろよかったです。
ラストは伴走ランナーの方が案内しつつリズムを作ってくれます。ベルも鳴らしていただき、祝福していただけることに感じ入ります。もう終われると思うと俄然力がみなぎり、最後の方はキロ4を切るペースでした。待っていて下さった皆様もこんなはずではなかった、こいつは何故ここに来て頑張るのかと思われたことでしょう。とにかく無事に帰って来られたことが嬉しくて嬉しくて、母のことを思いながら思い切りゴールテープを切りました。長い道のりを支えていただき、本当にありがとうございます。
アフター
呼吸はすぐに整ったので、メダルを受け取り写真を撮ってすぐに立ち去り、最後の若狭牛スープをいただきます。これで全エイドでの完食を達成し、充実感も一入です。用意しておいたプロテインバーとアミノバイタルプロ、経口補水液を摂取し、16:20発のバスで三国観光ホテルへと向かいます。汗でバスのシートを汚すのはあるまじきことなので、富山マラソンの荷物袋を敷いて心置きなく座りました。バスの窓から見える海に五年間の時を感じます。
三国観光ホテルではランナーサービスで100円での日帰り入浴が可能で、ありがたい限りです。焦らずに装備品を袋にまとめ、ゼッケンピンと眼鏡を洗い、センサーの汚れを拭き取り、ゴミの分別など諸々の手はずを整えてからゆっくり温泉を楽しみました。露天風呂と畳風呂が心地よく、更に水風呂もあったので交替浴を3セットこなせました(これがよかったのか、72時間経過時点でのダメージも相当少なくて済みました。)。もっとランナーで溢れかえるかと覚悟していたものの、割と空いていました。お土産も買い、17:50発のバスで芦原温泉駅へと送り届けていただきました。
最後に
長い記事になりましたが、エイドやコースの魅力、そして楽しかった思いと感謝の気持ちが少しでも伝われば嬉しいです。もうとにかくいい大会ですので、皆様にも味わっていただきたいと強くお勧めします。自分にとっては必ずこのタイミングで走るべき大会だったと思いますし、この一日を作り上げて下さった皆様に感謝しています。今大会のことは生涯忘れません。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。